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#07. 未踏破ダンジョン

あけましておめでとうございます!

正月休みも、楽しんでいってね!



「ば、爆発するなら先に言って……」



 爆風で吹っ飛んだ私は、お尻を上にひっくり返った体勢でコメントをチラ見する。



『 い つ も の 』

『鼓膜ないなった』

『音量バグかな?何も聞こえない』

『鼓膜成仏してクレメンス』

『【¥5,000】いつ見ても桁違いの迫力。100点』

『ちなみにあれはビーバーではなくマーモットという動物が元になったモンスターです』



 おのおのがコメントしている中、投げ銭による色付きのコメントもチラホラと流れていた。



「あっ、爆裂厨さん投げ銭ありがと~!」

「な、なんで今の爆発でお金投げてるの……」

「それはね~、爆発系スキルって気持ちいいんだけどドロップアイテムも吹っ飛ばしちゃうことがあるからみんな使わないんだよ~」



 先程のビーバー……いやマーモット型モンスターがドロップしたものを見せてくるヒメ。

 確かにあれだけ大きかったのに素材が毛皮と牙がそれぞれ一個ずつだけ。

 報酬金に至ってはゴブリンより少ない80Gだ。



「だから配信で見に来る人が多いんだ~。わたしはあんまり換金しないからね~」

「確かにあの爆発は見てて気持ちいいけど……見てる分にはいいけど」



 とりあえず今後は私が離れてから使ってほしいものだ。

 しばらく時間が経てば破壊されたオブジェクトは修正されるとはいえ、あんな特大クレーターを作る爆発……まともに受けたら──。



「ん……? これ、土じゃない?」

「え~? どこどこ~?」



 抉れた地面──違和感の正体は、綺麗に並べられた石材。

 この木だらけ森だらけの場所では際立つ、人工物という異質さ。



「こ、これダンジョンじゃないかな~!?」

「ダンジョン? あれ、でもこの辺ってダンジョンあったっけ?」



 マップを開いて現在地を確認。

 攻略サイトのページも開き、照らし合わせてみても近くにあるのは《ゴブリンの巣窟》などの小規模ダンジョン。

 一番目立つのは森林最奥に鎮座する大樹。森林地帯のエリアボスがいる大規模ダンジョンがあるだけ。

 いま私達がいる場所にそれらしいダンジョンはなかった。



『森林エリアに地下ダンジョンなんてあったっけ?』

『どのサイトにも載ってない』

『新発見……ってコト!?』

『未踏破ダンジョンってコトォッ!?』



 コメント欄が加速する。



「か、カナメちゃん! これは大発見だよ~! こんな場所に隠しダンジョンがあるなんて! お手柄~♪」

「手柄って……ヒメが爆破させたからでしょ?」



 たまたま隠しダンジョンがある場所で爆発させた。

 恐らく正規のルートじゃない。

 現に、ダンジョンがあることは分かっても入口がどこなのか皆目見当もつかないし……。



「……もう一回爆発させたら穴空いたりしないかな」

「カナメちゃん……」

「あっ、ごめん。そうだよね、ちゃんと正規ルートで行くべき」

「カナメちゃん、それはアリだよ」


『アリだね』

『発売から結構経ってるのに見つからないんだもん』

『やっちゃえヒメちゃん』

『ぶっ壊しちゃえ』


「い、いいのかなぁ……」

「へーきへーき! ダメなら壊れないから~!」



 ……それもそうか。

 強行突破がダメなら破壊不能のログが表示されるだけ。

 それならやるだけやってみよう。

 まぁ、やるのは私じゃなくてヒメだけど。



「眠りし獣を醒ませ!【エクスプロージョン】!」

「やるなら先に言って!?」



 詠唱も変わってるし。



「おぉ~、穴空いたよ~!」

「空いちゃったよ……」



 爆煙と砂煙が舞う中、崩れた隠しダンジョンの内部があらわになっていた。

 躊躇いなく穴へジャンプするヒメを追い、私も未知のダンジョンへ。



「けっこう広いね~」

「埃っぽいなぁ……でもお宝の匂いがする」



 至るところに木の根が蔓延る遺跡。

 私の中にある僅かばかりの冒険心、もといトレジャーハント魂が渦き出す。



『ここが隠しダンジョンかぁ~!』

『異世界に来たみたいだぜ!』

『元々異世界定期』

『これは神配信の予感』

『wktk』



 私と同じく胸の高鳴りが抑えきれないらしい視聴者を引き連れ、私達はダンジョン探索を開始する。


 大規模ダンジョンの攻略にはいくつかの手順を踏む。

 まずはダンジョンのマッピング。

 ダンジョン最奥にあるはずのボス部屋は固く閉ざされていることが多く、どこかに扉を開けるための鍵か何かが隠されているようだ。

 これが発見済みのダンジョンなら、攻略サイトに載っている鍵の在処まで行ってボス部屋まで直行できるんだけど、今回は未踏破ダンジョン。

 マッピング進捗度も1%で、ダンジョンの名前すら分からない状態だ。



「地下だとエクスプロージョンは使えなさそうだね~」

「生き埋めにはなりたくないね……ヒメは他に何ができるの?」

「一応全属性の魔法スキルは持ってるけど、あんまり火力は無いな~。こういう場所だと基本的にバッファーなんだよね~」

「バッファー?」

「味方を強化するスキルでアシストしたり、敵には防御ダウンとかのデバフをかけるの~」

「ゴルト使わないと自己強化できないから助かる~!」



【コイントス】の節約になるのはありがたい。

 とはいえ、メインの火力はレベル9の私だ。

 新調した《ナイツオーダー・バルディッシュ》は、王都で用意できる最も攻撃力が高い騎士団武器シリーズだ。

 それでも攻撃スキルは【ルードバスター】のみ。

 ゴブリンが相手なら【ゴブリンスレイヤー Lv.2】があるからダメージを稼げるけど……。



「ここは寝室かな~? ベッドがたくさんあるよ~」

「なんで寝るところなんかあるんだろ……あ、このランタン使えそう」



 棚の上には古びたランタンがあり、手に持つと目の前にアイテム説明が表示される。


《巡回用ランタン》

 ■■■ダンジョン内で使用できる小さなランタン。

 オイル残量が少なく、10分間しか照らせない。



「ここ暗いから助かるけど、10分だけかー」

「もしかしたら他の部屋にも置いてあるのかも~」

「ランタンを探しながら進む感じね。ゲームっぽくなってきたじゃん」



 他にも何かアイテムがないか寝室らしきその場所を物色する。



「カナメちゃ~ん、これ見て~」

「これは……日記?」

「うん~、アイテム名は《眠れない警備員の日記》だって~」



 ヒメが簡素なチェストから引っ張り出してきたのは、ボロボロの古い日記。

 異世界語なのか不思議な文字で書かれていて、内容はひとつも分からない。



「鑑定スキル使うね~」

「ヒメ……便利だね」

「カナメちゃんとたくさん遊ぶためにいろいろスキルは取ってるんだ~♪」



 ヒメはそう言いながら【鑑定】を使って日記の文章を解析する。



「……『もう逃げたい。太陽が昇っているのか、沈んでいるのかもわからないこんな場所で、奈落からの唸り声に、毎日毎日、(うな)されている』」


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