#14. 承認欲求モンスター(プレイヤーですが)
先週の急上昇ランキング33位──寝転部コユ。
職業、VTuber。
私達が隠しダンジョンの攻略配信をしているなか、彼女はソロでダンジョンボスの連続攻略……つまり、ボスラッシュをしていた。
「コユさん、ソロでダンジョンボスと戦ってるんだ」
「しかもあの子の武器は盾……タンクなのにソロ攻略しちゃうなんてすごいね~」
私は《濫伐者カリカーン》の攻略にはヒメのアシストがなければクリアできなかった。
それにあれはお金を積んだ廃課金攻略。
プレイヤースキルなんて微塵もない。
だからこそ彼女は凄い実力の持ち主だと、私はそう思わずにはいられなかった。
でも盾で攻撃とはどういうことだろう。
「み、見つけたわ。金髪赤眼女!」
小さい肩を上下に激しく揺らし、荒い息をするのは大盾少女──寝転部コユ。
金髪女とか言ってたのにちょっと情報量が増えてるのは少し嬉しい。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
ひとまずお礼を伝えるべきだろうと、私は頭を下げる。
すると、私がお礼を言ったことがそんなに意外だったのか、コユさんはキョトンと首を傾げた。
「は……? 助けた? 誰が?」
「え? コユさんが……」
「バカ言わないで。コユはあなたを倒すのに邪魔だったからアイツらを片付けただけよ。コユが勝ったんだから、コユと勝負してもらうわ」
「なんで勝手に私を賭けるんですか……」
本当に私と戦う為だけにあの男性プレイヤー達を倒してきたのか。
「隠しダンジョン《濫伐者の柩》を発見、そして攻略したルーキー……いま話題のあなたを倒せば視聴率が伸びるのよ」
「そんな馬鹿な……」
「まぁアイツらはレアドロ狙いだったみたいだけど。あと今も配信中よ。コラボありがとう。あとで口座番号教えなさい」
「あ、はい……え? 配信中なのに視聴率とかの話しちゃうんですか!?」
「言いたいことは言う主義なの。うちのリスナーはもう慣れてるわ」
それだけ言って、「ふぅ」と息を落ち着かせたコユさんはおもむろにメニューを操作して──。
『プレイヤー《コユ》から決闘を申し込まれました。挑戦しますか?』
やはり、どうしても私と戦うつもりらしい。
「さっき言った通りコユは蘇生アイテム《不死鳥の火花》を賭けるけど、あなたは何も賭けなくていいわ」
「いいんですか?」
「あなたに勝つ。その勝利がコユの欲しいものだから。それとも賭け金が足りないかしら」
「……いえ、充分です」
そこまでして決闘をしたいと言うなら、私も覚悟を決めよう。
Yesボタンを押すと、四方を半透明の薄い壁──バリアのようなものが張られ、簡易バトルフィールドが展開される。
街中では武器やスキルを使うことはできないけど、このバトルフィールド内であればプレイヤーは自由に戦うことができ──、
「──【起動】」
決闘開始までのカウントダウンが始まるなか、突如として黒の大盾が大きな駆動音を立てながら浮かび上がった。
「盾が浮いた……!?」
プレイヤー・コユは浮遊する大盾に飛び乗ると、まるでサーフボードかスケートボードにでも乗っているかのようにバランスを維持。
「街中じゃ歩かされるわ走らされるわでホント疲れるわよね」
完全に地面から離れ、上から私を見下ろしてくる。
まさか……まさかのあの盾って……っ!
「それって──ソーラマグロってやつですか!?」
「これのどこにマグロ要素があるのよ!?」
言われてみればそうだ。
「カナメちゃ~ん、《ソーラマグロ・Yeah!!!!》はアウターだよ~」
「あ、そうだった。盾じゃないか」
レアらしいから一度は見てみたかったけど、まぁそんな簡単に出会えるわけないか。
肩を落としながらも、戦闘準備をするためインベントリから武器を実体化させ、チェーンソーを装備する。
『3……2……1……DUEL START!』
カウントダウンが終了し、待機状態から開放された瞬間。
私の視界は『黒』で埋め尽くされていた。
「押し潰すッ!」
「──ぅぐ!?」
飛来してきた大盾にのしかかられ、瞬く間もなく押し倒される。
重い──。こんなの、武器を振る暇もない。
HPは三割削られ、今もなおジワジワと減少し続けている。
「このっ、重いっっ、てぇっ!!」
「なんだっけ。ゴルトライザー? コイントス? そんなもの使わせなければいい話。そうでしょ? だからあなたは《濫伐者カリカーン》の戦慄状態をなんとかしようとしたんだもの」
──この子、カリカーンの攻略配信を見てるのか!
「手のうちは、バレてるってわけですねっ」
「配信者には付き物よ。ましてやここはPvP推奨のDDO……配信を見ているのはファンだけじゃない。こうやって、あなたを攻略するために予習してくるプレイヤーもいるのよッ!」
さらに重圧を掛けられ、HPがグンッと大きく減少。
このままじゃHPを削り切られる……決闘の制限時間も迫ってる。
でも、動けないんじゃいくらレアドロップ武器があっても意味がない。
「悪いけど、コユの踏み台になってもらうわ!」
踏み台……そうか、この配信界隈は弱肉強食。
最も話題を集めた者が頂点を目指す切符を手にすることができる。
この寝転部コユというVTuberは、本気で上を目指してるんだ。
「──カナメちゃんっ!!」
ヒメの声が聞こえた。
不安そうな顔で、胸の前で手を握りしめて見守ってくれていた。
……私だって本気だ。何があろうと上を目指し続ける。
「踏み台なんかに、なってたまるか!!」
「……っ!?」
そうして私は、舌を噛む。
自傷だ。残り少ないHPを自分の意思で削る。
つまり1ヒット。【ゴルトライザー】が発動する。
「まさか、自傷ダメージでも発動できるの!?」
「カハッ──そりゃ、このスキルは『攻撃したら1Gがドロップする』としか説明されてないですから! 攻撃すればいいんだ……私が、私自身を!」
もちろんそれで所持金が増えることはない。
でも、ゴルトコインは例外なくドロップする。
「──表!」
口から吐き出した1Gで【コイントス】を発動。
コインは表側──『筋力上昇』を引き当てる。
「そんなっ、なんでこの状況で当てられるのよっ!」
「私だって上を目指してるんです」
チェーンソーが唸る。
再び浮かび上がり、空へ逃げようとしたコユの手を掴んで引きずり下ろし──【ルードバスター】。
「あぁぁぁぁッ!?」
チェーンソーで斬り上げた身体は宙を舞い、ゴルトコインを何枚もドロップさせ──。
『TIME OVER──Draw』
両者ともにHPを八割削り、結果は引き分けで終わってしまった。
勝負は着かなかったけど……これが一番平和的でいいのかもしれない。
「た……対戦ありがとうございました。コユさん」
尻もちを着いたまま起き上がろうとしないコユさんに手を差し伸べる。
しかし──華奢な腕はその手を払い、一人で立ち上がった。
「…………認めない、こんな形で終わるのは」
静まり返った大盾をインベントリに仕舞い、私達に背を向けたまま言う。
「金髪赤眼チェンソー女、次は必ず……あなたを倒すわ」
それだけ言い残して、寝転部コユはその身を光に包み──ログアウトしていくのだった。
◇1/6 レビューまでいただいてしまいました……!
レビューは返信とかできないのでとりあえず、この場をお借りしてお礼を……!
ありがとうございます!!!!!!




