2話
月が我らの前を照らす中、我々ならず者の集まりは肉を求めて村に来ていた
村を囲む柵が我らの道を塞ぐ
「お頭、相手も完全武装で臨戦態勢のようです」
「まぁーあんな膨大な魔力の波動を感じれば誰でも臨戦態勢になるというものよ、」
「どうします?体制を整えますか?」
「いいや、もう退路はない」
「はい?」
「後ろを見ろ、狼の群れだ、戻るにはあいつらを倒す必要がある。だが進むときは敵の敵は味方というやつだ」
「え、それならあの狼を倒して食べれば問題なくないですか?」
「次余計なことを言ってみろ、口を縫い合わすからな。狼を倒す労力と村を潰す労力どっちのほうが大変だと思う?」
「魔法を使う人間と野蛮な動物、火を見るより明らかです」
「ふん、ほざけ!あの狼は魔物だ魔法を使うし知能も高い。十分な報酬を得られれば争わずに済むだろう」
「まーそうかもしれませんね、」
「うっし作戦を始めるか。敵に姿を見られている今、これ以上隠れている必要はない。照明弾を上げろ!」
後列のマッチョマンな変態が手を空に向ける
光り輝く魔力体が生成される
発射
ゆったりと空へ舞い上がる
最高高度に上がった瞬間術式が起動し目を覆いたくなるほどの光量が解き放たられる
「突撃!」
俺の得物であるロングソードを掲げる
「ヲオオオオオオオオオ!」
野郎どもの怒声が大地を轟かせる
一斉に走り出す
「ワホォォォオオオ!」
後ろに控える狼も同時に仕掛ける
柵を乗り越える
即座に周りを固められる
魔力をロングソードに込めて頭上で振り回す
風圧が斬撃となり村人に襲い掛かる
「ウアアアアアァァァ」
一瞬耐えるものの
だらしない悲鳴を上げながら2,3人吹っ飛んでいく
狼の突撃
その頭には柵がついていた
タックルを食らいっ吹き飛ぶ村人
どこかへ走り去る狼
「…」
「…」
「各自魔力武装展開!」
敵指揮官らしき大男が指示を飛ばす
青いオーラに包まれる村人
魔力武装は保有量が限られた魔力を垂れ流す代わりに圧倒的な能力を授けられる。相手も俺が指揮官であることに気が付いて短期決戦を望んでいるのだろう
「面白い、受けてたとう!」
同様に練っていた魔力を展開する
青色に輝く魔力に包まれる
「ふん、」
得物を横に一振り
放たれる巨大な斬撃
「う、…ぼはぉ」
魔力を前に展開し盾にするものの容易に貫通
村人を上下で切り落としていく、大男を除いては…
いつの間にか持っていた丸い片手盾でいなされた
「チッ、前衛が全滅しただと…てめえなんて怖かぁね!野郎ぶっ殺してやる!」
盾の後ろから剣を抜く敵
「ふん、その程度か、貴様の覇気とやらは、」
得物を構えなおしながら挑発する
敵の姿ブレる
「消えた?…上か!」
見上げれば剣を上段に構え飛び掛かってきた
得物を横に構え防御する
金属同士がぶつかり火花が散る
体格は近いが地に足をついているこっちが有利だ
横に振り払う
跳ね飛ばされる敵
空中で回転し姿勢を整える
着地
「ただの案山子が、その程度だったか」
罠が発動する
蔓が地面から生え足を掴む
驚き尻もちをつく敵
魔力武装を解除する
「バイバイ、ファイヤーボール」
右手に赤い炎を作る
「I'll be back soon」
「随分と余裕があるようだな、呆れたもんだぜ」
発射
炎が舞い上がる
後には焦げた地面だけだった
「死体すら残らんとは、哀れな奴だな…おーい!そっちはどうだ!」
「ゲイトンが被弾!血が止まりません!」
声のした方向に向かう
モヤシのような男が同じモヤシ野郎に圧迫止血をしていた
「お頭、俺は、俺は役に立てたでしょうか?」
貧血の震えた手を伸ばしてくる
「それは自分に聞いてみな、一番自分が分かっているはずだ。放火、強盗、密売、貴様はいろいろしてきた。だろう、」
「この人生で何をやり遂げたのでしょう、放火に強盗さらに密売。禄でもない人生だった…先に地獄で待っていまs…」
「息がありません!」
「チッ案山子野郎が最後に爆弾落としやがって…行くぞ、放火しにな」
「着火終わりました!」
「はえーな、」
「女、子供が居ません。野郎だらけです」
「奥にデカい倉庫があるだろう、そこに隠れているのだろ。あとオカマならいたぞ」
「需要はありません」
「そ、」
倉庫の前では武器を持った男が固まっていた
「あれではここに女、子供がいますよーって言っているようなものじゃないか。隠す気あるのか?」
「多分ありませんね、俺らに犯してもらいたくてウズウズしているんですよ。あそこはビッチだらけの天国でしょう」
「女を犯すのもいいが目的を忘れるな、家畜を奪うのだよ、家畜を!」
「家畜ならあの倉庫の中ですよ、」
「ならいい、倉庫以外の建物をすべて燃やせ!敵の心を折ってやれ!リーダーがいない今奴らはただの案山子だ!」
「ハッ!」
高魔力体の接近を感知する
まずい、来ているようだ。どうか、見逃してくれますように
両手を擦り合わせて拝む…ってえ?森に落ちた?
家に向かって次ぐ次とファイヤーボールを撃つ仲間たち
風魔法を使い延火を手伝う
行動を察したのか家にタックルをかまし燃えやすくしてくれる狼たち
「センキュウな、」
「くぅぅぅううう」
可愛らしい鳴き声で返事をしてくれる。飼いたい…
「すべての家、引火完了!」
「うっし!これで奴らの士気は地に落ち、た、な…って全然落ちてないじゃん!臨時指揮官かなんかでも着任したのか?ならプランBだ!」
「何プランあるのですか?」
「今考えたから知らん」
「え、」
「うるせぇ!黙っていろ!これより二手に分かれる、一つは倉庫の正面突破を目指す。もう一つは時間差を作り側面から攻撃する。いわゆる陽動作戦といったところだ。いいな、」
「は!」「わふん!」
「ではスタートだ!」