#24. ギルド《夜猫の喫茶店》
配信中に突如決まった私達のギルド結成は、視聴者さんを大いに盛り上げた。
ギルドの創設申請は《王都アルファス》にある、大きな剣のモニュメントが目印のギルド協会で行う──ので。
「またこのボートかぁぁぁぁ!!」
再び運河を疾走、川登り。
本当は一度訪れた場所へは転送──ファストトラベルができるんだけど、どうやらヒメはこの爆速ボートが気に入ってしまったらしい。
絶叫系苦手とか言ってたよね?なんて聞くと、「ゲームだから万が一は無いってことに気付いたよ~」と嬉々として答えた。
そんなこんなで始まりの街アルファスに戻ってきた私達は、ギルド協会でNPCの受付嬢に申請書を貰い、『ギルド名』『ギルドマスター』『ギルドメンバー』を記入していく。
「ギルド名かぁ……うーん……カナメとヒメとコユで……《カヒコ組》?」
「絶妙にダサいわね」
「じゃ、じゃあコユが考えてよ!」
「そうねぇ……《ね隊》《ねむ隊》《ねころび隊》」
「やる気ゼロか!」
「《カナメちゃんすきすき同盟》~♪」
「それ私が恥ずかしいよ」
これは私がしっかり考えないとマズいか……?
「私達は上を目指し続けるんだから、もっと志高く行こう」
「上……上ねぇ……《ランクトップ団》」
「タンクトップみたいだね~」
「せっかくなら可愛いのにしたいわね……猫とか入れたらいいんじゃない?」
猫は私も好きだけど、猫だけじゃ味気ない。
私達と言えば何か……。
上を目指す……もっと人気になる……言い換えれば、そう──星を見る。
私にとって星はきっとヒメだ。
星の隣にあるのは星だけだから、私はそこへ辿り着きたい。
……そういえばコユの名前って上は寝転部だっけ。
私の本名はユメだし……寝たら夢を見るのは繋げられる。
寝る……夢を見る…………。
「夜……? もっとあたたかみが欲しいな」
そうしてコメントで流れてくるワードに助けられつつ、熟考の末に出てきたのが。
「《夜猫の喫茶店》……Nフェリス!」
「可愛いんじゃない? でもなんでエヌなのよ」
「ラテン語で夜はNoxだって視聴者さんが言ってたんだけど、そこに猫も加えるとノクスフェリスになるんだよね。言いづらくない?」
「ノクスフェリス……確かにちょっと噛みそうだわ」
「だからノクスを略してNフェリスなんだね~」
「それじゃあ読みはエヌフェリス・カフェってことね」
ギルド《夜猫の喫茶店》──。
このギルドは楽しくてあたたかみのある場所にしたいと思ったら、《喫茶しらかぜ》のことを思い出した。
星を見上げる夜の猫。
瞳が黄金に輝くその猫は、今日も仲間のために夜色のコーヒーを淹れるのだ。
「それじゃあギルドマスターはどうする?」
「ギルマスはやっぱりカナメちゃんだよね~」
「まぁ言い出しっぺだし、コユもいいと思うわ」
「そ、そう? じゃあ……私がリーダーやらせてもらおうかな」
二人がそう言うので、私はギルドマスターの欄に自分のプレイヤーネームを記入。
ギルドマスター……喫茶店のマスターみたいで少しかっこいいかも。
なんて思ってる私に続いて、ヒメとコユがメンバー欄にそれぞれ書き込んで──。
「ギルド《夜猫の喫茶店》、ギルドマスター《カナメ》、ギルドメンバー《ヒメ》《コユ》──承認致しました! 皆様のご活躍を職員一同、期待しております!」
こうして、ギルド《夜猫の喫茶店》が結成された。
ギルドマスターになった私は、ヒメとコユに向き直る。
「ギルドハウスもまだないし、形だけだけど……これからよろしくね、二人とも」
「夜猫の名前を轟かせるんよ~!」
「やるからにはギルド対抗戦とかにも参加して、目に物見せてやりたいわね」
「ギルド対抗戦なんてあるんだ」
「《ギルドデュエル》って言うかなり大規模なイベントよ。もちろん1VS1の個人戦イベントもあるけどね」
検索してみると、年に一度……DDOのサービス開始日である2月に行われてるようだ。
前回のベストスリーは──《血鬼夜行》《竜翼の旅団》《キャラバン》……最近どこかで見た記憶があるような。
「このギルドは……第三ダンジョンをクリアした人達だね~」
「えぇ、それぞれのギルドの先鋭でパーティーを組んだらしいわ。報酬を他のギルドに取られるかもしれないのに、いえ……逆に言えばそうでもしないとクリアできなかったってことね」
「なるほど……まぁ私達はまず第二ダンジョンに挑戦しないとだけど」
《神獣エクスユニル》の大森林……第一ダンジョンをクリアしてレベル上限が40から50に解放された。
次は50から60。最前線には程遠い。
でも焦る必要はない。私達は私達の楽しみ方で配信を盛り上げていけばいい。
そうしていつか──彼らを超えてやるのだ。




