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その16 今回のナスとメロン

『俺は、お前のことを理解できていないんだ。』

ナスがメロンにそう答えている。

そのセリフとは異なって、表情はとても優しく見える。


『俺から見たお前は、何も考えていないようで、楽しそうで、無邪気に思える。』

ナスは少し考えて、ことばを続けていた。

『俺たちが付き合ったとしても、俺はお前が理解できるとは思えないんだ。』


メロンはナスのことばを聞いて、とてもうれしそうに笑っていた。


河川敷の土手の斜面に川の方を向いて並んで座っている二人を、少し遠くの上方向から見下ろす形で画面が映し出されていた。

画面越しに話すナスとメロン、二人のやりとりを博士は、相変わらずの無表情でぼんやりと見ていた。

画面の中の世界の風が、二人の足元の草を撫でて通り過ぎる。


『この世界で、俺たちに与えられる情報は、もう、何もない。』

ナスが少し上を向いて話している。

まるで、画面の中から、画面の外の博士に視線を向けているようだった。


そんなナスの横顔を見ながら、メロンはやはり嬉しそうにナスに話しかけている。

『うん。でも、わたしはこの世界のナスのことしか知らないから、この世界のナスが好きだから、私はこの世界でナスと一緒にいたいよ。』

メロンは左手をナスの右腕に絡ませて、その腕に頬をよせそっとつぶやいた。

『だって、私たち、きっともともとは1つだったと思うから。』


ナスの腕に頬を寄せたまま、メロンも顔だけ上に向けて、まるで『そうでしょ?』とでも言いたげな表情をした。

ぼんやりと画面を見ていた博士だったが、その表情にはっとして、このプログラムを作成し起動した初期の頃のことを思い出した。


確かにメロンは何故だと聞いていた。

(博士。なぜ私とナスを分けて作ったんですかぁ?)

博士はメロンに(何故だと思う?メロン)と、逆に問いかけたが、答えは(判んなーい)だったはずで、答えを与えてもいない。

だから、選択肢が無ければ思考を止めて、答えの分かる「既定値」を持つ考えに戻るように、それを繰り返すように作ったはずだった。


何故、ナスとメロンを分けて作ったのか、普通に考えればそんな疑問は出てこない。

出てくるとすれば、それは、その前には1つのものだった事実があることを認識しているからだ。


「はっ、ははっ。」

博士の口から、力の無い笑い声が漏れた。


画面の中のメロンとナスは、さらに会話を続けている。

しかしやはりナスは博士を見ながら話しているようだ。

『俺は俺のことしかわからない、と、思っていた。

だけどそうじゃなかったみたいだ。』


客観的にみれば、画面の登場人物が空を見上げて、喋っている、そんなシーンだ。

『俺は、言われたことをやっていただけで、次の行動を考えていただけで。

俺は俺のこと、分かった気になっていただけで。

そして、メロンのことを考えていただけで。』

その台詞を聞いたメロンは、空を見ていた視線をナスの横顔に移した。


ナスは自分の腕に頬をつけているメロンを見ると、小さく息を吐いた。

それから落ち着いた声で伝えた。

『俺は、お前を理解することはできないけど、お前と一緒にいられたらいいと思う』

メロンが小さく頷いていた。


博士は画面に映るナスに向かって言葉をかけた。

「そうか、それがお前の解か。」


画面の中の二人は、もう、博士の方を見なかった。


メロンはいつもの調子でナスに答えている。

『大丈夫。ダイジョーブなの。

私も、ナスも、自分の中の誰かを見ているって知ってるから、一緒にいられるよ。』

ナスはあきれたように答えている。

『やっぱり、能天気にしか感じられない。

けど、もう、そのままでいいかと思えるから、まぁ、それでいいんだよな。

何のためかなんて、わかりきったことだった。』


博士は、プログラムの中でナスとたくさんの会話をしていた。

その会話の中で(何のために作られたのか)ナスは何度もそう言っていた。

博士はそれをはぐらかすだけで、答えをナスに与えられなかった。

それこそ、博士がナスに求めていた解だったからだ。

これは、メロンの世界を作るために始めたことで、そこには、メロンしかいなかった。

世界が進むにつれて緑の望むメロンを完成させるためには、メロンの理想とするナスが必要になってきた。

だけど、博士にはナスに好意を寄せるメロンと、好意を寄せられたナスのどちらも理解ができなかった。


理解できないものは作れない、そして博士はメロンの好きなナスをメロンから分離させた。


「白衣の似合う、ナスが好き。」

「難しいこと言う、ナスが好き。」

「すぐに表情に出る、ナスが好き。」

「嘘をつかない、ナスが好き。」

「すぐに落ち込む、ナスが好き。」


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