4.ぼっちなんだから絡まれるわけないだろ
おはようございます。
起きたので投稿です。
「ログインっと」
「ぴゃ」
宿のベッドの上で目を覚ます。
窓の外を見れば朝の光が部屋を照らしていた。
「リアル一日でこっち三日ね」
このゲームはリアルで一日進むと三日進むような感じで時間が加速している。
なのでかなり多くの時間を遊べるのも人気の理由だったりする。
「ぴゃうぴゃう」
「どうしたウロ…あ、ご飯か」
服の下にウロを入れて勝手に吸ってもらう。
そこで思ったのが
「これって…今も【授乳】スキル使ってることになんのかな…」
今まで直接吸わせてたけど、【授乳】スキルを使った感覚が全くなかった。
【授乳】スキルを使ってみる。
すると
「おい…」
なんと哺乳瓶がその場に出現したでは無いか。
ステータスを見てみればそれ相応の満腹度が減っていることが分かる。
「うーん…」
【授乳】スキルをもう1回使ってみるがクールタイムの関係で呼び出せなかった。
24時間て…1日1回しか出せないやん…
「ウロ」
ウロを引き剥がして哺乳瓶を口の前に持って行ってやると…
「ぴぅ!」
顔を逸らして嫌がった。
「胸で吸うのに慣れてそれ以外受け付けなくなったのか…2回と少ししか吸ってねえのに…」
しょうがないので【授乳】スキルは封印…って
「使わないスキルにひと枠潰されてるのか」
このゲームは基本5つしかスキルスロットにスキルを入れられない。
それは基本知識なためチュートリアルをやっていない俺でもわかる。
再び自分で母乳を吸い出すウロを視界に収めつつ、ステータス欄を眺める。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽
名称: イシュタル
種族:未人
Lv.1
職業:竜母
技能:【授乳】【教育】【叱責】【称賛】【児戯】
技能控え:なし
称号:[竜の母となりし未人]
所持キーアイテム:《星往く竜の卵殻》《星往く竜との絆》
リアルで少し調べたが竜母なんて職業、存在しなかったしそもそもドラゴンの幼体なんて確認すらされていなかった。
掲示板では俺の事を見た人が少し騒いでいるようだ。
まだ俺のことを完全に認知している人は少ないがそれも時間の問題だ。
そこで問題なのが俺の職業について無理やり聞き出そうとしてくる輩の対処だ。
新職業はそれなりの頻度で見つかるが目新しいものに目がないのも人の性だ。
「レベルは飾りだからいくらかごまかせそうだけども…」
まだであってリアル1日経ってなくても。
この小さなトカゲは俺の被保護者だ。
「…」
付き合う人間も選ばなければならない。
あぁー…もう面倒くさい…でもこれも楽しみに変えてやる。
ウロのせいだと絶対に思わないように。
「けぷ」
「もうお腹いっぱい?」
「ぴぅ!」
ウロを戦わせるわけにはいかないけど、きっとウロ自身が戦う時が来る。
そう思って目に付いたスキルは【教育】
ネットに情報がないのなら自分で開拓しなければならない。
ゲームをする上で全く感じたことの無いフロンティアスピッツに心躍らせながら【教育】を発動させる。
『本当によろしいですか?』
「ん?別にいいよ」
『【教育】を発動します。これより、プレイヤー名イシュタルの経験値は全て個体名ウロに入ります。発動は破棄されません。【教育】の効果は巣立ちまで続きます。ご承知おきくださいませ』
「ご承知できません!!!(小声)」
母乳を吸い終わり秒速で眠りについたウロを気遣い小声で抗議の声を上げるがシステムの返事が届くことはなく後に残ったのは途方もない虚無だった。
「巣立ちっていつだああああ…(小声)」
いつか分からない巣立ちの日まで俺に経験値が入らないつまり、それまでレベル1だということだ。
先程レベルは飾りと言ったが限度がある。
先行きが不安になったところでチュートリアルのことを思い出す。
「はあ…ほかのスキルは置いとこう…ちょっと怖いし」
「ぴぅ…?」
「起きた?外いくよー」
寝ぼけ眼のウロを抱き上げ宿を出た。
◇◇◇
マップを頼りに街を歩く。
この街【始まりの大都アンガナス】は中心に冒険者ギルドを据えた冒険者の都だ。
冒険者の都と言われるぐらいだから冒険者に対する支援は手厚く、最高ランクの冒険者になると無償の支援が受けられるらしい。
しかし俺はまだニュービー。
登録はまだしていない。
少し歩けばそこはもう冒険者ギルドだ。
扉を開け中に入ると、少しだけ視線がこちらに寄るがすぐに霧散した。
ただ、ドラゴンの赤ん坊を抱えているだけにその重要性に気づいたプレイヤーは視線を釘付けされているがまあ些細なことだ。
受付に話かける。
「すみません」
「はぁい…ってドラゴン?!」
「おい少し黙れ」
叫び始めた受付嬢の口をカウンターに乗り上がり塞ぐ。
「こいつのことは気にするな。ほら、こんなに可愛いだろ?こんなかわいいドラゴンがここにいるヤツらを殺し回ると思うか?思わないよな?」
「(コクコク)」
カウンターから降り、ウロをカウンターに置きながら話を進める。
「冒険者登録がしたい」
「ぴぅ」
「わ、わかりました…この書類にサインを…」
「ぴぅ」
「……書いたぞ。あとは?」
「ぴぅ」
「この冒険者証明タグにステータスを込めてください」
「ぴぅ」
「どうやるんだ?」
「ぴぅ」
「……タグを握りながらステータスと唱えればそれで大丈夫です」
「ぴぅ」
「ステータス…これでいいか?」
「ぴぅ」
「はい。これで冒険者登録は完了です。とりあえずチュートリアルとしてこのクエストとこのクエストを2つのクエストを受けていただきます」
受付嬢は紙に書かれたクエストを2枚差し出してきた。
『薬草の納品』
『ゴブリンの討伐』
「こちらを受けていただければチュートリアルは完了です」
「感謝する」
「…職業に関するヘルプはその職業にあった地元民がいるはずですのでその方に師事を仰いでください」
「…たすかった」
そんな地元民いる気がしないが意識の隅に置いておこう。
反応されなくて不貞腐れてうずくまっているウロを抱きかかえて俺は冒険者ギルドを出た。
感想や評価を沢山頂いて嬉しすぎて震え止まりません。
これからも読んでいただければ幸いです!