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8.ネカマ初心者じゃ化けの皮なんて湯葉ぐらい薄い

あまりの短さに2話くっつけたやつです。

前の話にもくっつけたやつあります。

そろそろ書き溜めが怪しくなってきました。

どうしよう



PS的に厳しい敵が居ないかの確認作業をしつつ、ウロの覚醒を待つ。

覚醒って言っても起きるの待ってるだけだけど。

このゲーム、急所を潰せば基本どのモンスターも死ぬみたいだ。

判定が少しシビアというのが掲示板での総評らしいが、あんまり厳しいように感じない。

それとレベルに差があると与えられるダメージが極小になる、とシェリフは言っていたが、逆にエネミーからダメージを食らうとその威力は倍加するらしい。

一歩間違えたらミンチになる。

まあ当たってないから関係ないけど。


「狙い撃つぜ…!」


隣のシェリフが小声で呟いた。


「ぶふっ」


小声で言うから余計に面白くて吹いてしまった。


「あ、笑ったな」

「だって…!小声で…!ボソッて…!」

「笑いすぎだろ!」


そんなこんなで敵を殺しつつ、人が少ない穴場スポットでウロを待った…

待ったんだけど…




全然起きない。


「なあ、タルちゃんよ」

「なんだよ…」

「遅くねぇ?」

「…ほ、ほら、寝る子は育つって言うじゃん…」

「もう成長限界じゃないの?その子」


ちなみに、なんでこんな砕けた会話で、ネカマを隠そうともしていないのかと言うとウロをもう既に三時間は待っているからだ。


そう。三時間待っても起きない。

これは異常を考えざるを得ん…


「さすがに起こすか…」

「じゃあ手っ取り早くな」


ウロをゆすって起こす。

すると意外な事にウロは直ぐに起きた。


「ぴぅ?」

「ウロ。進化できるみたいだけどどうする?」

「ぴっ」


「はっ?」

「ん?どうした?」


『個体名ウロが第一進化を拒否しました。無体(プレーン)のまま続行されます』

『余剰経験値を検出。個体名ウロのレベルアップを確認しました』

『レベル5→20にアップしました』

『個体名ウロの意志による進化が可能です』

『個体名ウロが第二進化を拒否しました。無体(プレーン)のまま続行されます』

『余剰経験値を検出。個体名ウロのレベルアップを確認しました』

『レベル20→50にアップしました』

『個体名ウロの意志による進化が可能です』

『個体名ウロが第三進化を拒否しました。無体(プレーン)のまま続行されます』

『余剰経験値を検出。個体名ウロのレベルアップを確認しました』

『レベル50→99にアップしました』

『カウントストップ!現状態《無業定竜》の成長限界に達しました』


「……こいつぁひでえや」

「えっなに」

「ウロのレベルがいきなり99に…ってかウロが進化拒否しちゃってるんですけど」

「…えぇ…レベルの異常な上がり方もなんだけど…推測では進化が巣立ちに必須なんだよね?…それはやばくない?」


当然やばい。

巣立ちというものがなにを起因して行われるものなのかが、まだ不明なところがあって、いまは安直かもしれないが最終進化が巣立ちのトリガーだと推測している。

そこで最終進化がどこなのかテイマーが集まる掲示板を見たところ最終進化で150レベルというのが判明した。

しかも、進化する度にレベルがリセットされるのだそう。

途方がない。

だけどやらなきゃ終わらないということでレベリングしたんだけど…

いきなりカンストした上に進化拒否ってどゆこと?

進化しなくなっちゃったら巣立ちはどうなるの?

無業定竜ってなに?

ちなみにヘルプには書いてなかった。

無能。


◇◇◇

【賢人の都】から帰還する。

カンストしてるし、レベリングする意味が無いからね。


「でも…赤ちゃんの状態でカンストしててもあんまり強くなさそうなんだよね…」


その証拠にウロはまだ半分くらいハイハイで移動している。

人間みたいな育ち方だけどいいのかなこれ。ドラゴンとしてどうなの???


なんてことを考えつつステータスを確認する。


▽▽▽▽▽▽▽▽

名称: イシュタル

種族:未人

Lv.1

職業:竜母

技能:【授乳】【教育】【叱責】【称賛】【児戯】

技能控え:【短剣術】【殺陣】

称号:[竜の母となりし未人]

所持キーアイテム:《星往く竜の卵殻》《星往く竜との絆》


いつ取ったのか控え技能に【短剣術】と【殺陣】が追加されていた。

戦闘中に取れたんだろう。


「どうしたんだ?」

「ん、ああ、使いたくても使えないスキルが増えたんだよ」

「……えっスキル使ってなかったのか?」

「まあでもスキル補正なしでもある程度動けるし、このゲームちょろいかもしれないな」

「ひゃあ……それでこの後どうするんだ?俺はログアウトして昼飯食ってくるが」


時計を見ればもう既に昼時だった。


「んー…適当に散策してる。ログインしたらメールよこしてよ」

「了解。死ぬなよ〜」


光の粒子に巻かれシェリフは消え去る。

太陽が真上で燃える中、俺は少し埃っぽい街道をぬけてフィールド探索に出かけた。




◇◇◇

「レベル上げできなくても、対戦格闘ゲームレベルの楽しさあるし、楽しまなきゃ損損」


随分奥まで進み、森のボスだったオークキングを屠殺した。

豚肉がっぽがぽだぜ!




「でもな…ちょっと物足りないかも」


それも当然かと思った。

さっきまで最前線にいたわけだしね

この固定ダメージを与える短剣があればここ一帯のモンスターは敵じゃない。

まあ全員急所突きだけどね、そこはプライドがある。


「すわ!殺気!」


感じるわけもないが今はひとりだ(と1匹)

遊んでみたくなってしまったんだけど…

振り返ったら本当にモンスターいるってどゆこと?


そいつは微動すらせず俺を見続けている。

深緑色の鱗が全身を強固に守っていて、生半可な攻撃は通じることは無さそうだ。

そこは何も問題がないのだが異常な点が三点ほど。

そいつには足に翼腕二対加えた合計六本の足があった。

口の横にクワガタのようなハサミもあった。

だけど俺はそこじゃなくて、そいつの目から逃れられないでいた。


目、目、目、目、目、目、目、目、目、目。


複眼


虫の複眼のような優しいものでは無い。

縦に割れた瞳孔を持つ細かい瞳が密集した複眼だったのだ。

その複眼が蜘蛛のように四つ存在していた。

背中を冷たい汗がくすぐる。

ゴクリと喉を鳴らしつつ視線を外し、そいつの頭上にあるボスにしか出ないはずのネームタグを見た。


【インセクトワイバーン】













「ワイバーンって竜じゃないのかよ!」


インセクトワイバーンの風弾を避けつつ叫ぶ。

竜母なんて職業だからワイバーンは攻撃してこないんじゃないかと思って手を伸ばしたらパックリ行かれた。

今は右手なしでやってる。

右手ないってかなり怖いけど。


「ギャアアアア!」

「鳴き声汚ぇっ!」


森の中でも戦闘のため、足場も悪く、見通しもつかない。

だけどワイバーンは飛べる。

この差はかなり大きい。

ワイバーンの風弾はギリギリ避けられるけどいつ当たってもおかしくない。というか風弾が当たった場所のクレーターがやばい。

デスペナした時のウロの扱いがわからない以上ここで死ぬわけにはいかない。

死ぬならシェリフが近くにいる状態でだ。

隠者の泥も使ってはみたがこのボスには効果がなかった。

なんかそういう虫の特徴も持っているのだろう。

っと、そんな分析してる場合じゃない。


「…なっ!連続発射?!本気じゃなかったってことか?!」


風弾が連続で四発発射された。

三発は避けたがそのうち一発が本命だとばかりに俺の中心を狙ってきた。

仕方なく立ち止まり短剣を抜く。

抱っこ紐はかなりの強度だ。

その事を頭の中で反復しつつ、短剣を逆手で防御のために構えた。

風弾が短剣にぶち当たる。

暴風なんてちゃちなものじゃない。

砲弾のようなものだ。

あまりの衝撃の重さに踏ん張ることができず、俺の体は空中に躍り出た。

幾本の樹木をへし折りつつ吹き飛ぶ。

森を抜けかかっていたのか森から抜ける。

当然だが短剣は砕けた。

砕けた破片が刺さり腕の反応が鈍い。

神経を少し傷つけたかな。

シェリフに貰った身代わりのお守り五つは全て砕けている。

そこで気付く。

腹にあった感覚がない。

【混乱】と【出血】の状態異常で朦朧とする頭を振り、見つける。

俺からちょうど1mほどの場所で抱っこ紐があり、その中から投げ出された形でウロがびっくりしたのか大泣きしている。

這うような形でウロの所までたどり着く。

重くなった左手をウロの頭に乗せ、こう言った。


「ごめんね…驚かせちゃった……そこでじっとしてろ…見ててね」


残った方の短剣を引き抜く。

だが指の感覚が薄く、落としてしまった。

舌打ちし、ワンピースを破き、短剣を手に口で縛り付けた。

ポーションはインベントリではなくすぐに使えるようにポーチ(シェリフからのプレゼント)に入れていたのだがぶっ飛ばされ、どこかに落としたようだ。

思考操作でインベントリに残ってた薬草を口にマテリアライズさせ、噛みちぎる。

苦味が口に広がるが、気合いで押さえ込み、ワイバーンを睨みつける。


「ふっ…ふっ…ふっ…しっ!」


わざわざ着地し、風弾の発射準備をしていたワイバーンに突っ込む。

突貫しようと踏み出した瞬間風弾が打ち出される。

それを俺はスライディングをして避ける。

二発目は、左手を無理やり動かし左手だけで跳躍、回避した。左手の感覚はもっと希薄になる。

三発目、風弾の周囲に僅かに発生している風に身を任せ滑るように風弾を捌く。

ワンピースが破け、あばら骨が数本逝った。

『スキル【極限回避】を獲得』

四発目、朦朧とする頭で風弾に短剣を入れる。

風弾は両断され、俺の両側の地面が吹き飛ぶ。

『スキル【極限眼】を獲得』

短剣は刃こぼれが発生し折れかかってはいるが、トドメには十分だ。

縮地で急接近し、反応できていないワイバーンの目に短剣を突き刺した。


はずだった。

左手の感覚が完璧に消えた。

ブランと垂れ下がっている肉の塊にはもう俺の感覚は通っていない。

状態異常である【部位欠損】に左腕が追加されている。

力が抜け、膝をついた。


「あぁ…もう…」

「ぴぅうううううう!!」

「ギャアアアア!!!」


ワイバーンが俺を頭から食べるべく口を開ける。

さすがにデスペナを覚悟した。

ウロのことを心配したし、失敗したなとも思った。

だけど、そんな考えも、ワイバーンの上に現れた巨影にかき消された。

黄金の双眸に、黄金の角、漆黒の鱗、鱗に隠されながらもしなやかな筋肉に包まれているとわかる強靭な四肢、雄大な二対の翼。

ワイバーンなんて矮小なものでは決してない。

本物の竜種がそこにいた。


『穢れた混血の分際で我らの母を害そうなどと…身の程を知れ』


竜が言葉を発すると、ワイバーンはまるでなにかに押しつぶされるかのように圧死した。

一瞬でワイバーンは死んだ。


「…ぐっ…」

『竜母よ、少し待て』


巨大な漆黒の竜が地面に降り立つ。

俺に手をかざした。

すると俺は全快した。

山ほどあった状態異常も消え、服と短剣さえもなおった。さすがに砕けた短剣はなおらなかったが。


「あ、ありがとう」

『うむ。それより竜母よ、そなたの子が待っておるぞ』

「あ、ウロ!」


ウロに走りよると、ウロは外骨格の下から涙を流しつつ俺を労ってくれた。


「よかった…」

『…ほう。素体の状態でありながらその潜在能力か。進化が楽しみだ』

「ぴぅ?」

「あ、あの!」

『む?どうし…いやまて、竜母よ。ここではちと目立つ。場所を変えるぞ』


そう言うと竜は俺を背中に乗せて飛び立つ。

絶叫アトラクションの比じゃないくらい怖かったのは別の話だ。


読んでいただきありがとうございます!

感想評価とても嬉しいです!

誤字報告もありがとうございます!

思ったよりも色んな人に見てもらえているみたいで本当に嬉しいです!

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