9話
男の大剣をいなしつつ騎士たちの前に出る。周りの盗賊は騎士に任せる。
打ち合った結果は互角といったところだろう。とりあえず相手よりもパワーをあげるために、筋力上昇を重複させる。
それからは、こちらが優勢になり所々相手に傷がつきはじめる。
「チッッッ!」
舌打ちをした瞬間に相手の体が倍以上になり、見た目はもはや魔物だ。
たぶんだがスキルの凶暴化を使ったのだろう。
さっきまで押していたが徐々に押され始める。まずい!、と思い距離をとり土魔法を放ち、相手の動きを止める。
相手は凶暴化していて知性は感じないが、剣の動かし方や体の使い方は変わっていない。
たぶんだが、【固有スキル】大剣の導きによるものだろう。
土魔法で足を固定したが、パワーで破壊しこちらに猛スピードで突進してくるが……、
相手は隙だらけ、今ならいけるか。
「――刺斬……」
これは俺が素振中に頑張って考えて作った剣術だ。相手に刀を突き刺し、そこから天を目指すように上に刀を振り抜いていく。
使えるか全然分からなかったが威力を知るために使ってみた。
結果は……、
相手の腹から頭までキレイに斬れている。例えるならば、真ん中まで縦に割いたさけ○チーズだな。思ったよりしっかり技が決まって嬉しい。
知性を置き去りにしたことで、自分が斬られたのに気づいてないのか、死体は直立した状態だ。
他の盗賊たちを見ると、騎士に倒されている。
とりあえず安心だ。こっちはボス倒したのに、俺以外全滅でした。では笑えないからね。
すると、騎士とお姫様?がこちらに近付いてくる。
騎士は武器を構えつつ、
「身分証を見せてくれ。助けてもらった恩はあるが、あなたが安全だとは限らないからな。」
まぁ、そりゃそうだよね。怪しいもんね、こんなところに一人でいるのはね。
さっさと身分証を差し出す。
「冒険者か。疑ってすまなかった。そしてありがとう、我々を救ってくれて。
「いや、そんなことなですよ。困っている人を見つけたらたすけるのが普通ではないですか」
とりあえずこんな返事でいいだろう。
「ところで、あなた方はどなたですか?」
尋ねると、お姫様が答えてくれる。
「私はこの国の第三王女、サクア・アーノルド、こちらがレイアです。この度は助けてくださりありがとうございます。」
お姫様がサクアさんで、一番腕の立ちそうな騎士がレイアさんらしい。
少どういう状況なのか説明してもらった。
王族は年に一回大きな街の偵察にいくそうなのだが、それから帰る途中で盗賊に襲われたらしい。
そこに俺がたまたま居合わせたみたいだった。
「あの、よろしければですが、王都まで一緒についてきてくださいませんか? お礼もしたいですし、何よりあなたは強いですからね」
要するに護衛してほしいということか。まぁ今やることもないですし、行ってもいいんだけどどうしようか。と、悩んでいると
「もう少ししたら勇者召喚の儀が行われるので、王都は大いに盛り上がるんです。多くの人たちが王都に集まるため、闘技場や競馬、色々なことが企画されるんです。ぜひ、見にきてくだい」
と促してきた。
異世界の勇者か、同郷のやつに合えるかもしれないなら、行く価値がある。まぁ、合えなくても娯楽は結構あるっぽいし、報酬ももらえるらしい。
なら断る理由はない。
「分かりました。お願いします」
返事をして、促されるまま馬車に乗る。護衛なのに中にいていいのかな?とは思うが口に出さず座っている。
馬車の中はとても心地良い。今までボロボロの布団で寝ていたため、高級品らしきソファーは心が安らぐ。振動は軽減され、温度調整もされているみたいだ。馬車自体が魔法具なのかも。
依頼の物をギルドに届けるため一度、街に戻ってもらい、今ある素材を全て売った。結構お金が手に入った。
それから街で一泊して明日の朝にここを出て王都に向かうらしい。
なんか急に大層なことになったなぁと思いつつ眠りについた。
集合して王都に向かう
王都まではそこまで遠くなく。1時間ちょっとでつくらしい。
馬車に乗って索敵を発動させ、少し話ながら王都に向かう。
だんだんと近付いてきて、都市の大きな塀と門が見えてくる。それからはもう、あっという間だった。
馬車では、なぜ異世界人を召喚するのかについて、聞かせてもらった。
だいたいの理由としては、魔王の動きが活発になりアーノルド国内の街なども襲われ、多くの国民が死んだかららしい。
その為、世論では魔王を許すな!と大々的にだされ、対応しざる終えなくなり特殊な力を持つ異世界人を召喚することにしたらしい。
世間には広まっていないが、どこかの国が武器の輸入や大量生産をしているとの情報があり、それが自国に向かないように、異世界人を召喚し抑止力にしようということらしい。
他には、異世界人の召喚の儀についても教えてもらった。これをするには、【固有スキル】異人召喚が必要になるらしい。
またこれには多くの力を必要とするため、【MP】を多く持つ魔術師を10人ばかり集め、行うらしい。とても大きな力を使わないといけないため、短期間で何度も召喚するのは難しいらしい。
こんな感じで知らなかった知識が手に入った。
王都について、まず思ったのは人が多すぎる。
あの街とは比べ物にならないくらいの人がいて、
所々ドワーフや獣人など種族の人も混ざっている。
アリシアさんが言っていた通り、屋台などが多く立っていて活気が溢れている。
とりあえず助けてくれたお礼をしたいと言うことで、無理やり王宮に連れてこられた。
なんというか場違い感がすごい。王宮はもちろん豪華で広く、廊下には絵や壺、肖像画や彫刻?のようなものまで飾られている。まるで美術館にでも来ているようだ。
緊張がヤバイが、王と対面する。
王は60代くらいのおじいさんで、長い白髪を後ろで結び、整えられた白い髭を生やしている。高貴さや王の器が、己の身にひしひしと感じている。
しかしそれ以上に静かなる強さも感じる。王になる前までは戦場に立つ戦士だったのだろう。かつて戦ったトロルジェネラル以上に、厄介そうだ。そう思っていると、
「わしの娘を助けてくれてありがとう」
俺は慌てて返す。
「国王、頭を上げてください。当たり前のことをしたまでですから」
そういうと本当に感謝を含んだ目をして、
「謙遜をするな。助けてくれたお礼に何か褒美として欲しいものはないか?」
「なんでも良いのでしょうか」
「うむ」
何にしようかな。俺からしたら金が一番ありがたいかな、と思いそれを伝える。
そうすると王は俺にたっぷり金がつまった、革袋を渡してくれた。
とりあえず用事はそれだけだったので、逃げるように王宮を出る。
なんか疲れた。貴族しかいないような、あんな感じの豪華な場所はとても緊張するし、かたみがせまかった。
袋のなかを見たら白金貨5枚と金貨250枚が入っていた。
多すぎじゃない……。