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黄金極振りバーサクガール、VRMMO配信中! 〜攻撃するたび『1G』ドロップするスキルで稼いでたら最強になってた〜  作者: ゆーしゃエホーマキ
セットアップ・フロントライン

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#69. 祝杯を上げよう!


 ──6月10日(月)

 フルダイブ配信サービス《フルライブ》


〈ストリーミング急上昇ランキング〉

 第一位────『【DDO】カナヒメコユで青騎士攻略とサード・ダンジョン挑戦!!!絶勝【カナメch】』


〈配信者別急上昇ランキング〉 

 第一位────『カナメch』

 第二位────『Koyu Ch. 寝転部コユ』

 …………

 …………



  ■■■



 ランキングが映し出されたスマホの画面を見て、私は慄く。

 いざこうして目にすると、これが現実なのか不安になってきた。

 向かいの席に座るコユ──恋雪も、自分で自分の頬をつねっていた。


「二人ともおめでと〜っ! 今日はお祝い! わたしの奢りなんよ〜」

「ほ、本当にいいの? ヒメも頑張ったのに」

「いいよいいよ〜! みんなで食べよ〜♪」


 サード・ダンジョン攻略の翌日、私達は放課後に喫茶しらかぜへ集まって祝杯を上げていた。

 ヒメはあの日自分のチャンネルで配信していなかったこともあってランキング圏外ではあるけど、同じ《夜猫の喫茶店(Nフェリス・カフェ)》の仲間で功労者の一人。

 なのに奢ってもらうなんて、ちょっと気が引ける。


「ま、そう言うと思って代わりに用意してきたわよ」


 しれっと恋雪のバッグから、手のひらサイズの可愛い紙袋が二つテーブルに置かれた。


「えーっ嬉しい! なんだろ〜」


 中身はヒメと中身を見てみると、中には黒猫のキーホルダーが入っていた。か、かわいい。


「あ、ありがとう恋雪」

「ありがと〜!」


 ん?

 ということは、用意してないの私だけか!?


「え、えっと……私なにも用意してなくて……あ! じゃあ二人のお願いなんでも聞いちゃう!」

「おっ、言ったわね?」

「言質取ったんよ〜」

「あ、あれぇ……気のせいかなぁ、二人の視線が怖いなぁ?」


 とんでもないお願いをされるんじゃないかとビクビクしていると、突然恋雪が息を吹き出し、けらけらと笑い出した。


「そんな強ばらなくても節度は弁えてるわよ。私はそうね……今度二人きりでゲームして」

「むっ」


 二人きり、という単語に反応したヒメが頬をぷくっと膨らませる。


「二人だけでなにをするつもりなのかな〜! な〜っ!」

「ちょっとなに想像してるのよ、未成年に手出した私が捕まるわ」

「むぅ……なら許す」

「ヒメは私は何して欲しい?」

「…………」


 ヒメ、熟考。

 いやそんな真剣に考えられても困るが。


「わ、私にできる範囲でね!?」

「……ちょっと思いつかないんよ〜。保留ってことで!」

「そ、そう? じゃあ、待ってることにする」

「うん!」


 あれだけ考えて思いつかなかったのか。

 まあ、ヒメは欲しいものとか全部持ってそうだし……気長に待つとしよう。


 コーヒーをすすり、ひと息ついていると風間店長がケーキを運んできてくれた。


「お待ちどうさま。スペシャルケーキセットでーす!」


 運ばれてきたのはいつものカット済みケーキではなく────なんとホールケーキ。

 苺がこれでもかとトッピングされたスペシャルなショートケーキだ。


「て、店長、こんなにいいんですか?」

「代金は貰ってるし、今日は金瀬さん達のお祝いなんでしょう? だからいつもより苺の数は1.5倍さ!」


 眼鏡をキラリと光らせ、得意げに口ひげに触れている。

「それではごゆっくり〜」と上機嫌にカウンター奥へ戻って行った店長に軽く頭を下げ、巨大ショートケーキに視線を戻す。


「早速切り分ける?」

「あっ、ユメちゃんその前に写真! 写真撮ろ〜!」

「そうね。せっかくだし」


 ヒメがスマホを取りだし、インカメにしてピースする。

 私と恋雪も同じようにピースして────


「我らエヌフェリ、大勝利ぃ〜っ♪」


 ヒメの合図で写真を撮る。


「ぷふっ、ケーキが大きすぎて私達の顔小さく見えるわねっ」

「あははっ! ホントだぁ〜!」

「ケーキには小顔効果があったのか……」


 ケーキの味は、もちろん最高。

 甘すぎず、コーヒーにもよく合う最高のバランス……さすが店長だ。

 かなりの大きさだったけど三人で綺麗に平らげ、大満足でソファにもたれかかった。


「も、もう当分甘いものはいいわね……」

「糖分だけに……」

「ユメ……」

「ユメちゃん……」

「ごめんつい」


 互いの顔を見合せて、思わず笑い合う。

 ああ、やっぱりみんなで何かするのって楽しいな。

 あっという間に時間が過ぎて、いつの間にか暗くなり始めていた。


「────それじゃ、二人も気を付けて帰るのよ」

「恋雪もね」

「もう心配されるような歳じゃないわよ。またね」

「ばいばーい!」


 駅で恋雪と別れ、ヒメと二人で手を振る。


「ヒメはお迎え来てるの?」

「遠野さんが車でね〜。っと、コーヒー飲みすぎちゃったしその前にお手洗いって来るんよ」

「うん、わかった」


 とりあえず、ヒメを見送るまで待っておこう。

 メイドさんもそろそろ来るだろうし……。


「…………あ、あの顔……遠野さんだ」


 車から降りてきた女の人がこちらの方に歩いてくる。

 長い黒髪、切れ長の目は鋭く、うっすら付けた口紅がほどよい色気を醸し出していて……大人のお姉さんって感じだ。

 さすがメイドさん。かっこよくて憧れるなぁ。


「──金瀬様、ご無沙汰しております」

「さ、様付けはやめてください」

「いえ、お嬢様のご友人ですのでそういう訳にはいきません……ところで、お嬢様は?」

「今ちょっとお手洗いに……」

「なるほど。では覗き──いえお手伝いに行ってきます」

「あ、はーい」


 …………今トイレを手伝うって言った??

 流石にのんびり屋のヒメでも一人でトイレくらい……いやでも、メイドさんが言ってるんだし……いや……いやぁ……?


 私は不意に頭の中でおしめを替えられているヒメを想像し──すぐ首を振って忘れた。

 戻ってきたヒメの表情はなんだか固くなってて、遠野さんは……なんか、左頬が手形で赤くなっていた。

 何かを察した私はここでの言及を控え、何も知らぬふりをしてヒメに手を振り、静かに見送りました。


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