018 - やつらのあふれたせんないでおれだけがおそわれない -
〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜 250話投稿記念で新作小説(10話程度で完結予定)を投稿しています。
理衣さんは異世界に転移しました、でも様子がおかしいです!。
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018 - やつらのあふれたせんないでおれだけがおそわれない -
キシャァァァ!
「いやぁぁ!」
「誰か!、助けてくれ!」
じゅぶっ・・・びちゃ・・・
「良い眺めだ・・・」
自己紹介しよう、俺の名前はレオ・・・レオ・タァドという、若者というにはもう若くはないがおっさんと言われると腹が立つ短命種の28歳、とある組織に雇われた工作員だ。
今俺は民間の旅客船に乗り込み「積み荷」を解放した、俺は貨物輸送の途中で船が故障し立ち往生していたハンターという設定だ、得意の嘘を並び立て哀れな遭難者を装った。
怪我をしていると言って上手く旅客船に乗り込んだ俺は通信回線を乗っ取った、これでいくら救難信号を出しても外部には届かない、高価な荷物を積んでいるからそちらに移させてくれと頼み込み許可も出た・・・この船を地獄に変える厄災だとも知らずにな。
これが上級貴族様を乗せているでかい船だと話は変わって来る、俺のような得体の知れないハンターは船には乗せないだろうし積荷も厳しく検査される、だがこの船は田舎航路のちょっとばかり豪華な旅客船、乗っている客は下級貴族か小金持ちの平民だろう。
当然最初から上手くは行かなかった、俺は今まで3隻の観光船に無視された、4隻目の船長がお人好しのバカで助かったぜ。
キシャァァァ!
俺の目の前を黒くてでかい化け物が通り過ぎる、背中には何本もの触手が生え牙や爪は凶悪なほど鋭い。
「いやぁぁぁ!、お父様、お母様助けて!」
綺麗なドレスを着た少女が全裸に剥かれてる、こいつは下級貴族だろう、父親は・・・あそこで倒れている奴か、母親は何処だろうな・・・どちらにしてもこの少女の未来は明るくない。
どしゅっ!
「ぎゃぁぁ!」
椅子を振り回し抵抗していた男が爪で串刺しにされた、化け物の機嫌を損ねたようだ、場合によっちゃぁこの男は幸せな人生を送れたとも言える、生き残った奴らはこれから「死んだほうがマシ」と思える程の酷い目に遭うだろう・・・。
「あぐっ・・・んっ・・・痛い」
キシャァァ!
先ほどの少女は化け物に股間を貫かれ体液を流し込まれたようだ、身体が細かく痙攣して恍惚の表情を浮かべている、分かるぜ、あれはこの世のものとは思えねぇほどの快感だった、俺は股間じゃなくて尻だったがな。
化け物の腹に生えている触手・・・半透明の卵管の根本には赤黒い体液と一緒に卵が詰まっている、もうすぐ彼女の体内にアレが流し込まれるだろう、もちろんそれは股の穴だけじゃ終わらない、次は尻、その次には口から・・・。
「っ・・・」
部屋の隅・・・向こうでは男が化け物に組み伏せられている、おそらく尻に挿れられた触手から体液を送り込まれているんだろう、あの化け物どもは若い女、若い男、子供の順で襲う、腹で幼虫を育てるのには若い方がいいって事なんだろうな。
「別の部屋に立て籠ってる連中は・・・と」
俺は携帯端末で船内の様子を調べる、組織から貰ったこいつは大したもんだ、船内のシステムに干渉して誰にも気付かれないよう巧みに乗っ取る・・・作った奴は優秀だ、そんな人材が組織には大勢居るらしい。
この辺で俺を雇ってる組織について話そうか・・・星団にはベンダルワームに寄生された宿主達で作る組織が幾つもある。
穏健派の代表はアタァーシャー、この組織は宿主の地位向上を目的として活動している、反宿主組織との交渉や権力者達との話し合いを重ねて地道にやってるようだ。
強硬派代表はセコヴィッチィー、偏見や差別・・・抑圧され苦しんでいる宿主達の自由の為に・・・というのは建前で裏ではテロや暗殺も厭わないヤバい奴らだ。
そして俺の雇い主、ドワルスキィーは過激派代表・・・宿主を迫害し虐待した連中への復讐を掲げ、星団の住民や貴族どもに同じ苦しみを・・・捕獲したベンダルワームを居住区に放し、人に寄生させ宿主を増やす事を活動目的としている。
宿主組織の中でも飛び抜けて狂った思想の連中だぜ・・・。
もう分かっただろう、俺が今ここに居る理由・・・俺は宿主だ、ガキの頃に襲われて身体の中に幼虫が3匹居る。
男の宿主は性欲を激らせて女を襲わないようにと股間のモノを切断し去勢される、傷が癒えた後は防護服を着せられ首輪や枷も嵌められた・・・。
酷ぇ屈辱だったぜ、住んでた故郷を追われ行く先々で嫌がらせ、仕事を探すのにも一苦労だ・・・俺の思想が過激に染まってくのに時間は掛からなかった。
宿主にされた人間はベンダルワームに襲われない・・・これはよく知られてる事だ、殺しちまうと腹の中の幼虫も死ぬ事になる、奴らが判別する方法は宿主の体臭だと言われてるが実は今でもよく分かってないらしい。
「だから・・・奴らの溢れたこの船内で俺だけが襲われない」
だが俺が今やってる仕事は女じゃ無理だと組織に説明されたな。
女の宿主はベンダルワームを見ると昔犯された快楽をもう一度求め自制が効かなくなるらしい、人によっては化け物に寄って行き股間を擦り付ける奴まで居るそうだ。
男の俺でもあの化け物を長く見てると襲われた時の快楽が欲しくなって下腹が疼きやがるからな・・・。
ピッ・・・扉を解放します・・・
プシュー・・・
「なっ!、何故扉が開いて・・・」
中に隠れてる奴らが驚いてる、男が1人と女が2人・・・何故開いたか教えてやろう、俺が開けたからだよ。
キシャァァァ!
「ひっ!・・・来るなぁ!」
「いやだぁ、怖いよぉ」
俺の後ろからついて来ていたベンダルワームが中の奴らに襲いかかる、俺は扉の影から様子を見ているだけ・・・楽な仕事だ。
おや、先に一番若い女を狙ったか・・・男は開いた扉からその隙に廊下へ逃げた、だが気を付けろよ・・・廊下にも奴らは居るぞ。
俺が船内で放ったベンダルワームは5匹、2匹は今まで俺が居た一番でかい娯楽室で乗客に卵を産みつけている、2匹は俺の後ろに居て襲う相手を探してた、もう1匹は何処に居るのか分からないが船内をうろついいてるんだろう。
・・・ベンダルワームってのは謎だらけの化け物だ、メスはオスよりでかい、近付いてきたオスを触手で捕まえ自分の身体と融合させる・・・そしてオスは生きたまま種を搾り取られるだけの存在となる。
メスの胸には触手に埋もれたオスの顔が見える、手足は触手に溶かされて半ば同化しているからもう2度と自由になる事はないだろう・・・ごく稀にだが人間も奴等に気に入られると身体に取り込まれて卵を孵化させる為の苗床にされるらしい・・・。
「嫌っ!、痛い・・・痛いっ!ぎゃぁぁぁ!」
・・・
「ここか・・・」
俺は襲われている女の悲鳴を聞きながら廊下に出て一番奥にある扉の前に立った、この船の操縦室だ。
懐から銃を出す、監視カメラもあるだろうから船内の騒ぎには気付いてる筈だ、救命依頼の通信を出してるかもしれないがそんな事しても無駄だぜ。
この中の奴らは武器を持っている可能性が一番高いだろう、俺は普通の人間だから武器を持った奴相手に勝てる保証は無い、用心しないとな。
後ろのベンダルワームが扉の前に立つ、この中に獲物が居るのを感じて待ちきれないらしい。
ピッ・・・操縦室、扉を開きます・・・
ドシュッ!、ドシュッ!、ババババッ!
思った通り撃って来やがったな、だがそんな低出力の銃じゃこの化け物は倒せないぜ。
キシャァァァ!
中には男が3人、こいつらには生きていて貰うと困る、俺が救助要請したり船内に荷物を搬入した事を知っている、せめて楽に死なせてやるぜ。
ドン!、ドン!、ドン!・・・
俺はベンダルワームに襲い掛かられ応戦してる3人の頭に銃弾を撃ち込んだ。
キシャァァ!キシャァァァ!
化け物が俺を非難するような目で見る・・・獲物を殺したから怒っているに違いない、だが俺は宿主で腹の中には奴らの幼虫が居るから殺される事は無いだろう。
俺は操縦席に座り端末の子機を取り付ける、これは客室のネットワークでやったのと同じ作業だ、船内のシステムに介入し制御権を奪う・・・成功だ。
この船が俺の乗っている船を見つけ、横付けして俺を保護した所までの記録を全て抹消する・・・証拠隠滅は確実にやらないと俺がお尋ね者になっちまう。
俺たち宿主は何かやらかして手配されたら逃げられない、星団に管理されているからだ。
胸に埋め込まれている機器や首輪から発信される位置情報で星団当局に居場所が分かるようになっている。
凶悪な犯罪を繰り返していると「上」から危険人物と判断されて処分命令が下り、幼虫が覚醒して身体の外に出ようとした時に使う猛毒が機器から心臓に注入され死に至る・・・。
つまり宿主達の命は星団当局に握られてるって訳だ、だから俺や組織の構成員は証拠を残さず任務を終えなければならないし命懸けだ。
・・・
「あと半日くらいで近くの転送ゲートか・・・」
俺のもう一つの仕事は化け物が乗った船を何処かのステーションに放り込み奴らを解放する・・・場所は俺に任されている。
何処がいいかな?・・・2年前に俺をゴミみたいに扱ったあそこにするか・・・。
ピッ・・・外部回線復旧・・・
「転送ゲート予約、行き先はエテルナ星系、第二惑星ローゼリア」
あとは自動操縦でステーションに入り、格納庫を開けてバケモノを解放するだけだ。
「エテルナ星系、第二惑星ローゼリア軌道上、第8ステーション・・・ステーションNo3085663-11289、緊急入港申請・・・本船は旅客船マリーナⅦ、乗員と乗客に重傷者多数発生・・・」
救命信号を今から1日後に発信するようセットし、操縦室を後にした。
「痛いよぅ、誰か・・・早くお医者に・・・宿主になんてなりたくないよぉ・・・」
「ぐっ・・・俺の足が・・・尻も痛い・・・」
娯楽室の様子を見る為に中へ入るとまだ化け物は乗客達とお楽しみ中だった、宿主に「なんて」なりたくない・・・そうだろうな、この星団の連中は皆ベンダルワームを恐れ宿主に対しても憎しみに近い感情を向けている。
立ち上がって動ける奴はいないか・・・この部屋の中で生きている人間は全員卵を産みつけられたようだな、あと半日もすれば幼虫が孵化して身体に根を張り始めるだろう・・・明日にはお前達も宿主になる。
「1、2、3・・・18人・・・、別の部屋に3人、操縦室に3人、隣に8人・・・記録だと乗務員も入れてこの船には34人乗ってる筈だ、足りねぇな・・・まだ客室に隠れてるのか?」
どうする?・・・船内を回って探し出すか・・・。
「それも面倒だな・・・」
ピッ・・・客室および貨物室の全扉開放、状態を維持します。
「ふふっ・・・これでいいだろう」
・・・
俺は娯楽室を出て旅客船に横付けされている自分の貨物船に乗り込み連結を解除した。
・・・
ピッ・・・
「大丈夫か?、大変だったな」
「あぁ・・・救助してくれて感謝する、薄情なもんだ・・・俺が必死で助けを求めてるのに皆素通りして行きやがる、昨日だってすぐ横を旅客船が通ったのに・・・」
「こんなにボロボロで怪しい船は普通無視するだろう、何で星団の広範囲通信で救難信号出さねぇんだよ?」
「あれは救助された後で経費請求されるだろう、俺にはそんな大金払えない、借金してこの船まで売る事になっちまう・・・同業者、しかも俺みたいな宿主に偏見が無い奴が通りかかってくれて助かったぜ」
「確かにそうだよなぁ・・・俺も同じ状況になったら戸惑うかもな、だが金より命だぞ」
「そうだな、次は気を付ける」
「船の中に入れてやることは出来んが、近くのステーションまで引っ張って行ってやるよ、それでいいだろ?」
「あぁ、助かるぜ・・・ステーションに着いたら礼はする、俺の名前はレオだ、よろしくな!」
読んでいただきありがとうございます!。
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
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〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
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