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12.意図せず最強の道を辿るとか無理じゃないの?

書きだめが尽きたことで放心してました。朝にあげられなかったのはそのためです。書きだめがあったから安心して書いてなかった説もありますが…いや、頑張ります。

12


受動技能(パッシブスキル)というものがある。

一般に、常に発動しプレイヤーに影響を及ぼすスキルといわれるものだ。

例えば筋力強化や魔力増強などなど様々パッシブスキルがこの世界に存在している。

【図書館】もそのひとつ。

あるだけで本が読めるようになる。

【図書館】がなければ本を読もうとしてもシステムに阻害され読めないという仕組みだ。


「ここまではわかった〜?」

「わかりましたけど…5つのスキル枠にパッシブスキルを入れておくのはかなり邪魔になるんじゃ?」

「確かに5つしかスキルを行使できない君たちにとっては致命的とも言えるかもしれないね〜。まあ、その懸念はパッシブスキルが枠に入らないと発動しない、という前提の元にあるものだけど」

「と、いうことは」

「そう!パッシブスキルは枠に入れなくても発動するので〜す!」

「めちゃくちゃ強いじゃないですか!」

「でもパッシブスキルの発動数には制限があるの〜」

「そ、それもそうか」

「こちらもスキル枠と同じ、5つまでだよ〜」


パッシブスキルはスキル枠にセットせずとも発動し、発動制限は5つまでと…


「めっっちゃ助かりました」

「別にいいよ〜。最近は暇してたしね〜」

「御手数ですが【図書館】の取り方を教えて貰ってもよろしいでしょうか…?」

「あ、忘れてた忘れてた。これ使って〜」


そう言ってニャル様は触手を奥へやりゴソゴソ探ったあと、そこから取り出したであろう巻物を俺に渡してきた。


「なんです?これ」

「それはね〜【図書館】スキルが詰まってる《スキルスクロール》だよ〜」

「えっいいんですか?」

「いいよ〜。少し強引に入館してもらっちゃったしね〜。今回は特別に無料だよ〜」


棚からぼたもちじゃないけど得した気分だ。

自分で習得する気満々だったから助かる。

早速巻きついてる紐を取ってひろげる。


「あっそれは!」


ニャル様の焦ったような声を尻目にスキルの習得を開始する。

止めようとも思ったが、何故か止められなかった。




そこで俺の意識はプツンと暗闇に沈んでいった。






◇◇◇




『幕は斬り落とされた』





『目覚めの時だ』








『ちがう!私はそんなつもりじゃ!』



『なんなのよ!もう喋らないでよ!!』



『血が止まらない!止まらないんだよ!』



『なんでここにいるのよ!』



『なんでお前は壊すことしか出来ないんだ!』



『お前が醜くないなんて…なんであの時の俺は言ったんだろうな』



『復讐のつもりか?ならご愁傷さまとしか言えねえな!』



『悪魔の化身め!滅殺してくれる!』



『いや!いやあああああああ!!!』



『お前が…こんなことを…?』




『私は悪くない!』






『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』『お前が』






『死ねばよかったのに』





『……神、イシュタルよ。貴様が死に魂砕けようとも輪廻に逃げおおせることは許さぬ。永遠の責め苦に晒されるがいい』






◇◇◇





「…ぐっ……ん?」

「ああああああ…どうしよどうしよー!…『やばいやばい』『ぬうううう』んああああもおおおお」


一瞬ブラックアウトしたかと思えば俺は地面に倒れ伏していた。

傍らでは形が保てていないニャル様が呻いていた。


「…あの…スキルスクロール使うといつもこんなふうになるんですか?」

「ええ?!起きたの?!…えーっと…ごめんなさい!間違えて違うスキルスクロール渡しちゃった…!」

「え?…ちなみにどんなスキルなんですか?」

「あー…それがね、ちょぉっと複雑なスキルでねぇ…」




ニャル様は話してくれた。

このスキルに関する背景と、その恐ろしさを。






◇◇◇





其れは神々の時代、顕現創成時代に発生した。


いや、その時代よりも前からあったのかもしれない。




其れはナニカの希望で絶望で羨望で怨望で渇望で願望で宿望で、だが生きとし生けるものにとっては望まれないものだった。


其れは存在を気づかれぬまま風化していく。


そうだと思われたが、ある時、下級の神が其れを偶然発見してしまう。


瞬く間に其れの認識は神の間で広まり、それを知ったものの体は砕け、溶け、塵と化した。


認識してはいけないものだったのだ。


不幸中の幸いかこの風化は神以外には効果がないように見えた。


神々が作った生物達が風化しないところを見てもそれは明確だ。


だが神々が風化し、消え去ることは世界の終わりと同義なのだ。


これを重く見た当時の最高神は、自らの体が朽ちゆく中、神々の希望をたった一人の女に任せた。


その女は神と「神の失敗作」の子供だった。


半神(デミゴッド)であった彼女は存在が曖昧であるがためか、体の風化が遅かった。

だがそれも長くは持たない。


そこで彼女は神と同等の力をもち、風化の力をもつ「ソレ」に損壊を与えることの出来る種族を生み出した。


その種族が産み落とされた時、彼女はその反動で体はすぐさま朽ち果て、魂までもが砕けてしまった。


その種族の名は、竜。


朽ち果てた彼女、「竜母」の宿願のために竜達は死力を尽くし、完全破壊とまでは言わないまでも「ソレ」の無力化に成功し、神々に安寧が訪れたという。




「ソレ」は、今も少しずつ修復していっている。

神々は「ソレ」を恨みと恐怖を込めこう呼んだ。




犠杯…と。


◇◇◇


「そんな恐ろしいもんを俺の中にぶち込んだんかおみゃあはァ!えぇ?!?!」

「ごめんなさいごめんなさい!」


ステータスを見ればちゃんと控えの中に禍々しく居座っている。


ただ気になるのが犠杯のスキル名の横で光る『半壊』の文字。

半壊まで直ってる…!!


「どうすんの!どうすんの!これぇ!」

「どうしようもです!どうしようもないです!」

「ああああああああああ!」

「い、いやでも、管理の者たちが来たらなんとなる?かもー?」

「管理のもの?」

「竜の里の者たちです〜」

「ありがとう!このスキルをくれて!感謝してる!」

「ええええ?!」


まさかこんなところで竜族とのコネクションが手に入るとは思わなかった。

ただ、この犠杯をどげんかしないと世界が滅ぶ可能性が出てくる。

未人は神の子とかいうフレーバーテキストがあるのを見るとプレイヤーに無害とも思えない。

速急にどうにかしないと。

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