森のおにぎり屋さん
なろうラジオ大賞2の参加作品です。
おはなしの最後に、イラストがあります。
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よろしくお願いします♪
赤い葉っぱが落ちるころ、湖のほとりにある森のおにぎり屋さんの看板に店主のたぬきさんが大きくこう書きました。
『おでんはじめました』
あつあつのおでんは寒い日にぴったりです。
「おにぎりふたつとおでんをくださいな」
大きなくまさんがやってきました。
おにぎり屋さんのおにぎりは季節のメニューが並びます。
秋鮭に栗おこわ、それにまつたけご飯もありますが、くまさんは脂のたっぷり乗った秋鮭が大好きなのです。
たぬきさんは、あつあつの新米に大きな秋鮭の切り身をいれて、きゅきゅっとむすびます。
大根と玉子、それにこんにゃくの入ったおでんからあたたかな湯気がのぼります。
「はい、どうぞ」
あつあつのおにぎりとおでんをくまさんは、はふはふ幸せそうに食べました。
「ごちそうさま。次に来るときは春になるなあ」
「お団子を用意してまっているよ」
たぬきさんは冬眠するくまさんを見送ります。
おにぎり屋さんは春になると、ふき味噌、桜えび、筍ご飯が並び、お団子をはじめるのです。
三色団子、よもぎ団子、それにぼたもちをめしあがれ。
北風がぴゅうぴゅうふいて、森の湖が氷結すると森のおにぎり屋さんの看板に店主のたぬきさんが大きくこう書きました。
『おしるこはじめました』
ほっとするおしるこは凍えそうな日にぴったりです。
「おにぎりみっつとおしるこをくださいな」
はくちょうの親子がやってきました。
おにぎり屋さんのおにぎりは季節のメニューが並びます。
牡蠣飯、焼き味噌、それにカニがありますが、はくちょうの親子は焼き味噌おにぎりが大好きなのです。
たぬきさんは、つやつやのごはんをきゅきゅっとむすびます。
それから味噌をたっぷりぬって炭火で焼き色がつくまでじっくりあぶると香ばしい匂いが湖のあたり一面に漂います。
ことこと煮込んだおしるこからあたたかな湯気がのぼります。
「はい、どうぞ」
あつあつのおにぎりとおしるこをはくちょうの親子は、はふはふ幸せそうに食べました。
「ごちそうさま。夏までゆっくりするよ」
「かき氷を楽しみにしていておくれ」
たぬきさんは寒い冬を過ごすために、もっと寒い場所から旅してきた親子のはくちょうをいたわります。
おにぎり屋さんは夏になると、梅干し、みょうが、うなぎが並び、天然氷のかき氷をはじめるのです。
みずみずしい桃やぶどう、それに梅シロップをかけてめしあがれ。
ここは森のおにぎり屋さん、サイドメニューも素敵でしょう?
あなたもどうぞいらっしゃい。