#65. 隻燼龍レヴァリオス討滅戦(攻撃の隙がないんですが!?)
『遂にここまで来たのか……』
『感慨深いな』
『がんばれー!』
『ワンパで初見攻略は流石に無理ゲー』
『やってみせろよカナメ!』
「気合い入れていきます。今日の私はガチですよ!」
「ま。負けられないわよね」
「絶対クリアしようね、カナメちゃん!」
『ある意味宿敵だもんな』
『ファイト〜!』
大勢の視聴者に見守られながら、私達はサード・ダンジョン《旧アルファス城塞跡》へ突入する。
崩壊した城は砂を被り、人の気配などない。
戦闘エリアは城を背景にした拓けた場所。
元は城壁があったのだろう。壊れた兵器が砂に埋もれていた。
そこに、生命を根絶やした邪龍が待ち構えている。
まるで私達が来ることを予見していたかのように、炎を纏って。
「おや……案外早い到着でしたね、ダイバー」
人の気配はなかったはずだが、隻燼龍の脚元に一人──ローブを着た魔術師が立っていた。
最初にスキルを与えてくれたあの魔術師さんだ。
「いやはや全く……あなた方は私の邪魔をするのが趣味なのですか?」
そう言うと顔を隠していたフードを取る。
なんとも麗しい美青年だが、魔術師の頭には黒い角が生えていた。
白い髪を掻きあげて、口角を吊り上げる。
「しかし、あなた方の足止め用に暴走させたエクスユニルとユルグですが、ちょうど弱っていたので力を奪うことができました。礼の一つでもしておくべきでしょうかね」
「一体何をする気なんです?」
「……私はね、魔王を作りたいのです。我が身を捧げるに相応しい王を迎える。きっとダイバーを根絶やしてくれるでしょう」
そのために昔のアルファスも陥れたのか。
と、そんなラスボスの匂わせを受けたところで、悪魔の魔術師は杖を振る。
「わかりますか? この先は邪魔をされたくありませんので、あなた方にはここで退場していただきたいのです。どうか────この大火に焼かれてください」
魔術師は高笑して、忽然と消えた。
その瞬間。
「────グォォルルル」
炎を纏う隻燼龍が、私達に牙を剥いた。
《隻燼龍レヴァリオス》
[HP 200,000/200,000]
「うっそでしょHP二倍になってるんですけど」
「ボーッとしない! 初見殺し来るわよ!」
そうだ、集中しないと。
まず何が来る。どんな攻撃で、どこから────。
「……したッ!?」
足元の地面が赤く光っていた。
咄嗟に回避すると、直後に火柱が上がる。
「グオオオオオオオオオオオオオーーッ!!!!」
立て続けに隻燼龍は咆哮し、飛翔。
空から私達を見下ろして、口から溢れ出た業火を吐き捨てる。
広範囲ブレスだ。
「どう避けろとぉぉぉぉ!?」
足場のほぼ全てが炎に包まれる。
安置は──エリア端。もう間に合わない。
そう思った瞬間、私の身体がふわりと浮かんだ。
「ったく、まぁこうなることはわかってたわ」
「コユ〜! ナイス!」
大盾に乗ったコユに掴まれ、なんとか広範囲ブレスは回避。
ヒメはもう片方の大盾に乗っていた。
「火柱は一定間隔でプレイヤーの足元から出てくるわ。常に動きながら戦いなさい」
「わ、わかった。なんとかやってみるよ」
つまり、私はこれから……
トラップ型の火柱を避けながら隻燼龍本体からの攻撃に警戒し、さらに邪眼による即死を回避するために常に左眼を警戒してすぐ身を隠せるようにしておく。と。
「グロラァァァァッ!!」
空を飛んでいた隻燼龍が滑空し、突撃してくる。
コユが大盾を操作してこれは難なく避けられたが、隻燼龍の猛攻は止まらない。
炎と黒煙、巻き上げた砂に隠れて攻撃モーションが見えない。
「【エクスプロージョン】!」
ならば、とヒメは砂塵の中央を爆裂させた。
詠唱は短縮してあり、小規模の爆発。
爆風で再び砂が巻き上げられるが、さっきよりマシになった。
が、隻燼龍の長い尻尾がお返しとばかりにヒメを叩く。
回し蹴りのように振り抜いた尻尾は大盾ごとヒメを地面に撃墜させ、振り向きざまに、炎を吐いた。
「【ガードヒール】──ッ!」
コユは撃墜された大盾を即座に復帰させ、ヒメを防御させる。
防御回復技【ガードヒール】──その効果は、防御時に周囲の味方のHPを回復。
回復スキルは知力補正で回復量が増加する。
本来、普通のタンクでは【ガードヒール】の回復は微々たるものだが、コユの場合は違う。
大盾の操作にMPを消費するため、コユは知力を上げているのだ。その分、【ガードヒール】の回復量は増加し、馬鹿にならない安定感を生む。
だから、尻尾薙ぎ払いで受けたダメージを回復し、ヒメはすぐに体勢を立て直す。
「ありがと〜コユちゃ〜ん!」
「お礼は勝ってからね!」
本当に頼りになるタンクだ。
心做しか隻燼龍も苛立っているように見える。
「……! 左眼発火!」
咄嗟に地面へ降り、大盾に身を隠す。
『ナイス回避!』
『ナイス〜!』
『ないす』
『今の避けれる気しねぇ』
『上手い』
『攻撃が苛烈すぎる……これがサード・ダンジョンかよ』
「カナメ、今のよく気付けたわね」
「セットしといたパッシブスキル【第六感】! 危機察知スキルの進化バージョンで、効果範囲が広いらしいよ」
「早速使いこなしてるじゃない。上出来よ」
「けど、こっちの攻撃する隙がな────足元火柱!」
「────ッ!」
忘れた頃にやってくるトラップ型火柱を避け、すぐに隻燼龍を注視する。
……本当に隙がない。
もうブレスのモーションに入っている。
隻燼龍は四本脚で地面に踏ん張ると、翼を大きく広げて、口を開く。その喉奥は赫灼し、業火がまるで火山噴火のように吹き出された。




