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【WEB版】叛逆のヴァロウ ~上級貴族に謀殺された軍師は魔王の副官に転生し、復讐を誓う~  作者: 延野正行
11章 旧同盟領攻防決着編

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第110話 秘密兵器

いよいよ決着!

「くふふふ……。あはははははははははははははははははははっっっっっ!!」


 ダレマイルの哄笑が戦場に響く。

 空には黒煙が満ちて太陽を隠し、大地には炎が上がっている。

 人間たちの頭上には、悪魔となった元天使だ。


 世界の終わりを想起させる状況の中で、その笑声はひどくもっともらしく、その場にいる生きとし生けるものに降り注ぐ。


 恐怖に煽られ、次第に肌と心の臓を冷たくしていった。


 皆が絶望に狩られる中、ヴァロウが動く。


 1匹の小柄な人鬼の姿を、ダレマイルはすぐに捉えた。


「ヴァロウ……。あなたのことを認めましょう」


「…………」


「あなたの知略は天使たる私を上回った。その知謀は見事という他ない。――しかし、あなたは最後の詰めを誤った。私という最後の詰めを……。殺せますか? あなたにその方法は? 戦術は? くふふふ……。無理でしょう。いくら魔族になり、副官となっても、あなたは私を殺せない。いや、私すら殺せない」


 ダレマイルは手と翼を大きく広げる。

 漆黒に染まった羽根が、人間に往来する絶望のように舞い落ちた。


「あなたが弓を引いているのは、ダレマイルという一個体だけではない。あなたは今、神族に弓を向けているのです。その愚かしさを噛みしめなさい」


 すると、ダレマイルはあろうことか背中を向けた。


 その行動に、誰もが目を丸くする。


「引き分け……。ということにして差し上げましょう。光栄に思いなさい。神たる私と引き分けたのです。――が、次こそはあなたを討ち果たしてみせます。10万の軍勢が無理というなら、100万の軍勢を集めるだけです。ヴァロウ、そして魔王ゼラムスよ。……首を洗って待っているのです」


 ダレマイルは悠々と戦場を離脱する。

 風を切り、時折翼をはためかせた。


「助かったのか……」


 という言葉は、志願兵の中からだった。

 ホッとみな胸を撫で下ろす。

 一方、側にあった仲間の骸を見ながら、涙するものもいた。


 しかし、エスカリナは首を振る。


「違う……。わたしたちは助かってなどいない」


「え?」

「どういうことですか、エスカリナ様」


「あの男は、100万の軍勢を連れてくるといった。あいつなら、それができる。上級貴族のダレマイルなら」


 エスカリナの意見に、賛同したのはメトラだった。


「ええ……。その通りです、エスカリナ。ダレマイルなら、世の理に背いても、我々は討ち果たしにくるでしょう」


「神様なんでしょ? なんで、そんな――――」


「神にとって……」


 切り出したのは、魔王ゼラムスだった。


「人間も魔族も、盤上の駒でしかない。さしずめ我々は、使えない駒なのでしょう。彼らにとって、我々は異物でしかないのです」


「そんな…………」


 エスカリナはダレマイルをもう1度見上げる。

 空を舞う姿は、不吉な死神のように見えた。


 皆が絶望に暮れる中、ドラゴランは小さく地響きを上げながら進み出る。


「ともかく、この戦は終いじゃ――」


「いえ。まだです、ドラゴラン様」


「ぬっ?」


「例のものをお渡し下さい」


「例のもの……。ああ、そう言えば忘れておったわ」


 ドラゴランは腰の袋の中に手を伸ばす。

 取り出したのは、魔法鉱石(ミスリル)と純度の高い魔宝石の塊を合わせたものだった。

 周りには呪字が刻まれている。

 一種の魔導具であろうが、エスカリナはそれが何なのかわからなかった。


「ヴァロウ、それは?」


「説明している時間はない。総員下がれ」


「え?」


「待て! ヴァロウ、ここで撃つつもりか?」


 ドラゴランも慌てた様子だった。


「術式方陣の用意がないのであろう? そもそもあれはルロイゼンの城壁に埋め込まれ――――」


「あっ!!」


 エスカリナは突然、声を上げる。


「あった……。そうだわ。まだヴァロウの秘策が残ってた」


「ど、どういうことだ、人間の娘」


「この戦いが始まる前に、ヴァロウはいくつかルロイゼンの改修を命じたの」


 1つはルロイゼン城塞都市に水を満たせるように、壁を覆ったこと。


 2つめは、ルロイゼン城塞都市の象徴たる城壁の改修工事である。

 主に、ヴァロウが指示を出し、そしてそこから慎重にあるもの(ヽヽヽヽ)が取り出された。


「あるものだと……。それは、まさか――――」


 ドラゴランは口を大きく開ける。


「それがここにあるのよ。この戦艦そのものが、城壁の機能を受け継いでいるの」


「ちょっと待てよ! じゃあ、オレが潰した城壁には……」


 ロッキンドにも話が見えたらしい。

 横でレインが顎に手を置いた。


「なるほど。随分、あっさり破壊させてくれるとは思っていたが……。すでに機能を移築していたわけか」


「ああ……」


 最後に、ヴァロウが言葉を結ぶ。


「そして、これはその(ヽヽ)交感器だ」


 瞬間、ヴァロウは一気に魔力を流し込んだ。

 魔力の受け皿となる交感器に、青白い炎のような魔力が満ちていく。

 その直後、戦艦が反応する。

 甲板上に幾何学模様と、複雑な文字が刻まれていく。


 現れたのは、巨大な魔法陣だった。


「総員退避! 退避よ!!」


 エスカリナは叫ぶ。


 レインは甲板から下の氷原に向かって坂を作る。

 そこに戦艦に残っていた人類や魔族が、まさしく滑り込んだ。


 甲板の上には、ヴァロウ1人だけになる。


 そのヘーゼル色の目線の先には、悠然と滑空する悪魔の姿があった。


「死ね……。ダレマイル……」


 冷徹な言葉が響く。

 直後――。



 発射!!



 【雷帝】が炸裂した。






 北の空を飛ぶダレマイルは、呪詛の言葉を吐いていた。

 いつか必ずヴァロウを殺すと胸に焼き付ける。


「100万、いや1000万の兵を投入してみせましょう。くふふふ……。あの生意気な人鬼が泣き叫ぶ様子が、今から目に浮かぶようです」


 空の上で笑う。

 途端、ダレマイルの視界の端に、青白い光が映った。

 振り返った時には、もう遅い。


 巨大な白光が、彗星のように迫っていた。


「まさか! 【雷帝】!! ば、ば、ば――――」



 ばかなぁああぁぁぁああぁぁあぁああぁあぁあぁあぁあああ!!



 【雷帝】の光が、上級貴族ダレマイルを飲み込んでいった。


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引き続きよろしくお願いします。

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