#70. カナメとユヅキ(そちらも大変なデメリットのようで)
もうすぐ夏休みがやってくる。
この季節になると、否応なしにワクワクしてしまう。
「お待たせしました。本日のケーキセットです」
「ありがとう。あら、なんだか嬉しそうね」
「顔に出ちゃってました? もうすぐ夏休みなんですよ」
「そっか、もうそんな時期なのねぇ」
常連のおばさま、藤原さんとの世間話も随分慣れてきた。
私の人見知り克服はこの人のおかげと言っても過言ではない。
そうして今日もバイトに精を出し、暗くなってくる頃に閉店準備。
無事にバイトを終え、帰路に着こうと店を出た。
「あれ、月崎先輩?」
今日はシフトに入ってなかったけど、何か用事だろうか。
そう思っていると、月崎先輩は手を弄りながら静かに口を開いた。
「お、お疲れ様、ユメちゃん。その……少し時間、いい?」
■■■
喫茶しらかぜの閉店時間は夜七時。
日が長くなってきたとはいえ、もう空は結構薄暗い。
月崎先輩は私の隣を歩きながら、何かを言い出そうとして、やっぱり言い出せなくてを繰り返しているようだった。
「月崎先輩、何か言いたいことがなるなら、話してくれると私は嬉しいです。まあ……こうやって私と話そうとしてくれることがもう既に嬉しくはあるんですけどね」
声を掛けてくれる人の存在がありがたい。
藤原さんもそうだ。人と話すのに勇気がいる私を、引っ張ってくれる。
だから月崎先輩が私と話したがっているのは素直に嬉しかった。
「……ユメちゃん、クリアしたんだね」
「あ、エクストラクエストですか? なんとかなりましたね……おかげでデメリット解消! 今までよりずっと戦いやすくなりました!」
「うん。ユメちゃんは凄いなぁ……私なんて、ずっとクリアできずにいるよ」
「そう言えば……あの刀のデメリットって、なんなんです?」
「…………」
月崎先輩は少し間を置き、意を決したように私と視線を合わせた。
「《天ツ牙大神剣【破天】》の状態制限は……レベル上限固定。私のレベルは60から上がらないの」
「れ、レベルが上がらない!? それ今後の攻略難易度すっごい高くなるじゃないですか!」
私のも大概だが、レベルが上がらないのもなかなか重いデメリットだ。
「みんなに迷惑かけちゃうから、これを何とかしてからギルドに入ろうと思ってたの」
「そっか……そうだったんですね。となれば、もちろん手伝いますよ! きっとヒメとコユだって協力してくれます!」
すると、月崎先輩は首を横に振った。
「私のエクストラクエストは、人数制限があるの。参加できるのは二人のみ。今までは一人で挑戦してたけど、どうしても勝てない……。だから──カナメちゃん、力を……貸してくれないかな?」
レベルが上げられないのに加えて人数まで……かなり難易度の高いクエストになっている。
「ユヅキさんのご指名とあらば、もちろん! それに、また一緒にゲームできて嬉しいですし」
「ありがとう……! それじゃあ、日程は……」
──その場で日程と待ち合わせ時間を決め、約束。
必ずクリアして、今度こそユヅキさんをギルドに誘うのだ。
ひとまず二章はこれまで、三章へ続く!
いろいろフラグが建ってきた章になったな……
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