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攻撃したら『1G』ドロップするスキルで金策してたら最強になってた ~金極振り配信、始めます~  作者: ゆーしゃエホーマキ
スタートダッシュ編

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#30. 月崎結依の憂鬱

◇今回は三人称視点です。



 ──リアルではもう日が昇っている時間帯。

 しかしDDOでは目まぐるしく昼夜が入れ替わるので、今は日が落ち、綺麗な月夜が見ることができる。

 港街の一角、NPCが営む酒場にランタンの火が灯るころだ。


 酒場が開くや否や、ズカズカと店内に入ってきた客の男はテーブル席に座ると思い切りテーブルに足を乗せ、長いため息を吐き捨てた。



「あーあ! あのヒーロー気取りの邪魔さえなければ今頃10万くらい稼げてたのになぁ!」

「……お客様、ご注文は」

「要らん、ほっとけ」

「かしこまりました」



 バーテンダーのNPCを追い払い、《キャラバン》ギルドマスターのエルドは椅子の背もたれに寄りかかってゆらゆら揺れる。



「あの武器破壊なんだよ。前はなかったよねぇ?」



 エルドはカウンター席でビールと枝豆を注文した背の高いタンク職に声を投げる。

 その全身鎧の男は「確か……」と呟きながら検索ツールを走らせ、兜を指でカリカリと掻きながら。



「恐らくタリスマンのデバフスキルですね……武器耐久値を減少させるっていう。下方修正(ナーフ)待ちのスキルです」



 そう言ってエルドに検索ページをフリックして投げ渡す。



「タリスマン? じゃあヒーロー気取りのガキじゃなくて白い方がやったのか……PKした後で耐久値減ってたとはいえ一瞬で破壊とか。まぁ流石に今月末の定期メンテで修正されるだ……ろ!?」



 投げ渡されたページを足蹴にして消したエルドは、椅子に座ったままひっくり返る。



「……なあ、なーんで見逃したぁ? 僕言ったよね? チェーンソーは僕がキルしてドロップさせるから、他の奴らはよろしく~って。僕は確かにそう言ったよねぇ、ユヅキ」



 店の入り口に立ったまま俯く長い黒髪の刀使い──ユヅキは、名前を呼ばれた途端、肩をビクッと震わせた。



「…………ぇ、と……移動制限のデバフが……」

「言い訳はやめてくれよ。デバフなんて掛かってなかっただろ」

「……あ、あの二人は……強いから……」

「ふーん。まぁ? 前回の《ギルドデュエル》で僕らに勝ったわけだしねぇ? でもそれは一年前の話で、あの時は単なるまぐれだ。今は違う。だって僕にはそれがあるんだ!」



 起き上がったエルドはユヅキの刀を指さし、口角を吊り上げる。



「ユニークスキル……! それは他に類を見ないエクストラスキルの俗称ッ! 他には《血鬼夜行》の火餓(ヒガ)が持っているって話だが、それでも! まだDDOにはユニークスキルを持っているプレイヤーはふたりしかいない! この優位性は活かさなくちゃいけないんだ! そうだろっ!?」

「で、でも……私は……」

「でもじゃないだろユヅキ。僕達は仲間なんだ。助け合っていこう」

「……え、エルド。私……これ以上は……」

「これ以上……なに?」



 エルドに鋭く睨まれ、ユヅキはその後の言葉を(つぐ)んだ。

 蛇に睨まれた蛙──いや、ユヅキの実力を考えれば、彼女をカエルと言うのは相応しくないが。



「ユヅキ、あのチェーンソー取ってきてくれない?」

「…………え?」

「あれは隠しダンジョンのレアドロップ品って話だよね。高く売れるかもと思ったけど、よくよく考えてみればあれもユニーク武器なんじゃないかなぁって思うんだよ」

「ですがギルマス。あの子、そんな素振りは一度も見せていません……ユニークスキルが付属してるのなら、それを使えば逃げきれたかもしれないのに」



 全身鎧の男がそう口を挟むと、エルドはパチッと指を鳴らす。



「その通り。つまりアイツはまだユニークスキルを使えない。レベルを満たしてないのか、まだ条件が揃っていないのか……武器には複数のスキルが付属するけど、ユニーク武器は今のところ最大三種のスキルがある」

「確かユヅキの刀は……」

「おっと喋るなよ。僕達は第3位だ。他のギルドが偵察に来てて、聞き耳立ててたらどうする?」

「し、失礼しました」

「まぁだからね? まだユニークスキルが全部解放されてない今なら、奪えるチャンスなんだよ。わかる?」



 トン、とテーブルに指を置き、俯くユヅキの目を覗き込むようにエルドは睨みつける。



「だからねユヅキ。これは名誉挽回のチャンスだ。あのガキ、狩ってこい」

「…………」

「いいな?」

「……はい」



 Yesしか許されない。

 重くなった酒場の雰囲気に耐えきれなかったのか、全身鎧の男は顔を背け、運ばれてきたビールを持ち上げた。



「──あ痛っ」

「ぶはっ、おまっ! 兜着けながら飲めるわけないでしょぉ!」

「あっはは、すみません。すっかり忘れてました」

「あぁいいよいいよ。お前最近入ったにしてはちゃんと仕事してるし、ユヅキが使えないならお前にユニーク武器を使ってもらった方がいいかもなぁ」

「いえ、遠慮しておきます。僕の仕事は守ること……ですから」



 装備欄から鎧を解除した男はラフな格好に着替え──まるでクマのようにも思える筋骨隆々な体つきを披露し、爽やかな表情を向けた。



  ■■■



 プレイヤー《ユヅキ》──本名、月崎(つきさき)結依(ゆい)

 DDOの酒場からログアウトし、現実に戻ってきた結依は額に手を置き、ため息を吐く。

 ──動きたくない。けど、動かなければならない。

 そんな憂鬱な気分でベッドから起き上がる。

 鏡の前に立つと、身体の下敷きにされてボサボサになった黒髪と生気のない自分の顔を見て──。



「…………がんばれ」



 そう、自分を鼓舞した。


 ──人前に出れるよう身だしなみを整える。

 せめて、見た目だけでも気丈に。

 自分は強いから大丈夫だと、そう言い聞かせるようにメイクをする。

 ボサボサだった髪も櫛で整え、後ろで束にしてポニーテールを作る。

 仕事中……特に接客業ではこの長い髪が邪魔になってしまうから。



(後輩の前ではしっかりしなきゃ……)



 そうして出勤した結依は、《喫茶しらかぜ》の扉を開けるのだった。



「──あっ。月崎先輩、お疲れ様です」

「……お疲れ様、ユメちゃん」



~《喫茶しらかぜ》従業員一覧~


 店長:風間(かざま)士狼(しろう)

 スタッフ:月崎(つきさき)結依(ゆい) 金生(かなう)ユメ 五十嵐(いがらし)柳也(りゅうや)

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