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攻撃したら『1G』ドロップするスキルで金策してたら最強になってた ~金極振り配信、始めます~  作者: ゆーしゃエホーマキ
スタートダッシュ編

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20/62

#20. 然うは問屋が卸さない。


 ダメだ、足が蔓に絡まって、全然身動きが取れない。

【コイントス】のバフで何とかするしかない……!


 そうして取り出したコインを上へ投げようとした、その時だった。

 木漏れ日に照らされているはずなのに、私の視界は暗くなる。



「……あっ」



 ……いや、暗いんじゃない。これは()だ。

 光を遮っていたのは、黒の大盾──晦冥。



「ちょっと前失礼するわよっ!」



 その声とほぼ同時に、コユの大盾が私を守る。

 エクスユニルの踏み潰し攻撃を、難なく耐えていた。



「【勇攻激化魔法(ブレイブレイズ)】──決めちゃえカナメちゃん!」

「頭を狙いなさい! ダウンしなきゃ届かない弱点だけど、コユの盾なら関係ないわ!」

「──ありがとう! 決めてくる!」



 ヒメによるバフを受け、私を守ってすぐ側に静止した大盾に飛び乗る。

 ふわりと浮かび、スピードを上げてエクスユニルへ突っ込む盾。

 バランスを取るのが難しいけど、コユがしっかり遠隔操作してくれているからか落ちずに済んだ。


 そうして、エクスユニルの頭上に到着した盾から飛び降りた私は、その立派な枝角目掛けてチェーンソーを振りかぶる。



「【ルードバスター】ッ!!!」



 ライトエフェクトが閃光し、コゥン……と心地良い音が響く。

 角が根元から折れたのだ。

 そのままチェーンソーの刃はエクスユニルの弱点である頭に命中し──連鎖、連撃。

【ゴルトライザー】が発動し、黄金の滝を作り出す。



「コォ……フォォォ……ゥルル…………ッ」



 大量のゴルトコインを撒き散らした《神獣エクスユニル》は、遂にポリゴン状に変化して眩く光り輝き、爆散──。

 笛の音のような断末魔がふあんふあんと木霊(こだま)するなか、私達は『Congratulations!』の文字を見届けるのだった。



「やっ……」



 私がそれを言おうとした瞬間、後ろから不意に抱き着かれる。



「やったあっ!! やった! やったわ! ほらね言ったでしょ! 全部防御してあげたわよ! 初見ノーダメージクリア! やり遂げたわ!」

「お~、コユちゃんどうどう。カナメちゃんの首絞めてるよ~」

「あっ、と……ごめんなさい、はしゃぎすぎたわ」



 少し顔を赤くしながら、コユは私の首を離す。

 あの防御力は頼りになったけど、コユにとってもギリギリだったのかもしれない。

 考えてみれば後方から状況を把握し、距離感も測って浮遊盾を操作。

 敵の攻撃タイミングに合わせてガードするのは、私じゃできない。



「でもガードってHPを完全に守るわけじゃないよね~? コユちゃんのHPって……」



 ヒメはそう言ってコユのHPゲージに目をやる。

 通常、防御(ガード)というのは防ぐだけであって無力化するものじゃない。

 ダメージ軽減だ。

 それなのに、コユのHPは1ドット足りとも減っていなかった。



「そりゃ普通の盾なら減るわ。盾の衝撃を体で受け止めるんだもの」

「……あっ、盾から離れてるからダメージ入らないの!?」

「そういうこと。まぁその分、押しとどめるためにMPを使うのよ。ガード成功時にゴッソリとね。だから今回はヒメのMP回復に助けられたわ。ありがと」

「えへへ~嬉しいなあ~♪ このパーティーだからできた戦術なんだ~!」



 私がアタッカーをして、コユが私を守って、ヒメがそれをサポート。

 上手く噛み合ったからクリアできたんだ。



『【¥1,000】おつ狩りさま』

『これで次の街に行けますね!』

『おめでとう!おめでとう!おめでとう!』

『ほんとに初見ノーダメクリアするやつがあるか!』

『俺も晦冥使おうかなぁ、どこで入手すんの?』

『ダメージ軽減率70%とかいうクソダルいゴーレムと数時間格闘する苦行を強いられるぞ』

『コユ氏のアーカイブに残ってるよね。まさか日が昇るとは思わなかった』

『【¥3,000】Congratulations!!!いいバトルでした』


「コユちゃんも頑張ってるんだな~♪」

「フフン……もっと褒めてくれてもいいのよ?」

「エイトハンターさん、クロメノコさん、投げ銭ありがとうございます!」



 コメントも続々と流れてくる。

 投げ銭もチラホラと見られ、エクスユニル攻略配信は大成功──かに思えた。


 ──配信終了後、私達は急上昇ランキングを見て目を疑うことになる。



  ■■■



 街の噴水広場。

 そのベンチに腰掛けて、私はフルライブの急上昇ランキングと睨めっこ。

 エクスユニルとの戦闘は上手くできたつもりだったけど、まさかのランク外。

 失速の原因は──。



「攻略組が第三(サード)ダンジョンボスを討伐したみたいね……」



 コユは爪を噛み、私以上のしかめっ面でランキング上位を睨みつけていた。



第三(サード)ダンジョン……最前線だね~」

「えぇ、レベル60から70を解放するための第三(サード)ダンジョン《旧アルファス城塞跡》……ベータの時はここ止まりだった。まぁ、だからでしょうね……クリアされたと聞いてたくさんのプレイヤーが見に行ってるんだわ」



 攻略の最前線と言われていた第三(サード)ダンジョンの配信。

 最大16人のレイドパーティーを組み、それぞれが配信を行ったことで1位から16位は軒並み《旧アルファス城塞跡》で埋め尽くされていた。

 上位陣の最高視聴者数は10万人をゆうに超える。

 その後、ここぞとばかりに多くの配信者が《旧アルファス城塞跡》の攻略に乗り出し、結果──第一(ファースト)ダンジョン《神獣の大森林》の攻略をしていた私達は埋もれてしまった……。



「どうすれば……っ」



 せっかく兆しが見えてきたところだったのに、ただこの日──彼らとの配信時間が被ったことが原因で埋もれた。

 運が悪かったで片付けるのは簡単だ。

 でも、その運を掴み取るための努力を……私はしていただろうか?

 今回の配信はコユのアイデアであって、私自身は何もしていない……何も。

 あぁ……まただ。また何もできていない。


 相手はコユが言っていたプロゲーマー。

 私達よりもフルダイブゲームの経験が多く、洗練された動きは見た者を魅了する。

 彼らは運でここまで上り詰めたわけじゃないんだ。



「……ヒメ、コユ。私、今日はもうログアウトするよ。いろいろ考える」

「考えるって……」

「私のミスが原因かもしれない。せっかくコユが企画してくれたのに、ごめんね。でも今日は楽しかったよ」

「ちょ、待ちなさいカナメ──!」



 そう呼び止められた時には、私の指はログアウトボタンに触れていた。


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