2 呪いをかけられた竜
南の森に住む魔女ハンナは竜を拾った。しかし、呪いで竜に変えられた人間だった。
「信じられないわ」
膝の上に乗る竜を撫でながら、ハンナは言う。
「僕は本当に人間なんだよ」
必死に訴える竜。
「ハンナは魔女なんでしょ?呪いの解除方法を知っている?」
竜はハンナに近づいて期待に満ちた目で見つめた。
「うん、調べてみるね」
ハンナは気楽に言ったが、本棚には歴代の南の魔女が残した本が沢山ある。
随分と古ぼけた本棚がいくつもあり、天井に付くくらいの高さである。あまりに高いため、ハンナは梯子を使わないと上の本を読めなかった。本の背表紙には色々な魔術についての題名が書いてある。かなり古い本もあるようだ。あまりに古いと古典的な言語になり解読するのも大変になる。
これらの中に解除の方法は有りそうだが、探すのは時間が掛かりそうだとハンナは思った。
竜を拾って1ヶ月経った。ハンナの日常に、竜のお世話と解除方法を調べることが加わった。
ハンナは竜と一緒に寝たり、ご飯を食べたり、お話をしたり、森に行ったりと、とても楽しんでいた。竜もハンナといて楽しそうだ。
「ハンナはここに一人でいて寂しくないの?」
「寂しかったけど、竜が来てくれたから、寂しくないよ?」
「そっか。良かった!」
ベットに二人横になり並んで話していた。
「呪いの解除が出来たら、僕は元の場所に戻るけど、良かったらハンナも遊びに来ない?色々と案内するよ?」
「えっ、本当に?」
「うん、僕は王都に家があるんだけど、ハンナが泊まるお部屋くらいは用意出来るよ?解除してくれたお礼に何かしたいんだよ」
「お礼なんていいのに・・・」
「絶対にお礼したい!だってハンナは命の恩人でもあるし」
竜があまりに強く熱望するので、ハンナは考え込む。
王都に行ったことは無い。竜は王都に住んでいるから、王都に詳しいだろう。美味しいお店も知っているはず。未だ味わったことの無い王都の味。この機会を逃したら、多分一生知ることはないだろう。
(機会を逃すのは良くないよね)
「・・・そうね。そんなに言ってくれるなら、王都で美味しい物を食べさせてくれたらいいよ!」
「分かった!約束だよ。遊びに来てね」
「うん、うん。約束、約束」
「楽しみだなぁ」
竜の目に何やら妖しい光を帯びたが、ハンナは気が付かなかった。
(王都に来させられたら勝ちだ。
まずは美味しい食べ物で釣ろう。
急に迫ると逃がしてしまう。
慎重に囲おう)
竜は慎重に考えた。