014 - おれのこのみはきょにゅうのじゅくじょだ -
014 - おれのこのみはきょにゅうのじゅくじょだ -
私の名前はジョウ・カルヴィドゥン、ランサー星系周辺を縄張りに活動する盗賊団の幹部だ、今私は半壊した巡洋艦の中で僅かに残った生命維持機能が生きている区画に居る。
こうなったのもベネットの戦闘力を舐めていた私のミスだ、まさか150隻相手に互角とは・・・。
だが最後に奴の船も大破させた、この辺境ではまともな救助活動も期待できない・・・相討ち・・・まぁそれも良いだろう、妹のシーオと親友ナーミの仇は討った。
2年前、ベネットによって沈められた船に乗っていたのは私の相棒だったナーミ・カツドゥーンとその妻で私の妹でもあるシーオだった。
遺体は回収されハンターギルド経由で星団所属の軍に引き渡されたと聞いている。
私の暴走で星団最強の盗賊団と言われたロングフォーク旅団の弱体化は避けられない、総帥であるチョッパァーの奴は怒っているだろう・・・。
ばしゅっ!
「ジョウ様・・・」
「ん?、何か文句があるのか?」
「いえ・・・」
「生命維持機能が生きているのはこの部屋を含めごく一部だ、この男は酷い火傷で助かる見込みも無さそうだった、2人と3人・・・貴重な食料を節約する為に死んでもらった方が良いだろう」
「死体はダストシュートから外に捨てておけばよろしいので?」
「あぁ、そうしてくれ」
ざざっ・・・
「何だ?・・・壁に設置してあるスピーカーからノイズが・・・」
ざっ・・・
「・・・こえ・・・か・・・、聞こえ・・・ますか?」
ざざっ・・・
「聞こえますか?、今僕はこの船に居る生存者の方に呼びかけています・・・」
「まさか・・・救助か?」
「こちらはシェルダン号・・・僕の名前はシエル、駆け出しのハンターです、荷物輸送任務の後、観光の為に立ち寄った第5惑星を遊覧中に救助信号を受信しました・・・」
「生存者のいる場所は特定しています、自力でこの船から脱出可能な場合は3回、不可能な場合は4回、何かを叩いて大きな音を出して下さい」
私が今いる場所は格納庫だ、パワードスーツは積んである、だがこいつの稼働時間は母艦無しの場合だとおよそ2日・・・とてもこの惑星の重力圏からの脱出は不可能・・・だから私達は救助される奇跡に賭けてここに閉じ篭っていた。
「ジョウ様」
私と一緒に音声通信を聴いていたホセ・カルパッチョが鉄パイプを手に持って私に話しかけて来た。
「3回叩いて音を出せ」
かーん!
かーん!
かーん!
「3回の振動を感知しました、自力で脱出が出来るのですね・・・良かったです、もし出来なければ助ける手段がありませんでした、そのお部屋の外は生命維持装置が機能していません、救助しますので船の外まで出て来て下さい」
思わず笑みが漏れた・・・私は運がいい、駆け出しハンター・・・しかも声からすると若い女だ、上手く船に入る事が出来れば乗っ取る事が出来るだろう。
「行くぞホセ、ナイフを服に隠し持ってろ、それから銃も忘れるな」
「了解ですぜ」
そう言ってホセは嫌らしくニヤついた・・・どうせ乗っている女を襲おうと考えているんだろう、こいつも私と同じで極悪人だ、考えている事くらい分かる。
「私が良いと言うまで手は出すなよ、哀れな遭難者を装うのだ」
「中の会話は全部聞こえてるのにな・・・アホな奴等だ」
盗聴している会話を聞いておじさんが呆れたように呟きました、僕達は大破した巡洋艦に横付けしてシステムに干渉、今は船の全機能をニートが支配しています。
「僕を襲う気満々みたいだけど・・・おじさんは怪我してるし僕は戦った事ないよ、大丈夫かなぁ・・・」
「シエル、パワードスーツを着ておけ」
「えぇ・・・ニートが遠隔で動かせるんだから僕が着なくてもいいじゃん」
「あれを着てる限りお前は無敵だ、相手は武装してるんだぜ、用心に越した事はねぇだろ」
「・・・うん」
「だが奴等をこの船に乗せるのは気が進まねぇ・・・死体でもいいじゃねぇか」
不満そうなニートにおじさんが渋い顔をして答えます。
「俺もそう考えたが・・・生きたまま連れて行けば特別報酬が出る、それに奴ほどの凶悪犯なら2度と刑務所の外には出られねぇし死んだ方がマシって思えるくらいの酷い扱いを受けるだろうよ・・・そっちの方が面白ぇかなって思ってな」
「だが生きてりゃ飯も食うしクソも垂れるだろ、面倒臭ぇし船を汚されるのは嫌だぜ・・・」
「俺に任せろ、お前らに迷惑はかけねぇ」
「もう十分かけられてんだよクソ野郎!」
「出て来たぜ」
ニートの声で僕とおじさんは船外の様子が映し出されたモニターを見ました。
「旧式のパワードスーツ・・・あれはヴェンザ社製のヴロックだな、小回りが効いて素早く動ける、油断してると危ねぇかもな」
「そうなの?、おじさん詳しいね」
「・・・まぁな」
「誘導灯を点灯、ここだよー」
「向こうもこの船に気付いたようだ、姿勢制御しながらこっちに来てる」
「よしジュノー、荷物室の扉を開けてくれ」
「あいつらが暴れて集めた戦利品壊されねぇか?」
「哀れな遭難者を装ってるんだから馬鹿な事はしねぇだろ」
そういえばおじさん何でニートの昔の名前知ってるのかな?
「よし、奴らが船内に入った、パワードスーツの信号解析終了・・・通話できるようにしてやったぜ」
「はーい」
ぽちっ・・・
「聞こえますか?シェルダン号にようこそ、今から荷物室内に空気を入れます、気圧が正常になるまで少し待っていて下さいね」
・・・
・・・
・・・
「小綺麗な船だな、新品か?」
私とホセは無事に巡洋艦を脱出した、振り向くと私と共に数多くの宙域を荒らし回った巡洋艦クラッシャーの半壊した姿が見えた。
「よく頑張ってくれたな・・・ありがとよ」
私はそう呟いて救援の船に乗り込んだ、組織の幹部になってからは宇宙空間での作業を全て部下にやらせていたから船外移動するのは随分と久しぶりだな。
がこん!
「ジョウ様・・・あれを」
ホセが部屋の隅に積み上げられている大量の荷物を指差して私に話しかけた。
残骸から金になりそうな部品や積荷を回収していたか・・・駆け出しのハンターならこれを換金すれば途方もない儲けになる、だが我々を助けた事が命取りになるとは思っていないだろう。
さてどうしてやろうか、ホセより先に私も楽しませてもらうとして容姿が良いなら何処かに売り払うか・・・。
「聞こえますか?シェルダン号にようこそ、今から荷物室内に空気を入れます、気圧が正常になるまで少し待っていて下さいね」
しゅぅぅぅ・・・
「二人ともお怪我はありませんか?、安全確認の為パワードスーツは脱いで下さい」
まだ未熟とはいえ危機管理はできているようだ、得体の知れない奴を船に乗せるのだから警戒して当然だろう。
私はホセに合図してパワードスーツを脱いだ、もちろん懐にはナイフと銃を隠し持っている。
ぷしゅー
入口の扉が開き人影が見える・・・だが入って来た奴は私の予想とは違っていた。
「なっ!・・・ベネット・・・生きてやがったのか!」
「残念だったな・・・まだ生きてるぜ」
今目の前には憎い仇、私の持つ全ての権力を使って殺そうとした男が・・・ベネットの野郎が立っている、私は我を忘れて奴に襲いかかった。
「・・・スリープ」
「何だ・・・これは!」
奴の言葉と共に足元が光り、私は意識を失った。
どさっ・・・
・・・
・・・
「おじさん、何したの?」
僕がパワードスーツを着たまま荷物室に入ると男性が二人倒れていてその前におじさんが立っていました。
二人の下には円形の光る模様・・・拠点で見たマホウジン?とよく似たものがあります。
「あぁ、シエルはまだ教えて貰ってないか・・・これは魔法だ」
「マホウ?・・・」
「こいつらを眠らせたのがスリープ・・・睡眠魔法だな、それから状態保存もかけてあるからこの魔法陣の中は時間が経過しねぇ」
「え・・・」
おじさんが何言ってるのかちょっと分かりません。
「つまり10年経っても100年経っても俺が状態保存を解かない限りこいつらは眠ったままだ」
「へー・・・そうなんだ」
「絶対分かってねぇだろ!、だがこれの維持は魔力の消耗が激しくてな、体調が万全じゃねぇ今は相当きつい、できるだけ早くハンターギルドに連れて行って引き渡したい」
「そう・・・じゃぁ回収は中断して今からギルドに向かう?」
「待て!、まだ残骸を全部調査してない、しばらくの間は大丈夫だろう、お宝を全部回収してから行こうぜ!」
「おじさんが大丈夫なら・・・そうしようか」
俺の名前はベネット・ライアスだ。
第5惑星重力圏で死体や貴重品を拾い始めて4日が経った、昨日はジョウ・カルヴィドゥンの奴を捕まえたから主な賞金首の捕獲は全部終わった。
ジョウと一緒に居た男はホセ・カルパッチョ、生体情報を元に検索したらこいつも高額な懸賞金がかかってた、2人は死体を冷凍保存してある第二荷物室に放り込んでやった、状態保存の魔法があるから凍死する事は無ぇだろう。
あとは俺達がまだ調査できてない船に積んでる貴重品を集めるだけだ、予定通り調査は4日で終わりそうだな。
・・・
そわそわ・・・
もじっ・・・
「・・・おじさん、ちょっと寝室に行ってくるね」
俺がモニターで外の様子を眺めてるとシエルの奴が管制室から出て行った、薬を飲んで呼吸が荒くなってたから副作用で発情してるんだろう・・・。
昨日は俺が居るにも関わらず操縦席に拘束されてジュノーの奴に身体を弄ばれていた、最初は俺も目のやり場に困ったぜ。
「ベンダル・ワームか・・・」
残念ながらこの星団の技術じゃ寄生された宿主から幼虫を摘出する方法は無ぇ、星団主導で医師達が色々と試したようだが宿主は皆死んじまったらしい、「向こう」の技術でも・・・無理だろうな。
「おいベネット、シエルの様子を見るか?」
ジュノーの奴が俺に話しかけて来た、何故だか分からねぇがこいつはシエルが致してるところをやたらと俺に見せる、3日前も俺が寝室に居る時に操縦席で快楽に浸るシエルの姿を実況中継しやがった。
「・・・好きにしろ、ってか何でお前は俺にシエルがエロい事してる所見せるんだよ?」
「見たくねぇのかよ?」
「・・・俺も男だ、見たくないわけじゃねぇ」
「ならいいじゃねぇか」
「・・・」
俺の好みは巨乳の熟女だ、シエルのようなガキに興味は無ぇ・・・だがこの船内にはシエルの体臭が漂ってる、ベンダル・ワームに寄生され身体に体液を注がれた人間の体臭は他の奴まで発情させるらしい。
シエルはガキだがやたらとエロい、言葉使いは中性的で男と喋ってるようだし胸もぺったんこだが手足が長くて顔も良い・・・あの防護服も凄ぇいやらしい、薄い上に身体にピッタリ密着してやがるから乳首や筋がはっきり見えてほとんど裸だ。
そんなのと一緒に狭い船の中で一緒に生活・・・間違いがあったらどうすんだよ!。
胸がデカけりゃギリギリ俺の守備範囲か・・・だがダメだ!、あの2人の娘だぞ、手を出しちまったらあいつらにどんな顔して会えばいいんだよ・・・。
「はぁっ・・・はぁっ・・・あぁん!」
スピーカーからはシエルの喘ぎ声が聞こえる、大型モニターに映るシエルの痴態を横目で眺めながら俺は溜息を吐いた。
「なぁジュノー、お前シエルに精霊化について教えてないのかよ」
「今教えても仕方無ぇだろ、アレは300歳を超えて魂が安定しないと無理だぜ」
「そうだな・・・俺がとやかく言う事じゃ無ぇか」
訳あってシエルの両親や俺、それから俺の兄貴は別の宇宙からこの星団に来た、向こうで「エルフ」と呼ばれてる種族の中でも特別希少な「ハイエルフ」だ、ハイエルフに寿命は無ぇ。
1000年くらいで身体が朽ちれば精霊になって別の身体に宿る、まぁ俺達にとって肉体は入れ物みてぇなもんだ、その娘のシエルもハイエルフ・・・虫に寄生された肉体は捨てて新しく用意した器に入れば済む。
・・・
「・・・もうすぐ偵察機が全部帰還するぜ、どこのギルドで戦利品を売り払うんだよ?」
「そうだな・・・状態保存の魔法の維持が思ったよりきつい、早めに売りたいが・・・近くに転移できる拠点は無ぇのかよ?」
「あるぜ、この惑星の裏側に衛星があるだろ、お前を助ける前にそこに寄ってたんだが魔法陣が壊れてやがった、修理できるか?」
「おい!、近くに居たんなら俺がタコ殴りにされてるの見えてたよな!、助けろよ!」
「誰かが襲われてるのは知ってたがお前だとは思わなかった、シエルの奴が見捨てるのは可哀想だって言うから救助して顔見たら俺様のよく知ってる野郎じゃねぇか、驚いたぜ」
読んでいただきありがとうございます!。
これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。
遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。
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〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜
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