#41. 空から聞こえるその声は──!
「いやぁ……フレンドリーファイア無効とはいえエクプロを間近で受けると身構えちゃうね」
フィールドに空いた二つ目のクレーター。
未だに土が灼けて焦げ臭いクレーターの中心部に立ちながら、仰向けに倒れるコユに手を差し伸べた。
「ホントよ……こんなでっかいクレーター、魔法攻撃力どんだけ上げてるの……エクスプロージョンってマギアロッドの爆破魔法派生よね?」
『あ~、たぶんそうだったかも~♪』
「たぶんて……」
コユは通信越しに聞こえてくるのんびりとした声に呆れているようだった。
私みたいに強化せずともとんでも火力を撃ち放つヒメが一番ヤバいのは言わずもがな。
でも詠唱さえすれば森をほぼ消し炭、街だったら半壊くらいの威力になる魔法なのに、なんで誰も使わないんだ……?
なんて思っていると、コユが「そろそろヒメを下ろして合流しましょ」と言うので、ひとまず疑問は頭の片隅に追いやった。
今はとにかく優勝を目指すだけだ。
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──二回目の超長文詠唱【エクスプロージョン】は、カナメちゃん達と《キャラバン》の戦闘音を聞き付けたのか漁夫の利を狙って接近していた複数のギルドを壊滅させていて、よく見るとあちこちに人魂が浮いていた。
『ギルドデュエルが始まってもう何分になるのかしら』
『20分は過ぎてるかなぁ? ってうわ、もう残り4チームじゃん! トップスリー目前だよ!』
通信越しにカナメちゃんのはしゃぐ声が聞こえてくる。
カナメちゃんが会う人全員斬り捨てたからかな。
意外と減ってくれてよかった……超長文詠唱【エクスプロージョン】──威力は申し分ないけどスキルのクールタイムを短縮してもMPがなかなか回復しなくて全然撃てなかったから、本当によかった。
10分に1回くらいかな……それでも最多キル数は《夜猫の喫茶店》が記録しただろうから目的は果たせた。
今回はエルドの防御魔法スキルをカナメちゃんが破ってくれた頃にMPが全回復したから運良く二回目をあのタイミングで撃てたけど、間に合わないのが一番しちゃいけない失敗だ。
カナメちゃんを勝たせるためにも、失敗は許されない。わたし自身が許さない。
MPの回復手段は課題だなぁ~……とりあえず今はもしもの時のために惜しまずMPポーションを飲んでおく。
透明な瓶に入った青い液体はちょっぴり甘い。炭酸の抜けたラムネっぽい味わいで、喉を通るとMPの青いゲージがグンと伸び始めた。
「それにしても、あと3ギルドを倒せば優勝なんだね~! 思ったより早いかも~?」
ここまで人数が減っているのは爆発に巻き込まれたギルドが多かったのもあるんだろうけど……たぶん残ってるはずの《竜翼の旅団》か《血鬼夜行》の仕業だろうなぁ。
《血鬼夜行》に関しては《血鬼夜行・第二陣》って言う派生ギルドも参加してるみたいだし……というかそれって許されるの?
前回はトーナメント形式だったけど、今回みたいなバトルロイヤルだとチーミング行為になるんじゃないかなぁ~。
高度がゆっくりと落ちていくコユちゃんの大盾の上に座りながら、悶々とそんなことを考えていると──。
『あれ。残り2チームになってる』
『ほんとね……相打ちかしら』
──意外と早く決着がついたみたい。
それなら、竜翼と第二陣が相打ちだろうな。
やっぱり最後の敵は《血鬼夜行》か~……でも近接主体って話だし、カナメちゃんのステータスなら勝機はある。
そうやって次の策を練っているとふたりの姿が見えてきて、わたしは大きく手を振った。
「お~いふたりとも~♪ お空すっごく高かったよぉ~」
「おーよしよし、お疲れ様ですおじょーさま」
「えへへ~。あらセバス、わたくしお紅茶が飲みたいですわ~♪」
「誰がセバスよ」
甘えるご褒美くらい貰ってもいいよね。
は~♪ カナメちゃんの優しい手がよしよししてくれてる! ゲームじゃ単なる電気信号だけど、それでもこれはエリクサーより効くなぁ~っ!
「ヒメ、コユ、MPはどう?」
「さっきポーションあるだけ飲んだから、クールタイムが終わればすぐ撃てるよ~」
「コユはフル回復までは時間かかるわね……まぁ1枚だけでいいなら5分くらいは飛べるわ」
コユちゃんはわたしが乗ってた2枚目の大盾をインベントリに収納する。
「そ~だな~。残り1ギルドだから、空爆戦法よりコユちゃんに守ってもらって、隙を見て爆裂しちゃった方が安全かも~」
「了解よ。それならカナメは前出て牽制してもらった方がいいかもしれないわね」
「本命攻撃を隠す感じね。んじゃ、もうひと暴れしますかー!」
「「「「おーーっ!!」」」」
と、それぞれ片手を突き上げ……あれ? 一人多い?
「なっ──! ヒメ、コユ、上……!」
「声がひとり多いと思えば……そういうことね」
4人目の声……。
それは聞き間違いでもなんでもなくて、確かにわたし達の掛け声に元気な少女の声が重なった。
夏の太陽みたいに明るい声色。
遠くまで届きそうな声の響き。
その声をわたし達はつい最近聞いている。
一緒にご飯を食べてさえいる。
「はっはっは! よし、驚いたね! 作戦成功!」
見上げた空から響くその声に、わたしは目を丸くする。
「はためく大翼! 赤き竜鱗の戦士、参上ぉっ!」
そこには真っ赤なマントをはためかせた《竜翼の旅団》ギルドマスター……ツバサちゃんが、空中に立ちながらわたし達を見下ろしていた。
「うそでしょ~……」
想定外だ……思わず声に出てしまう。
2ギルドを殲滅したのは……前回1位の《血鬼夜行》を倒したのは、まさかの《竜翼の旅団》だった。




