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#06. コラボ配信と鼓膜爆死注意報


「それじゃあ始めるよ~♪」



 球体型のドローンをセッティングしていたヒメ。

 ウッキウキなお嬢様に対して私はと言うと。



 (「これで人前は……」)

「カナメちゃ~ん、そんな遠くからじゃ聞こえないよ~!」



 ヒメから、と言うよりドローンのカメラから離れ、建物の影から顔を覗かせていた。



「だ、だってこの服さぁ……」

「似合ってるよ~。ばっちり~!」



 ヒメが選んだのは、ややオーバーサイズな黒のジャケットと丈が胸元までしかないシャツ、そしてお腹の横なんかに穴が空いてるタイツのようなインナー。

 なぜか下を着せてくれなかったから、スパッツ露出してるみたいになってしまった。

 剣と魔法の世界観なDDOではちょっと浮いてる気がしなくもない。



「こ、こんな異世界っぽい世界観でする格好じゃないと思うんだけど……ヒメも魔女コスだし」

「そうかな~? DDOって割と現代チックなところあるよ~。さっきの服屋さんだってガラス張りのショーウィンドウとか着替え室とか、ほとんどリアルと同じだったでしょ~?」

「確かに……」



 プレイヤーが快適に遊べるよう配慮されてるのか。

 全てが完璧でリアル感の溢れた異世界だったら、きっと不自由すぎて遊びづらいもんね。



「それにこういうオンラインゲームって気軽にファッションを楽しめるのも醍醐味のひとつだよ~」



 ほら~、と言いながら指をさすヒメ。

 釣られて見ると、確かに個性豊かなファッションをしたプレイヤーが多い。

 どこか圧を感じる顔をした変な着ぐるみを着た人や、ビニール素材のスケスケアウターで下に着た水着を惜しげも無く晒す人、あとマグロ。



「……マグロが陸に上がってる」

「あれはDDO名物、《リックマグロ・Yeah!!!!》だね」

「なにそのめちゃくちゃハイテンションな名前」

「『Yeah!!!!』はアウター()()()のことだよ~。本当は《リックマグロ・ウェア》だったんだけど、それだと面白みに欠けるからテンション上げたんだって~」

「陸に上がってテンションも上がっちゃったか」



 これだけ愉快な格好をしてる人がいるなら、そんなに気にすることでもないか。



「あ、一応マグロも買っておいたからあげるね~」

「それは流石にいらないです」

「はっ……もしかして《ソーラマグロ・Yeah!!!!》の方が好きだった!? あれはレアドロップだから手に入れるのは難しいよ~」

「ソーラ……って空も飛ぶの!?」



 青い海ではなく、青い空を飛ぶマグロ……スゴイ絵面になることだけは想像できるな……。

 もちろん着ないので丁重にお断りした。



  ■■■



 場所を移し、森林を散策する。

 目的は『カナメちゃんがもっと強くなれるようなスキルを習得しよ~♪』……とのこと。

 今はヒメのチャンネルで配信中で、ヒメはたまに何人かのコメントを拾って返事をしていた。



「わ~、けっこう昨日の操作ミス配信見てた人来てくれてるみたいだね~」

「うそでしょ……はっず」



 ヒメのチャンネル登録者数はおよそ50,000人。

 今の視聴者数は2,000人ほど来ていた。

 その中の何人かは、私の醜態を知っている者達だ。



「『お二人はどういう関係ですか?』──う~ん、そうだなぁ~。恋仲……かな?」

「告白された覚えはない」

「え~? 告白したら付き合ってくれるの~?」

「それは神のみぞ知る(カニのみそ汁)



 ヒメの冗談には中学の頃に慣れている。

 適当な返事でスルーすると、ヒメはにこにこ笑ったまま「そっか~」と軽い返事で次の話題を振ってくる。



「あ、これはたぶん昨日の視聴者さんかな~?『お金が散らばるの気持ちよすぎだろ』だって~。そういえばカナメちゃんは珍しいスキル持ってるんだよね~」

「珍しいかな……ゴルトライザーのことでしょ?」

「攻撃すると1ゴルトなんだっけ~?」

「リアルマネー換算で0.01円。もうちょっと考えてからあの魔術師さんに言えばよかったよ」

「でも昨日の配信見たけど、エクストラスキル習得してたよね~。たぶんゴルトライザーを使って何かの条件を満たしたんだと思うけど~」

「コイントスね。私も詳しくないし、《ゴブリン・メイジ》に使った時は10枚目成功した時のゴルトドロップ量増加目当てだったからあんまり効果理解してないなぁ」



 ダメージ上昇系のバフが付いてたのは覚えてる。

 あとは11枚目以降にどんな効果が付与されるのか……ゴルトを消費するだけの価値があるなら使ってみたいところだけど。



「まぁそれはおいおい試すとして。そう言うヒメはどうなのさ」

「わたし~? わたしの好きなスキルはね~」



 ヒメのことだからやたらキラキラしたメルヘンチックな魔法を使うんだろうなぁ……なんて思っていると。



『まずい』

『あっ(察し)』

『総員、音量注意!』



 コメント欄が騒ぎ出したかと思えば、ヒメは杖の先端に青い宝石が装飾された《マギアロッド》を掲げる。

 その時ちょうどエンカウントしたのは、超大型のビーバーみたいなモンスター。

 私の背丈の五倍はあろう巨体で、可愛げなんてない。



「ビーバーさんグッドタイミング~♪」



 そんなビーバーを見上げたヒメは、いい的を見つけたと言わんばかりに突如詠唱。



「──魔力活性(マナアクセル)、臨界。爆熱、爆砕、爆裂。

 天つ(ぼし)を隠すは烈光。盃月(さかづき)を満たすは閃光。

 画竜の(ほむら)、非可逆点睛。星の傷。

 天よ見ろ、地よ轟け。これこそ死光の大爆破──!」



 巨大な魔法陣が煌々と光を放ち、近寄り難い熱量が熱波となって辺りの木々を激しく揺らす。

 気のせいかヒメは今まで見たこともないくらい目を輝かせている。

 これは、もしかしなくてもヤバいのではないだろうか──?

 と、そう思った時にはもう遅い。



「いざ爆ぜよ!【エクスプロージョン】!!!」



 景色が真っ白になったかと思えば、炎が轟音と黒煙を上げながら爆発。

 光に呑まれたビーバーは雄叫びにも似た断末魔を残して消えていった。



「はぁ~~っ♪ 爆発は芸術だ~っ!」



 クレーターのような爆発痕を見て、ヒメはやたらキラキラした表情で満足気に言うのだった。






◤ PN 《ヒメ》 Lv.36

  所持金『876,552G』(換金時:8765.52円)

  武器『デュモルティエ・ロッド』

  ヘッド『星翔けの帽子』

  アウター『夜帳のケープ』

  トップス『星魔のミニドレス』

  ボトムス『星魔のミニドレス(尻尾穴加工)』

  インナー『フリルド・ヒモパンツ・黒』

  アクセサリー『ネコミミ・白』

        『ネコシッポ・白』

  所持スキル【エクスプロージョン】【裁縫Lv.8】

       【???】【???】【???】etc ◢


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めぐ◯んやんけ!
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