#62. 灼熱のフィールドギミック
リザルト画面を確認しながら、称号なるものに私は首を傾げる。
「コユ〜、この称号って凄いの?」
「凄いもなにも……《称号持ち》は片手で数えられるくらいしか居ないわよ。DDOには数え切れないほどクエストがあるけど、称号が貰えるクエストは今まで四件しか見つかってない。ま、カナメで五人目ね」
「そんなにレアなの!?」
「一番有名なのは血鬼夜行のギルドマスターじゃないかしら。あの人、DDOで初めてエクストラクエストをクリアしたのよ」
そこまでレアなら、なにか凄い効果があったりするんだろうか。
《眠れぬ騎士へ青薔薇を。》──思い入れもあるし、設定して付けておこう。
「ちなみに称号はプレイヤー名の横っちょに特別な印が付いて目立つ、以外に効果はないわよ」
「ないんかい!! 別にいいけどさ!」
頭上に表示されているプレイヤー名の横に付加されたのは、青薔薇のマーク。このマークが付くだけで特別な効果はない。
でも、なんだかジークリウスが傍に付いてくれているみたいで心強い。
「ふふっ」
「な、なにさ」
「いや〜? かわいいな〜って思っただけだよ〜」
「むぐっ……」
なぜか頭を撫でてくるヒメに、私はされるがまま。
くっ、撫でられるのはちょっと嬉しい。
「……ん?」
いま何か聞こえたような──。
ピコンピコンと、絶え間ない通知音。
というか、鳴り止まない。
「な、なになになに!」
「どうしたのよ」
「いや、さっきからめちゃくちゃ音鳴ってて!」
「…………あー。スキルじゃないかな? ほら、カナメちゃんエクストラクエストクリアしたし」
ヒメは続けて「確認してみたら〜?」と言う。
そうだ、そもそもの目的はスキルが習得できないとかいう呪いを解呪すること。
エクストラクエストを完走することで、ユニーク武器のデメリットを消すことができる……だったっけ。ユヅキさんが教えてくれたことだ。
「スキル、えーっとぉ……?」
ステータスを開き、スキル一覧を呼び出す。
呼び…………えっ?
『ジークリウスの魔力を浴びたことで、《濫伐者カリカーン》の呪いが解呪されました』
【ゴルトライザー】【強靭】【ゴブリンスレイヤー】
【ルードバスター】【コイントス】【ギガントバスター】
【ダストワール】【金剛体】【千里眼】【オンスロート】
【モルトバート】【連鎖追撃】【ソードブレイカー】
【第六感】【スーパージャンプ】【ガードブレイク】
【生命維持装置】【緊急蘇生装置】【オーバーライザー】etc……
「いや急に増えるじゃん」
キャットフード山盛りにされてドン引きする猫の気持ちが少しわかった気がする。
「けど、これなら…………っ」
サード・ダンジョンに、挑戦できる。
あの日取り逃した1位を、今度こそ──!
「ふ、二人ともちょっと待ってて! すぐセット組むから!」
「はいはい、じっくり選びなさいな。気持ちは痛いほどわかるわ」
「カナメちゃんの新戦術かぁ〜、楽しみ〜!」
スキルは全部で九種類セット可能。
組み合わせ次第で戦術も変わる。
けど……どうしよう、これだけ出来ることが増えると迷っちゃうな。
でもやっぱり【ゴルトライザー】は外したくない。
そうなると必然的に【コイントス】が選択肢に入って────あれ……? このスキルって……。
『────警報発令。警報発令。
周辺の温度が急上昇しています。
ただちにエリアを離れてください。繰り返します……』
「んなっ、なに!? 警報!?」
「これは、狙い澄ましたようなこのタイミングで来たわね……」
突如として鳴り響くアラーム。
視界には『WARNING』の文字が赤く明滅し、只事ではないと訴えている。
そして……熱い。洞窟の中はまるでサウナのようで、蒸し上がってしまいそうだ。
「あっつ〜い!」
「二人とも盾に乗って! 脱出するわよ!」
既に汗だくで溶けそうなヒメを支えながら、私達は大盾に乗り込む。
三人で一つの大盾になんとか乗ったけど、盾は盾で熱されたフライパンかってくらい熱かったけど、このめちゃくちゃ暑いサウナ洞窟に留まるくらいなら我慢っ。
「頼んだ!」
「しっかり掴まってなさいよ。【加速】──ッ!!」
私達を乗せて飛び上がった大盾の前に、もう一つ、搭乗者の居ない大盾が先行する。
「【変形】!」
先行した大盾が数枚のブレードに分離し、洞窟の天井に突き刺さって削っていくが。
「さすがに威力が足りないか……!」
「まっかせて〜! スキルセット変更──【詠唱短縮】【エクスプロージョン】!」
爆炎が岩肌を破壊し、砂漠の砂が大量に落ちてくる。
「突っ込めぇぇぇぇーーっ!!!」
「んな無茶なああああああーーーー!!!」
叫びながらも、振り落とされないようしっかり盾にしがみつく。
──洞窟を抜け出すと、吹き荒れる砂漠の風が私達を襲う。
今はそんな風も涼しいけど。
「ったはぁッ、あ、熱かったぁ……一体何が……」
「何って、こんな場所で火傷するほどのフィールドギミックを発生させるのは、アイツしか居ないわよ」
声のトーンを落としたコユは、視線の先を睨む。
場所はここから少し離れた旧アルファス城上空付近──そこに居たのは、嵐の空をものともせず、巨大な翼を羽ばたかせる一頭のドラゴンだ。
「あれ……って……」
燃えるような紅蓮色の鱗。
灼かれて赫く金属のような色をした剛角。
その巨体に刻まれた古傷は、戦場で今日まで生き永らえてきた歴戦の証。
そして己の肉体を絶えず燃やしている炎は、辺りの大地を灼熱地獄に変えていた。
「大火の赤龍……!」
かつての王都を焼き焦がし、大火の赤龍として伝承が残る伝説の龍。
ここ《命呑む大砂漠》のもう一つのフィールドギミック。その名に相応しく、地上の生命はすべて炎に呑み込まれていた。




