#67. 熾烈なる一戦
「スキルセット、変更!」
事前に設定しておいた戦闘用スキルセットを呼び出す。
今までは変えるほどスキルを持ってなかったから、こんなことできなかった。
眼前の隻燼龍は地に伏せるように体勢を低く落とし、口から炎を漏らしている。
このモーションは扇状ブレスだ。
吐き出された業火が地面を焼き尽くさんと燃え上がる。
「接近しながら横軸回避……!」
扇状という特徴は後ろに下がるほど範囲が広がる。
背を向けて逃げようものなら一瞬で炎の餌食だ。
だから一番簡単なやり方は、斜めに避けること。
最短距離で業火から抜け出し、隻燼龍の無防備な頭部へ──。
「セリャーーッ!」
相棒、チェーンソーを叩き込む。
100、200、300と面白いくらいヒット数が重なっていく。
そしてヒット数を重ねるたび、追加の大ダメージが発生する。
パッシブスキル【連鎖追撃】
攻撃ヒット数に応じて固定ダメージを与えるスキルだ。
となればチェーンソーとの相性はバツグン。
もちろんこれも攻撃判定なので【ゴルトライザー】発動条件を満たし、大量のゴルトコインがドロップしていた。
単純に戦闘のしやすさを求めるなら【ゴルトライザー】を抜いて他のスキルを入れるべきなんだけど、【コイントス】で消費した分はなるべく回収したいっ!
「──次は尻尾薙ぎ払いか!」
隻燼龍がわずかに身を捩るのを見て、後方へバックステップ。
難なく回避に成功する。
『上手い!』
『攻撃モーション覚えてる!』
『いいぞー!!』
開幕では回避することしかできなかったけど、おかげで【第六感】を使わずとも予備動作で何が来るのかわかる。
そして、隻燼龍は尻尾薙ぎ払いのあと、二種の攻撃に派生する。
一つは振り向きざまにブレスを吐く。
もう一つは飛び上がって突進。
どちらも出が早いから避けづらい攻撃だ。
でも、このまま突っ込む。
『オイオイオイ』
『え、追撃来るよ!?』
『いけるか?』
隻燼龍はこちらを睨み、口から炎を吐き出した。
既に接近していた私の真正面に、炎が迫り来る。
それでも私は走り続け、いざ炎が直撃する瞬間──。
二つの大盾が炎の進行を妨げた。
「コユがキャリーしてあげるわ!」
これが今回の秘策。
コユの遠隔操作による後ろ盾。
私が隻燼龍のヘイトを稼ぎ続けることでコユとヒメを守り、最大限サポートしてもらうスーパーキャリー作戦である。
トラップ型火柱の脅威もあるけど、コユの傍にはヒメも付いている。万が一の時は抱えて逃げられる。
こうして成立する最強の装備は、さすがの安定性だ。
「────ハァッ!!」
脚を斬り付けながら走り抜ける。
『こんなん実質三つの武器装備してるやん!』
『コユ氏は無防備だけど……相手が一人なら成立するな』
『カナメちゃんに防御力足したらもう手がつけられんぞ』
傍らに二つ、大盾が浮遊している安心感はとてつもない。
間近でコユの操作性を見てきたからこそ任せられる。
「コユちゃんやるぅ〜♪」
「余裕そうに見えるかもしれないけど、これでもギリッギリなのよっ!? レヴァリオスの攻撃は相変わらず重いしっ、MPがゴリゴリ削られてるわ」
「でもそのMPはわたしが回復〜♪」
ヒメのスキルでMPが全快したコユは、呆気にとられてヒメを見つめる。
「……どうしようヒメ、これ快適すぎるわ」
コユは私を、ヒメはコユをキャリーする。
これこそがこの作戦真髄だ。
「次は噛みつき攻撃か……!」
相変わらず立て続けに攻撃してくる隻燼龍だが、その噛みつきも大盾に阻まれてむしろこちらの攻撃チャンスになる。
「【モンスロート】ッ!」
その隙に叩き込む。
連撃必殺技【モンスロート】
三連撃を繰り出すスキルで、対象のHPが50%以上なら与ダメージが増加。これで一気に削る。
腹部へ潜り込み、クロス状にチェーンソーを振り回し、最後の一撃は薙ぎ払うように身を捩り、回し斬る。
HPが大きく減少し50%を切ったことで隻燼龍は怯み、大ダウン。
ならばと、隻燼龍の頭部へ必殺の一撃をお見舞いする。
「【モルトバート】────ッ!!」
激しく唸るチェーンソーを大きく振りかぶり、隻燼龍の頭部を穿つ。
単発必殺技【モルトバート】は、後隙の大きい高威力の重撃を放つスキルだ。
「【変形】──!」
「【エクスプロージョン】──!」
私に続いて、二人も隻燼龍に大ダメージを与えていく。
「グオオッ……グロォォォォオオッッ!!」
『スゲェ』
『ここまで圧倒できるのか』
『やってることはタンクがアタッカーをカバーして、ヒーラーがその補助っていうしっかりしたロールプレイなんだけど……この三人がそれをやると安定感がハンパねぇ』
『参考になります!』
『カナメちゃん火力えぐぅ……これもう最強だろ』
『レヴァリオスの攻撃を受け切れるコユ氏も大概』
『勝てる!』
『いっけぇぇぇぇ!』
コメント欄も大きな盛り上がりを見せている。
《隻燼龍レヴァリオス》のHPは残り30%──イエローゾーンに差し掛かり、サード・ダンジョン攻略も佳境。
これで決める。
「【限界加速】……!」
温存していた【限界加速】で、バフ効果を重ね掛け。
チェーンソーの熱が身体の芯まで伝わってきて、肌が汗ばむ。
隻燼龍も悟ったのか、高く翔び上がる。
喉奥に業火を溜めて────。
「放つ前に倒す──ッ!」
大盾に跳び移る。
さらにもう一方の大盾に跳び移り、隻燼龍を追いかけ、その喉元の逆鱗を睨み、
────跳ぶ。
「【オンスロート】ッ!」
一撃目を胴体に。反動を利用して上昇。
二撃目で喉元に。さらに反動を利用して上昇。
三撃目で脳天に。思いっきり叩きつける。
そして狙うは、聖剣が刺さった右眼。
聖剣の柄を握り、深く突き刺す。
「ギャオオオオオオオッッ!?」
暴れる隻燼龍に振り落とされないよう、聖剣にしがみつき。
「【モルトバート】────ッ!!」
必殺の一撃を脳天に突き穿った。
硬い甲殻を砕き、大量のコインが地上へ落ちていく。
【モルトバート】にはもう一つ効果がある。
それは、対象のHPが30%以下の時、威力が上昇するというもの。必殺の一撃に相応しい破壊力で敵を屠る。
そこへステータスカンスト、バフ特盛りの最大限上昇した火力を合わせれば。
それは文字通り、必殺へと至る。
「ルオォ……グ…………ァ…………」
残りHP────ゼロ。
《隻燼龍レヴァリオス》は滞空を維持できなくなり、落下。
聖剣にしがみついていた私も引っ張られるように落ちて、刹那。
地面と激突し、土煙が上がる。
『生きてるか?』
『あの高さだと落下ダメージでワンチャン……』
『カナメェー!』
「い……生きてまぁす……」
隻燼龍と落ちる私を大盾が途中で拾ってくれなかったら、危なかったかもしれない。
『生きてた!』
『ウオオオオオ!!』
『生きてた』
『つよ』
『さすコユ』
『俺達の勝利だ!』
『スゲェェェェェェ!!』
私は右拳を上げ、ガッツポーズ。
私はやったんだ。私達は勝ったんだ。
サード・ダンジョン、初見1パーティークリアを成し遂げたんだ。
ランキングはまだわからないけど、でも、今は────この勝利の余韻を、みんなと噛み締めたい。
「やったあああーーっ、勝ったあああーーーーっ!!」




