男爵令嬢による断罪?
初投稿です。
なろうでテンプレ化している、悪役令嬢と婚約破棄を題材に書いてみました。
(よしっ、これで準備は整ったわ!あとは、舞台に上がるだけよ。)
ほくそ笑む令嬢がここに1人。
男爵令嬢、その名もピーチ・トルマリンである。
ピンクゴールドのツインテールに陽の光りに照らされた湖のような瞳をもつ16歳、女の子。華奢で背は低めで胸が大きく、パッチリとした上目遣いの守ってあげたくなるような女の子である。
場面変わって、本日はユーフラテス学園の卒業パーティー。
ピーチの周りには高位貴族の子息が数人。皆美男子である。
輝く金髪に青空のような爽やかな青色の瞳を持つ美男子の第三王子殿下ユーリ・ラドフォード、財務大臣の侯爵家次男のマートン、騎士団長子息の伯爵家長男のルドルフ、近衛副騎士団長子息の伯爵家三男のトム。
対する向かいには、その婚約者達令嬢が。
美しく艶やかな銀髪を見事に縦ロールに巻いた、ガーネットのような深紅の美しい瞳で少しつり目な美少女の第三王子殿下の婚約者マリー・ワトソン、マートンの婚約者ジュリー、ルドルフの婚約者サリー、トムの婚約者ナタリー。
「マリー、貴様がこんな女だったと知っていたら婚約などしなかった。本日をもって、貴様との婚約を破棄させてもらう!」
そうビシッと婚約者に指差して宣言するは第三王子のユーリ。
「理由をお聞かせくださる?」
「理由など言わずともわかるだろう?ピーチを公の場で罵り、あまつさえ水溜まりに突飛ばし泥まみれにした。そして昨日、扇でピーチの顔を思い切り叩いたというではないか。それ以外にも数々の嫌がらせをしたと聞いている。言い逃れはさせんぞ!」
「ユーリ殿下、私がやったという証拠はあるのでしょうか。」
「まずこのピーチの顔に出来ている痛々しいあざがその証拠だ。次に泥まみれで帰宅するところを何人もの生徒が目撃している。貴様が罵っている現場はトムの友人であるダニエルが幾度も目撃している。これでもまだやっていないと言い張るか」
ちなみにダニエルはピーチの隠れファンである。
故についついピーチをよく目で追ってしまうのである。
決してストーカーではない、たぶん。
「あら、仮にしていたとして、それは私から礼儀がなっていないピーチへの愛ある躾ですわ。躾がなっていないと恥を掻くのはピーチ本人ですわよ。むしろ、躾をした私達に感謝してほしいくらいですわ。」
「何と言う言い種だ!この性悪女目。俺の愛しのピーチを傷つけておきながら全く反省もないだと!それでも公爵令嬢か!!」
マリーとユーリの応酬が続く中、ついに声をあげたピーチ。
「皆さん、私の話を聞いてください!
今殿下の仰ったことは全て事実です。ですが、そもそもの発端は私の話を全く聞いていただけないラドフォード殿下とワトソン公爵令嬢にあるのです。」
一気にざわざわしていた周囲が静まり返る。
「私は去年の春まで平民でございましたが、光魔法という10年に1人いるかいないかという珍しい魔法が発現し、遠縁の男爵家に養子として引き取られ、この学園に編入することになりました。
この学園は知っての通り、大半が貴族の子息子女が通われる場所。平民出身の私はクラスでも遠巻きにされる中で、ラドフォード殿下が優しくお声をかけてくださいました。
そのお心遣いそのものは、本当にありがたいものですが如何せん距離が近すぎます。
いつも私の腰を抱こうとする、あるいは手を握りながらお話しなしようとなさるので、婚約者のいる身で一体何を考えているのか、そして何故恋人でもないのにこのように距離が近いのかと、何度突き飛ばしてやろうかと思いました。
ですが相手が殿下である以上、所詮男爵家程度の令嬢である私が突き飛ばすなどすれば不敬罪になる可能性がございました。
ですから殿下には言葉で何度も、このような距離感は恋人同士が取るものであり恋人同士でもない異性がしていい距離ではないと何度もお伝えしました。そしてこのような場面を婚約者であるワトソン様が見られたら勘違いなさるから止めていただきたいとも申し上げました。
ですが、殿下には全く聞いていただけず、周りにいらっしゃる殿下の取り巻きの方々にも殿下を説得していただけるようお願いしたのですがこれまた聞いていただけず。
どうにもならないので、ワトソン様に現状をご説明し誤解されないようにするのと、殿下の行動を諌めていただくよう説得していただけないかをお話する為、何度もお声をかけをしました。
ですがただの1度もワトソン様が私の言葉を聞いてくださることはありませんでした。」
ここまで一息で言い切ったピーチ。
それを聞いて周囲は再びざわつく。殿下達と婚約者の令嬢達に至っては、口をポカーンと開けている。
「あなた、そんなのはこじつけよ!どうせ殿下にしなだれかかって色仕掛けで落とそうとしたんでしょ!そうに違いないわ!」とマリー。
「ピーチ、一体何を言い出すんだ!君と俺は歴とした愛しあう恋人同士じゃないか!」と殿下が宣う。
「一体いつ私と殿下が恋人同士になったと仰るのですか?」
「君は言ったじゃないか?青色が好きだと。そう、つまりは俺の瞳の色である青色が好き=俺が好きだと!」
「好きな色を聞かれたので、確かに青色が好きと答えましたが、なぜそうなるのですか!!好きな色を答えたくらいで、どうしてあなたをお慕いしていますという意味に繋がるのですか?意味がわかりません!」ピーチ憤りまくりである。
「、、、、、、、、、、、、、、、、。」
先ほどまで般若の形相をしていた公爵令嬢が途端青くなる。
(確かに昔、私は殿下に言いましたわ。私は青色が好きだと。そしてそれはあなたの瞳の色だから好きなのだと。あなたをお慕いしていますと告白したわ。まさか、そういうことなの!)
顔色が青を通り越して白くなる公爵令嬢。
「マリー様、大丈夫ですか?
あなた達がマリー様にこのような仕打ちをしたこと、このジュリー許しませんことよ!」
「マリー様、マリー様の敵はこのサリーが許しません。」
そして鼻息荒く二人に同意するナタリー。
(どうしましょう、もしかしてこれ私のせい?
いいえ、違いますわ。殿下とあの女が悪いんですの。このマリー、悪くありませんわ)
などと内心焦りまくりの公爵令嬢。
「昔、誰かは覚えておらぬが相手の瞳を色を好きな色だと答えることは、相手を愛しているということだと教えられた」
(あのバカ王子、それは私があなたへ送った言葉です。どうして覚えていないのよ!!)
「そんなこと聞いたこともありません。貴族のマナーや習慣、恋愛や結婚について一通り本で勉強しましたが、どこにもそのような記述はございませんでしたわ!」とピーチ。
「まぁピーチは、貴族になったばかりだから知らなかったのであろうな。大丈夫だ、安心しろ。俺がこの先も手取り足取り教えていくさ!」とピーチの胸をガン見しながらいう殿下。
盛大なため息をついて、ピーチの唯一の友人である平民特待生のマナを呼んだ。
「やっと出番ね!待ちくたびれわよ、ピーチ!
はい、これ!」と分厚い紙束をマナ。
「殿下、そしてワトソン様。ならびに皆様、よくお聞きください!」
そして読み上げられる、殿下がピーチへ言い寄り、それを断り続ける場面を目撃した者達の証言の数々。殿下は人目を憚ることなく言い寄っていた為、目撃証言の数が膨大にある。そして殿下の取り巻き達がピーチへ度々言い寄る証言も。そして公爵令嬢とその取り巻き達によるピーチへの嫌がらせの数々も。
何故こんなに手際よく紙束があるのかというと、遡ること今から2週間程前。
殿下達が何やらひそひそと話している現場を見たピーチ。聞き耳を立てるのは悪いと思っていたが、不穏な雰囲気であった為こっそり聞くことに。
どうやら2週間後に行われるパーティーで、殿下の婚約者であるマリーを断罪?するというような話をしていた。
もし断罪が行われれば、事実はどうあれ周囲から私は殿下から婚約者を奪った悪役令嬢にされてしまう。殿下の婚約者達から嫌がらせを受けているのは事実だが、それをパーティーという衆目集める場で公爵家のご令嬢相手にそんなことをしてしまえば、私の将来に影響する。これは何としても私が無実であるという証拠を集めなければ!!と決意したピーチ。そのことをマナにも話すと彼女も協力すると言ってくれた、ピーチ感動である。
そして今回の証言は全てマナが集めてくれた。ただ、これは友人を想ってタダ働きして集めた証言ではない。マナは時は金なりを地で行くタイプである。証言を聞き回って集めてほしいなら、例え友人と言えどバイト代が必要だと言われたのである。ピーチは男爵令嬢とは言え僅かな本当に最低限の消耗品を買える額程度の小遣いしかもらっていない。だが、自分1人で証言してくれる人を探しても遠巻きにされ数が集まらない可能性と自分自身で証言を集めても信用性にかけると周囲から指摘されるかもしれないと考えた。
背に腹は変えられないのでなけなしの小遣いと今まで平民の間に働いて貯めた貯金をバイト代として支払った。
そして友人であるマナは給料分以上の働き(充分すぎるぐらいの証言集め)をしてくれた。
こうやって書くとマナが金にがめつい守銭奴で、友情も何もないように見えるが時間と金が絡まない時以外は非常にいい奴である。マナは平民で裕福とは言えない家庭の為に、空いた時間の殆どをバイトか特待生を維持する為の勉強に精を出しているのである。
「な、なんだと!ピーチ、あんなにも愛しあっていたのは嘘なのか!嘘じゃないと言ってくれ!!」
「いいえ、愛しあった事実なんて微塵もありません。
今お聞きいただいた数々の証言通り、私はずっと殿下にお止めくださいと申し上げております。私は殿下をお慕いしてはおりません。」
膝を付き、盛大に項垂れる殿下。そして殿下の取り巻き達も、証言の数々を聞きピーチが自分に好意がない、むしろ嫌われていることをやっと自覚し顔面蒼白である。
やっとこれで終わりか、そう周囲が思いかけたその時。
殿下がまるで息を吹き返すが如くガバッと復活!
「嫌、俺はまだ信じない!ピーチは俺と話すとき、いつも上目遣いでうるうると可憐に話していたではないか!
やはり、俺のことが好きなのだな!!」
「いいえ、違いますわ!
私は背が低いので、殿方と話すときは必然的に見上げる形になります。そして私は花粉症です!花粉症故に目が充血し、涙目になるのです。私が殿下の前で何度もくしゃみをしたのをご存知でしょう?
そして風邪かと問われたので、これは花粉症であって涙目もくしゃみも花粉症の症状だと説明致しました!」
ふんす!と憤り過ぎて顔がりんごのように赤くなるピーチ。
そして今度こそこの世の絶望を一身に浴びたと言わんばかりに崩れ落ち絶望する殿下。
「殿下、これでやっと私が殿下に全く気がないことをご理解いただけたことでしょう。
そしてワトソン公爵令嬢、謂れのない罪でされた嫌がらせの数々男爵家を通して抗議文を送らせていただきます!」
公爵令嬢のマリーに厳しい視線を向ける周囲、そしてピーチとマナ。
(本当に私のバカ。昔からお父様やお母様、周囲の人間からお前は思い込みが強すぎると指摘されてきたけれど。自分ではそんなことはないってずっと思っていたのに。
殿下があの娘に入れあげてるのを見て、殿下を誑かして私から奪って行くのが許せなくて嫌がらせの数々をしてしまった。
それが全て私の思い違いだったなんて、、、。
少しは周りを見ろ、いつか取り返しのつかない失敗をすると注意されてきたけど、本当にそうなってしまった。
殿下も私から離れていき、残ったのは醜く嫉妬に狂った私、ただ1人。せめて傷つけたあの娘に、きちんと向き合い謝罪しなくてはダメよね。うん。)
「この度は私、ワトソン公爵家が息女、マリー・ワトソンが心からお詫び致します。」そう言って最敬礼をした公爵令嬢。
どよめく周囲。
本来なら身分が上の者が遥かに下の者に最敬礼をして謝辞することなど殆どと言っていい程ない。
「私が殿下をお慕いする余り、あなたが殿下を誑かす悪女だと決めつていたの。本当にごめんなさい。」
「頭を上げてください、ワトソン様。」
まだ頭を下げ続けるマリー。
「頭を上げてください、本当に。」
ようやく頭を上げるマリー。
「今回、証言を集めたことにより無事私が言い寄っているなどという誤解もこれで解け、そして殿下達から言い寄られることももうないでしょう。だからこの話は、もうお仕舞いにします。」
「こんな私を許してくれるの?」
「そうですねぇ、とりあえず私としては言いたいことを言えてスッキリしましたし、これより先はトラブルも起こらなそうなので。はい、お互いこれでお互い終わりにしましょう。」
「そう。わかったわ。ありがとう、ピーチさん。」
「、、、、、、、、あなたになら殿下を取られても良いって今ならそう思えるわ。」
「嫌ですよ、あんなスケベ殿下。熨し付けて返します!」
「ふふっ、要らないって言われちゃったわね」
そう笑うワトソン様のお顔は、女の私が見惚れるくらい美しい笑顔だった。
それから1ヶ月後。。。
結局殿下とワトソン様の婚約は破棄されることなく続いている。
あの時笑った笑顔に惚れたとか何とかで殿下が婚約を続けてほしいと頭を下げたそうだ。都合のいい話である。
ワトソン様は、やっぱり殿下を嫌いになれなくて婚約を続けることにしたそうだ。
お陰で殿下は今やワトソン様の尻に敷かれているそうだ。
そして公爵家からも私に詫び状が届き、将来困ったことがあったら必ず力になるとも書かれていた。
私としては協力な後ろ楯を得ることが出来たので、終わりよければ全てよしとしよう。ちなみにあの後ワトソン様の取り巻き達からも謝罪はいただいたのでこれにて解決。
あと少しで新生活も始まるので、これからが楽しみだ!
もう2度と学園でのような出来事が起きないことを祈りつつ、新しい出会いに胸を膨らませるピーチだった。
ハッピーエンドのつもりで書きました。
スカッとした終わりで書きたかったのですが、そう書けているか微妙なところです。小説書くって難しいですね。
いつもは読む専門なので、書くことが初めてで不安もありましたが執筆事態は楽しかったです。
また気が向いたら投稿するかもしれません。
この作品を読んでくださり、ありがとうございました。