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その1

博士はいったい何がしたいんだろう?作者にもわかりません。

カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ

白衣を着た男が休み無くキーボードを叩いている。


中肉中背で、あと3kgくらいやせたいなぁと思っていても不思議がられない体形がいいかな。

「今、ダイエット中なの」

「気にするほど、太ってないよ」

「あと3kgやせたらダイエットやめるわ。」

「うーん。無理せずがんばってね。」

そんな会話が自然に流れそうな感じがいいよな。


カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ



あと、こっちは、そうだな。

少しやせ気味で、彼女より背を高くしよう。

あまり外に出ないタイプになるはずだから、肌の色は男にしては白っぽくしとくか。


カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ

白く四角い部屋の中ではキーボードの音と共に時々男の独り言が響いていた。


--------------


「博士。なぜ私とナスを分けて作ったんですかぁ?」

パソコンに向かってキーボードを忙しげに叩いている男に、18歳くらいの女性が話しかけていた。

博士と呼ばれた男はキーボードを叩く手を止めた。

「何故だと思う?メロン」

メロンと呼ばれた少女は、ちょっと首をかしげただけで、すぐに答えた。

「判んなーい」

「それはそうだ。その答えはインプットしていないからな。

それで、判らなければどうする?」

少女は肩より少し長めの髪をかきあげて、

「ん〜...じゃっ考えるの、やめときます。」と答えた。


「それでいい。ループはしていないな。しかも、そんな疑問を持つとは、学習機能も問題ないようだな。」

博士は満足げに頷いた。

「答えは?博士?くれないの?」

「ああ。選択肢が無い場合は、そこでストップだ。nullが返されたら一番近い既定値まで、戻れ。」

「は〜〜い。」

メロンは明るく答えた。


「メロン。今日のことを報告してくれ。」

博士は、部屋の入り口あたりに立っていた背の高い男の方に顔を向けた。

「お前もだナス」


そう、この白い四角い部屋には博士とメロンの他に、メロンと同じく18歳くらいの男がいたのだ。


「あっ、じゃぁ私から。はい。はい。はーーーーい」

メロンは右手を高く上げながら、ピョンピョン飛び跳ねた。

「いや、今日はナスの話から聞く。お前はあとだ。」

上げた手を下ろしながらメロンはプーと頬をふくらませたが、すぐに思い直したようだった。

「ま、いいか。あとのほうが沢山しゃべれそうだしぃ。」

メロンはけろっとした様子だ。逆に顔をゆがませたのはナスの方だった。


「えっ、俺からさきぃ?なんで?」

「まぁまぁ、お前の話を聞きたいんだよ。」

机に向かっていた椅子をナスの方に回転させながら博士はニコヤカな笑顔をナスに向けた。

「そうやって、また、俺の話の上げ足を取りたいだけだろ。」

「話すんだ。ナス」

博士に、強い命令口調で言われたナスは、渋々といった風にうつむきかげんで話し出した。


「今日は、朝から博士に言われて川沿いまで行ったんじゃないか。

俺は別に行きたくなかったんだ。行っても何もすることはないし、どうせ疲れるだけだからな。」

座っている両足に肘をつき、指を交差させる形で組んだ手に顎を乗せ、博士は軽く頷いた。


「川沿いに行ったら、河川敷にいつものようにじいちゃんばあちゃんたちがいたよ。

声かけられると面倒なんで、河川敷には降りずに堤防の上をぶらぶら歩いてから帰ってきただけだよ。」

ナスは肩をすくめた。

「天気はどうだった?」と博士。

「別に、普通だろ。」

「普通って何よ!晴れ?曇り?雨?どれも普通じゃない。

もっと言いようが無いのぉ?たとえば、土手だったら、そぉ、風が気持ちよかったとか。」メロンが口を挟んできた。

「そんなこと、どうでもいいだろ?」ナスは面倒そうに吐き捨てた。

「よくないわよ!」メロンは両手で握りこぶしを作り、

「私たち博士の研究材料なのよ!何をどう感じたかちゃんと伝えて役に立たなくっちゃ!」と熱く語った。

「うるさいな。こんなことがなんの役に立つんだよ。わけわかんねー。」

二人のやり取りを博士はニヤニヤしながら眺めて、「いい感じだ。」とつぶやいた。

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