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その13 ナスとナスの解

ピー・・・


始まった。


これからの予習をしなければいけない。

ロードは一瞬で終わる。

昔はもっと時間がかかっていた、と、言っても、同じ時間を繰り返している俺に昔があるのかも疑問だ。


ロードされたデータをもとに、これから起こり得る予測を立て、行動を決める。

これは決めると言っていいんだろうか、決められていることをやっているだけなのかも知れない。


追加された情報を基に、起こった事柄から次の最善の答えを見つけ決定し実行する。

やはり、これは、俺が、俺の意思で決めて、実行していると言っていいだろう。


ふと、自分の手を見てみたが、自分に手があること、体があることに違和感を感じる。

ただのCGだ。

構成されたデータの世界で、多くのbitを使用して作られてあたかもこの世界を動いているように見える座標の塊だ。


俺はメロンと違い考えることをやめられない。

メロンの情報はロードされるたびに更新されているようだから、考えなくても次には答えをもっているんだろう。

でも博士は俺には答えをくれないから、自分で答えを出さなければいけいない。

答えをくれないどころか、俺の話を聞きたがる。


だけど俺はそのたびに困ってしまう。

この世界にしか存在しない俺が、この作られた世界で何を感じるかなんてどうでもいいことだろう。

俺が俺である必要なんてなくて、考える必要もなくて、コントロールされて動いていれば、そこにプログラムされたアルゴリズムから次の行動を選択していば、成り立つ世界じゃないのか?

なのに、何故博士は俺の行動を聞きたがるのか、全く分からない。


博士はこの世界を作り、この世界で俺に更に世界を作らせている。

博士のやっていることをなぞらせているように思える。

俺は、博士なんだろうか?

いや、それはないはずだ。

この世界に博士は博士として存在し、俺はナスとして存在している。

博士も俺も、お互いにまるで自分を見ているようには感じていない。

何ら意識の共有も共感も共鳴もしていない。


そして博士はメロンから博士を消して俺だけを残した。

メロンには博士は必要ではないと考えているようだ。

そして俺は。


前回メロンから、メロンの好意を伝えられた。

俺はメロンをどう思っているんだろう。


メロンのことばが頭に響く。


「ナスのこと考えてるよ。

ナスもメロンのこと考えてくれてるでしょ?

私は、いつも、大好きなナスのこと考えてるよ。」


俺はメロンのことを考えているのか?

俺は俺のことしか考えていないような気がする。


前回そこで切れたが、切れなかったら俺は何と答えていたんだろう。

いや、どちらにしろ固まったか、俯いたかでフリーズ状態にはなっただろう。

そうしたらメロンは、きっと俺の腕をとって

「フリーズするナスも好き」

とか、言いそうだ。


俺のどこが好きなのか、、、、は何か言ってたな。

なんで俺なんかを好きなのか、全く理解できない。


博士のこともメロンのことも理解できない俺は、パソコンに向かった。


理解できない。

知ることはできない。

知らない。

それはまったく当たり前のことだ。

最初から2人のことは理解してなかったし、何を考えているのかわからなかった。

そうだな、当たりまえだな。

俺は俺のことしかわからない。

この世界で俺は俺でしかなくて、2人のことを理解するための条件に踏み込んでいなかった。


キーボードをたたく。


2人のことは分からなくてもいい。

分かったふりをする必要もない。


答えは、そう、答えは、もうすぐだ。

俺は俺以外のことは分からない。

俺以外のことが分かったと思っても、それは俺からみた俺以外の誰かのことだ。


それが分かったから、答えは俺から見たメロンを俺はどう思っているか。

メロンがどうとかじゃなくて、俺がどうなのか、正解ではなく、俺の解をだす。


今回の、今日はもう始まっている。

もうすぐメロンが来るはずで、そうしたら俺は、前回より長く今回を続けて、解を得られるかもしれない。

俺にしてはとても前向きな発想だな。


2回、ドアを叩く音がした。

何も言わなくても、ドアが開いて、誰かが入ってくる。


「ナス!何してるの?今日は外に出ないの?」


今回のメロンも、いつものように明るく声をかけてきた。


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