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6.因縁つけられるでもなく手伝ってくれるとかテンプレさん恥ずかしくないの?

6


「それで、手伝ってもらいたいことって?」

「この子が巣立ちするまで経験値を分けてもらいたいのです」


端的に言えば、これからのお前の経験値もよこせよ、ということである。

たった1発の弾丸とは全く割に合わないのは俺もわかってるが、いくらでもするって言ってたし?まあいいんじゃね?ということだ。


経験値を分けてもらいたい、というのはこの前見たヘルプの内容に関係することだ。

ヘルプの内容は簡潔に言えば竜母の所属するチームの経験値は教育を発動しているドラゴンに100%流れていくということだ。

全くもって意味がわからない。

これにより、俺はパーティも組めなくなっていた。

竜母は運営のおふざけで、ゲーム的には完璧な地雷というのが分かる。

まあもちろん、タダでとは言わない。

いくら攻撃されたとはいえ俺もそこまで外道では無いのだ。


「もちろん報酬はありまs「わかった」

「「えっ?」」

「報酬があるのか、ただの償いなのに…?」

「あ、ありますよ。だってたった1発の弾丸ですよ?それに損害は壊れた短剣1本って言ったじゃないですか」

「たった1発の弾丸でも、君のリアルラックで手に入れたそのドラゴンの子供を殺したかもしれないんだぞ?価値をわかっていないのか?」

「で、でも」

「…報酬はなにを検討しているんだ?」

「わたしの職業に関する情報とこの子、ウロが生まれた際の副産物のアイテムの譲渡、こちらは推測の域を出ないため不安定なものですが、わたしと巣立ちした成竜になるであろうウロの恒久的な、例外はありますが協力関係をいっ!!」

「なにいってるんだ!」


チョップされた。

解せぬ。


「…経験値を特別に見すぎだ。俺は使っている武器種が武器種なだけにほかの上位陣よりレベルは有り余っている。そこは気にしなくていい」

「…い、いいんですか?経験値ですよ?ほかの方々に置いていかれてしまうのでは…?」

「別にいいよ。それに、俺がめざしているのは功績によるユニーク職業への進化だからね」

「ユニーク職業…?」

「運営のAIが戦績やらなんやらに応じた職業をくれるんだよ」

「そ、そうなんですか」

「そういうわけで、報酬はいらないよ。それにウロちゃんが生まれた時に手に入ったアイテムなんて、一生の思い出じゃないか。大事にしなよ」

「ありがとうございます…」


どうやらこの人は途方もなく優しい人らしい。

何がこの人をそこまで動かすのだろうか。

ユニーク職業というのも気になる。

ヘルプをすべて見た訳でもないから職業のレアリティの序列なんて分からないし。


「…まあ気になることもあるが、経験値がウロちゃんのものになるのか?」

「はい。わたしの経験値もちゃんと全部持っていかれてます」

「え、じゃあ…」

「私のレベルは1です」

「oh......」

「だから私自身の強化の為にも早くウロを巣立ちさせたいんです…巣立ちの後までは想像できません。この子かドラゴン社会に戻っていくのか、はたまた私の元に残り力になってくれるのか…」

「実践するしかないのか」

「…ええ」

「まあ、好感度が高ければ高いほど、残ってくれる確率は高くなるんじゃないか?」

「はい」



◇◇◇









「よし、戦闘スタイルは確認できた」

「ありがとうございました」

「連携の確認は明日かな」

「わかりました」

「こんな約束したんだから基本はパーティ行動だが、日程的には大丈夫か?」

「いつでも…」

「そうか」


これはワケありだな。

この少女、イシュタルは俺が誤射してしまった人物だ。

まあその弾丸は初期装備の短剣に弾かれた訳だが。

メスガキチックな見た目とは裏腹に礼儀正しい姿には少しときめいてしまったが、どうにもこの子自体が歪な進化の仕方をしてしまっているようだ。

突然降って沸いたドラゴンの子供のためにゲームの主旨でもあるレベル上げを捨てるなど正気の沙汰ではない、とその時は思ったが…


コロコロ…

「ぴうっぴゃうっ!」


どこから拾ってきたのか石をおぼつかない手足で転がし続けるドラゴンの子供、ウロを見て俺はこう思った。

(かわいすぎるだろおおおおお)

子猫のような可愛さがそこにころがっていたのである。


ここでイシュタルの愚行を理解したのだが、約束通りの常にパーティ行動というのは厳しいように思える。

誰にだってリアルがあるわけだし、と思ったのだが…

イシュタルはいつでも大丈夫らしい。

普通はいつでも大丈夫なんてやつはいないのだが…ちなみに俺はかなりの不労所得があるため今の生活を続けてれば一生遊んでいられるのだが…まあこの話はいいだろう。


「俺も働かずに生きていけるだけの金はあるからな…じゃあ常にパーティ行動できるな」

「それはよかった」

「んーっと、じゃあ今日は終わりでいいか?」

「はい。お疲れ様でした」

「じゃあ、また明日。ちゃんと寝ろよ。おやすみー」

「おやすみなさい」








◇◇◇





コンタクトを外して顔を洗う。

ウロのことを考えると顔が緩むが、竜母のことを考えると不可解な点が多い。

ドラゴンの子供の可愛さだけがメリットならゲームを放り投げるところだが、そんなはずはないだろう。

きっと、育てたメリットとして大人になったウロは頑張ってくれるはず…きっと…おそらく…

窓を開ければ田舎なために光は極端に少なく、一番近くにある街灯のみが明るく光る。

その上を見れば光が少ないために見れる満天の星空があった。


「星海…か」


あの中に禁書庫があるのだろうか…

いやいや、図書館がそんなところにある訳、ゲーム内探せばきっとあるだろう。

というかゲーム始めた瞬間の落とし穴もあいつが仕込んだのか?

見てるって言ってたし…

あの野郎…!



◇◇◇


「…ログイン」

「ぴっ」


宿屋のベッドの上で目覚める。

まず目に入ったのはウロのお腹だった。

どうやら顔の上にウロがスポーンしたようだ。


「ウロー?」

「ぴっ」


擽ったいのか身をよじらせるが…

寝てるのかこの子は…


「どかして…っと」


ウロが起きる前に諸々の作業を済ませる。

まずシェリフに集合のフレンドメールを送ったあと、インベントリの中の買っておいたポーション群を確認していく。


《低級ライフポーション》×10

ライフポイントを少量回復するポーション

50ポイント回復


《低級マジックポーション》×10

マジックポイントを回復するポーション

50ポイント回復


《粗悪品リザレクトポーション》×1

極低確率で死んだ仲間を蘇生させるポーション

蘇生確率1%


《低級アジリティポーション》×5

移動速度を上昇させる。

持続時間60秒


粗悪品リザレクトポーションに関してはなんで買ったのか分からない。

ただめちゃくちゃ高かったと思う。

操作ミスで買ってしまった。

金は現時点ではあんまりない。

まあシェリフが居るんだ。きっとガッポガッポだ。

そもそも、この効果がいいのか悪いのか分からない。

鑑定がないから自分の詳細さえもわからないからだ。

もうなんか。鑑定って大事なんだなぁ…

ここでシェリフから返信が届く。


中央広場にて待つ

Byシェリフ


決闘かよ。



◇◇◇

中央広場


「おっイシュタル!こっちだ!」

「おはようございます」


広場の中央。

石像の下にあるベンチでシェリフは座っていた。

格好は当然だが全く変わっていない。


「おお、そうだ」

「なんですか?」


そう言って彼が取りだしたのは抱っこ紐だった。


「これは?」

「抱っこ紐だよ」

「いえそうではなく」

「ああ、プレイヤーメイドだ」


プレイヤーメイドとは、生産系の職業につき生産スキルを駆使して、このゲームにはない物を作った場合のみに与えられるレアリティだ。

詰まるところ、この抱っこ紐はかなりお高い道具だ。もちろん金額的な意味で。


「い、いいんですか?」

「ああ、さすがに今から連れていくところに両手をふさいだまま行ってもらいたくないんだ。俺の金から出したし、受け取ってくれ」

「は、はあ…」


受け取ると分かるのはしっかりとしていること。

しかもかなりの装甲だ。

これなら攻撃が当たってもある程度防いでくれるだろう。

職人の技が光る抱っこ紐だった。


「ああ、あとこれ」


その言葉を皮切りに、シェリフのインベントリからアイテムが山のように出てくる出てくる。

どれも前線級の代物だというのがネット知識からわかる。


「あー…イシュタルはウロに直接…その、飲ませてるだろ?」

「え?よくわかりましたね」

「有名だからな…まあそんなことはどうでもいいんだ。直接だからこそのこの装備だよイシュタル」


長めのワンピースで軽鎧が縫い付けられている。

マタニティワンピースと言うやつだろうか。

ゆったりしていて楽そうだ。


「脇腹辺りに穴があるんだがそこからウロを入れて安定させれば楽って寸法よ」

「へえ…」


防御力も高そうだ。

なんの素材を使っているかは怖くて聞けない。


「でもわたし近距離戦闘型なんですけど…」

「そこは気にしなくていい。足の邪魔をしないように設計されてるらしいからな」


アーマーマタニティワンピースと言うらしい。ながっ。


「で、次に…」

「えーっともしかしてこのアイテム達は全部私のものなんです?」

「?そうだけど?」

「こんなにいただけませんよ!」

「いや、これぐらい準備しても危ない場所なんだよ、今から行く場所は。だから受け取ってもらわないとこっちが困る」

「ぐっ…そ、そういうことなら…」


どんどん借りが増えてくう…


「これは君の戦闘スタイルに合わせてもらった2本の短剣だ。グリップは握りやすく、刃は両刃で振る速さの底上げのために薄くしてある。耐久力との両立が難しかったとのコメントをいただいています」

「…その人すごいですね?」

「最先端を行く職人集団だからな」

「は、はあ」


あとは上級と名前に着いたポーション群…

金を無駄にしたということか…俺は…


「というかこれほどのアイテムを一日で…?」

「集団って言ったろ?」

「この攻略にどんだけ金かけてるんですか!」

「え?《ピーッ》万ゴールドだけど」

「ひぇっ…」

「まあ、その金額にあった活躍を期待してるよイシュタル」

「ふ、ふぁい…」


ど、どうしてこんなことに…




◇◇◇

時は昨晩に戻る





【マッマ…マッマ…】ドラゴンかーちゃんについて語るスレ【ママァァァァァァウゥウゥウウウウウ】


1 : ここはドラゴンかーちゃん幼女について語るスレです。本人に迷惑のかかる言動行動その他全て言語道断なのでやめましょう。

本人未公認のため削除される場合があります。ご了承ください。

次スレは>2950立ててもろて


………


…………


………………


250 : 名無しの銃聖

ドラゴンかーちゃん(プレイヤー名イシュタル)とレベリングすることになった。


251 : 名無しのモブ顔

は?(憤怒)


252 : 名無しの弓使い

なんで?(憤怒)


253 : 名無しの銃聖

>252そりゃお前謝りに行ったら許す代わりにレベリング手伝えって言われたからだよ。ちなみに報酬は辞退した。


254 : 名無しの盾使い

したたかだなぁ…って報酬用意しようとしたの?償いなのに?


255 : 名無しの獣王

優しい


256 : 名無しの蟲皇

優しい


257 : 名無しの銃聖

それで、俺がレベリングの場所選びをすることになったんだが……【賢人の都】にすることにした。


258 : 名無しのモブ顔

…あれ?ママってニュービーだよね?


259 : 名無しの弓使い

一陣でも行けてない人の方が多いエリアを選ぶのか(困惑)


260 : 名無しの盾使い

でも、レベル差は?ダメージ通りづらくなるよね?


261 : 名無しの銃聖

そこで相談なんだが…お前らが買った、作った武器防具アイテムがイシュタルに使われるのは嫌か?


262 : 名無しの鍛冶師

('ω')ガタッ


263 : 名無しの裁縫師

作ります!


264 : 名無しの薬師

あげます!


265 : 名無しの魔具師

貢ぎます!


266 : 名無しの獣王

場所教えてくれるなら素材をいくらでも届けよう


267 : 名無しの宝石細工師

いくらでも作りましょう!





この後、途方もないほどの立候補が続いたため割愛

読んでいただきありがとうございます!

評価とか感想とかいっぱいありがとうございます!

ありがとうございます!(3回目)

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[気になる点] シェリフのインベントリがアイテムが となっていますがシェリフのインベントリからアイテムが だと思いますー!
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