第八話 好奇心は身を滅ぼします。気をつけましょう
都市伝説、学校の生徒の神隠し---彼と二人の親友は調査するために真夜中の学校へ踏み出すが、そこはすでに魔の世界だった…。
「…で、なんで俺達はここにいるんだ?」
俺がムスッとしながら聞くと、シュウがわくわくしながら答えた。
「だって僕らの学校で不思議なことが起こってるんだよ? 調査するしかないじゃない?」
「だから、それが何で俺達なんだって話をしてるんだよ!」
するとシュウは小首を可愛く傾げながらさも不思議そうに答えた。
「え? 面白そうだったから?」
「おい!」
理由めっちゃ単純だ!!
「さらに言えば僕が楽しいから」
「いい笑顔だなおい!!」
でも…俺はまぁ百歩譲ってちょっと夜の校舎不気味だなぁって思うくらいだけど…問題はこっち。
さっきから俺の後ろにいて、俺の肩を滅茶苦茶強く握り締めながらカタカタ震えているナオのほうが心配だ。
「そんなに嫌ならこなきゃいいだろナオ…」
「だ、だだだだってよぉ……」
生まれたての小鹿のようにプルプルカタカタ震えてるナオを見ながら、ため息をしてしまった俺はいつもの彼らしからぬ姿に少しの呆れと、少しの哀れみを感じながら前を楽しそうにいくシュウを見つめる。
いつもの立場からじゃ到底見れなさそうな光景だ。
夜の学校というのもあって不気味さもあるし、それになによりいつもは男らしくて負けん気あふれるナオの弱気な姿と、いつもは大人しそうなシュウが生き生きしている。色んな意味で異様だな。
俺達は夕方のうちに開けておいた裏口から侵入することにした。
「あれ?」
「どうしたシュウ?」
「開かない…」
その言葉に明らかにホッとしたナオは、すぐさま帰ろうとした。
「じゃあしょうがないな! 帰ろうぜ!!」
「お前、急に元気になったな…」
「なんか言ったかケン?」
「…なにも?」
しかたがないと思いながらナオのほうへ体を向けようとした瞬間、いきなりゾクリと悪寒がした。
そして一気に身体の体温が下がったような、嫌な感覚して、驚いて俺は顔をバッとシュウのほうへ向けた。
すると、ぼんやりとだけど、シュウの後ろのドアの小窓から、白いワンピースを着た誰かが、向こう側からじっとこちらを見つめているのが見える。
アレはやばい。なんとなくだけど、あの時のことが頭によぎって背中に嫌な汗が流れた。気配とでも言うんだろうか? アレはあの時の目玉の男と同じ気配がした。
生きていない者の気配。それでいて生きているものを殺す勢いの―――
「おい、シュウにナオ…ここからいち早く出るぞ」
「え? なんで…」
「いいから! 早くここから―――」
強く言い聞かせるようにいうと、俺はナオのほうを向いて―――固まった。
さっきの女がナオの後ろに立っていて、ゆらゆらと揺れ動きながらこちらの様子を伺っていたからだ。
やばい。
やばいやばいやばい!!
どうする? 逃げたらアレは追いかけてくるのか?! かといってこのままここにいるのはもっと危ない…でもだからといって先走ってみんなを危険に巻き込むのは…。
そんなことをグルグルと考えていると、ナオが疑問そうに首をかしげた。
「どうしたんだよケン? いきなり動かなくなってさ…シュウも顔色悪いぞ?」
シュウも?
「……」
見れば彼も顔を青くしながらじっとナオの後ろにいるアレを見つめていた。もしかして…シュウも見えているのか?
「ねぇ、ケン」
シュウはアレから目を逸らさずに俺へ聞いてきた。
「もしかしてアレ…見えてる?」
「…ああ」
「…じゃあもしかして、アレってさっきドアの向こうに」
「いた」
俺達はアレを見つめながら、どうしたらいいのかわからずにそのまま動かずに話していた。
「…どうやったら一瞬であそこまで行けるの」
「アレが人間じゃないから…じゃねーの?」
「…この場合、ナオが一番危ないの? それとも俺達?」
俺は苦笑した。
「わかんねーや」
そう俺が言うと、シュウは小さく「そう…」と呟いた。かと思ったらいきなり大声をだした。
「ナオ走って!!」
それに便乗して俺も早口で怒鳴るように声を張り上げた。
「後ろに女の幽霊がいるぞ!!」
「うぎゃぁぁあああ!!!」
俺達がそう言うと一目散にナオは翔けて、叫び声をあげたまま目にも留まらぬスピードで俺達のほうへ走ってくると、俺達の肩をつかんでそのまま引っ張ってドアを開く。
そしてそのまま学校の中へと逃げた。