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5.子供が必ずしも親の背中を見てるとは限らない

思った以上に筆が進んだので本日二話目です。




アンガナスの正門から出て少しのところにある森。


「あれが…ゴブリンか…」


俺の視線の先、10メートル程先に緑色の肌をした耳長の頭でっかちなぽってりした腹をもつ妖魔…いや魔物のゴブリンが4匹ほどで群れをなしていた。


「ぴぅ」

「よく見てな…お母さんの初陣を」


5000クレジットしかない初期資金の中から2000クレジットを捻り出し買った短剣をマテリアライズさせ、両手に持つ。

二刀流のように持ち、駆け出す。

ゴブリンの索敵範囲に入るスレスレで叫ぶ。


「こっちを見ろ!」


群れの中で一番近いゴブリンがこちらに顔を向ける。

というか全員こちらを向いたが問題ない。


ーー有名なVRゲームの大会。

ーーそこでチャンプが使った“技術”

ーー見様見真似だけど……


「ぜぁ!!」


“縮地”を用いて、急接近。

ゴブリンの虚を突き両方の短剣で目を抉った。


weakattack!!


ゴブリンのHPは一瞬で底をつき体を霧散させる。

ほかのゴブリンが騒ぎ、槍や剣、棍棒を振り下ろしてくるがこちらはコマのように回り回避し、2匹目の脇に移動し右手の短剣を逆手に持ち鎖骨のくぼみを突刺す。


weakattack!!


臓器の判定はちゃんとあるようだ。

2匹目は心臓を破壊されわけもわからず死ぬ。


その間にもほかのゴブリンは動き俺をリンチしようと凶器で俺を傷つけようとするが…


「無駄だ!」


短剣を両方逆手に持ち、その尽くをパリィする。

両脇の2匹の目を浅くきりつけ盲目にしたあと中央の1匹に突貫する。


weakattack!!


1本の槍と化した俺に突っ込まれ3匹目のゴブリンは眉間に刺傷を残し霧散した。

そのあとの2匹は回転斬りで一気に首を切り裂き絶命させる。


「はっ…はっ…よし」


短剣をクルクル回し鞘に収める。

かっこいい…


「ウロ!見てた?!」


遠くにいるウロに振り返り叫ぶ。

ウロの「かっこよかった!」な、ニュアンスの「ぴゃう!」が聞きたかったからである。

だが現実は非情であった。


「ね…てる…?!」


寝ていたのであるッッ!

様々な行程を経てはいるがこの戦闘は1分未満のものだ。

にもかかわらずうちの子は特技である秒速入眠を用いて「君は将来私みたいなスピードアタッカーになるんだよ?」的な私のメッセージを無視したのであるッッ!

だが、こんな怒りも寝顔の前では無力…!


「…経験値もちゃんとウロに入ってるみたいだね」


ログを見ると

『レベルアップ!個体名ウロのレベルが1→3になりました』


「これが本当の睡眠学習か」


やかましいわ



◇◇◇



ゴブリンを駆逐し、ウロを抱き上げ森を進む。

薬草の見た目は既にわかっている。

ただ、森の入口にはなかったから少し奥を進んでいる。


「ない…どこだよ…」

「ぴぅぅ…」

「どうした?腹減ったか?」

「ぴぅ」


服の下にウロをぶち込みベルトを締めて探索を続行する。

薬草の見本を視界の隅に出しつつ探索するがいくら探しても見つからない。

ただ、こんなアイテムが見つかっている。


『薬草の食い残し』


なにかがこいつを食い荒らしてるみたいだ。

薬草食う害獣とか聞いたことがない。


インベントリで薬草の食い残しを見る

やはりというか鑑定がないため詳細が分からない。

事前情報では鑑定は必須スキルと言われるぐらいのスキルだと再認識した。


「こりゃ鑑定ゲーだわ」


▽▽▽▽▽▽▽


『薬草の食い残し』

何者かが薬草を食い荒らし、それに伴ってのこった食べかす。



詳しいことが全くわからん。

まあ食い残しは食い残しでしかないからこんなもので鑑定スキルの重要性を見出すのは変な話だが。


すこし森を進んでいると、適正レベルに達していないとアラートが鳴り響いた。

こちらとしても赤ん坊を抱えて冒険はしたくない。

ということで踵を返す。

ウロはまだレベル3だし、今母乳を吸っているところを見ると戦えるとは思えない。

何レベから戦えるようになるんだ…ドラゴンって…


人間みたいに破綻した成長の仕方をするとも思えないからそのうち戦えるようになるのはわかるが…


「はやく戦えるようになってくれよ〜…」


それまでは守ってやりたい。


◇◇◇



「薬草が…そうですか。わかりました」

「…反応が薄いんだけど…何が原因か知ってるの?おしえ」

「そりゃ、ヒーリングスライムの大量発生。スタンピードってところだろ」

「ん?」


職員に森で起きていた異常事態を報告すると思ったよりも薄い反応を返された。

それはつまり原因を知っているということ。

問いただそうとすれば横からプレイヤーが割り込んで原因を教えてくれた。

見た目は帽子を目深に被り、布で口元を隠しているために表情は判然としない。

焦げ茶色のコートを羽織っており、男の琴線に触れる格好をしている…が

俺の目線はそいつの背中に行っていた。

ライフル銃が背負われていたのだ。


「あんた…」


このゲーム、事前情報ではライフルは普及していないらしい。

あるなら、プレイヤーメイドの品ぐらいだ。

手を短剣にかける。

街中のPvPは正規の手続きをしなければ出来ないが…威嚇には十分だろ。


「ま、まってくれ…君がそれほど威嚇する理由についても話がしたいんだ」

「ほう…」

「…ほら、そこの席にでも座って話しないか」

「…わかった」


ギルドは酒場も兼ねているため、机や椅子には事欠かない。

先導する男を見ながら丸椅子に座る。机の上にウロを置いて話を聞く姿勢の出来上がりだ。


「…あの時撃ってきたのあなたですよね」

「…あ、あぁ…すまない」

「なんで撃ったんですか」


そこから銃持ちはまるで告白のようにぽつりぽつりとあの時の状況を話し始めた。

銃持ち曰く、ドラゴン狩りをしていたとのこと。

仕留めたと思ったら穴(俺の初期スポーン位置)に落ちてしまい、這い上がってこないかとまったこと。

この時点で四徹目だったこと。

眠気と戦いながらスコープを覗いていると何故か初心者装備の俺が出てきて動転し撃ってしまったとのこと。


「ふむ…」

「本当にすまなかった」


意味がわからない。

俺が落ちているのと同時にドラゴンが落ちていたってことか?

確かに切り揉みしながら落ちていて周囲に気を配る余裕なんてなかった…が。

ドラゴンほど大きな生き物と一緒に落ちて気付かないはずが…


「お、おい大丈夫か?」


目の前の男を見る。

帽子を目深に被っていてわからないが申し訳なさそう。というのが雰囲気を通して伝わってくる。

四徹もして仕留めたドラゴンが行方不明な上に報酬はゼロ。

同情するレベルで不幸だ。

見れば悪い人では無さそうだし、許すのもやぶさかではない。

…あっそうだ


「お名前を聞きたいのですが」

「あっあー、シェリフだ」

「よろしくお願いします。私はイシュタル」

「…許してくれるのか」

「結果的には短剣1本の出費しかこちらに損害はないですからね。あ〜…でも、手伝ってもらいたいことがあるのですが…」

「いくらでもっ…手伝うよ」

「ありがとうございます」


俺の経験則からして、兄と極端に似ているこの人物とは友達になっておいた方が得だ。

詰まるところ、苦労人を仲間に入れておけばこの先の苦労はその人が背負ってくれる、ということだ。

こうして、俺はシェリフという強力な仲間(奴隷?)を手に入れた。








「そういえば、スタンピードは大丈夫なんですか?」

「ん?ああ、それは第二陣では少し荷が勝つから一陣の中堅が中心で進めるはずだ」

「あっそうなんですね…」

誤字脱字ゲームバランスおふざけなどなど足りないものございましたら指摘していただければ幸いです。

まああんまり厳しくされると心折れるんですけどね☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] もしかして拒否できなかったのか教育 すごい縛りプレイだ
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