4 楽しい薬草取り
ハンナは竜と森に薬草を取りに出かける。森の中は鬱蒼としている。
ハンナにとっては庭みたいなものだから、慣れた道をスイスイ進んでいく。
「あ、これはこの時期にしか見られないレアな薬草だよ」
ハンナは一見普通に見える草を見て、嬉しそうに摘む。
「へぇー、そうなんだね」
竜は感心した。
「乾燥させて保存しておくんだよ。毒消しにもなるんだよ」
「さすがハンナ」
「えっ、だって私魔女だもの。薬草学は基本中の基本だよ。私なんかまだまだ知らないことが多いもん」
「そうなんだね」
「家にある本には沢山の種類の薬草が載っているよ。道端に生えているものでも何かしら効能があるよ。雑草といっても雑草じゃなかったりするよ」
「そうなんだね。ハンナには世界は違って見えるんだね」
「図鑑にある薬草を見つけるのは楽しいよ」
「そうなんだね」
薬草取りが一段落付いたので、森の中の開けた所でお弁当を食べる。竜はハンナの作ったサンドイッチを食べた。
「美味しい!」
「ありがとう!場所が変わると同じものでもさらに美味しく感じられるんだよ!」
ハンナと共に食べる昼食だからさらに美味しいのだろうと竜はしみじみと思った。
竜は流れ行く雲が漂う空を見上げた。
「確かに僕は人間じゃなくて、今は竜になってしまったけど。人間でいる時より、充実しているのは何故だろう?」
「うふふ。それは竜さんが無理してたからじゃない?無理は良くないよ?」
「そうだね。でも他にやる人が居なかったんだ」
「でも今竜でいても困っていないなら、他の人でも可能だったんじゃない?」
「まあ、そういうことになるね」
「もっと周りを頼っても良かったんじゃないかな?」
「そうかもしれないね。僕は何か見過ごしていたんだろうな。本当に。僕の代わりはいないと思っていたけど、何とかなるものなんだね」
「だねぇ。そういうものだよ」
竜はサンドイッチを食べながら思う。
(そうか。もっと信頼出来るもの達を増やしていけば、自分自身を追い込まなくても済んだんだろうか?)
ちょうど竜になったとはいえ、一番苦しい時期から逃れられた感がある。
(僕の周りにいるもので僕の状態に気が付いたものがいるんだろうか?)
結果的に竜になったことで、国も王である自分の精神も維持出来ている。
(王といってももう他の者が代わりに王になっているだろうな)
(もし、人間に戻れたとしても元いたあそこに僕に居場所はあるんだろうか?)
竜はそんなことを考えた。