第二十八話 秘儀
瞬間、銀色の風がクロを包み込み、やがてクロが輝く。気が付けば猫のクロはそこにはいなくて。
代わりにそこにいたのは百五十五センチくらいの背丈の…和風の服のような軽い武装を着こなす、黒い短髪の少年。
年齢は一見すると十一あるかないかと思える。
目元が黒吉ソックリで鋭くも涼し気な優し気な眼差し。一言でいうなら美形少年だ。
「やっと神通力が戻ったか猫神」
その白雷の一言により、そこに現れたのが黒吉だったと知った。
「人型に…なれたのか?!」
『一時的だな…』
そういいつつも今度は俺の番だと言いながら、クロはバッと手を前へ。するとその手に猫パンチのようなモコモコなボクシングのグローブみたいなものが現れた。
もちろん、それは黒く、猫の手の形をしている。ちなみに頭に猫耳のほか、彼のうしろには二本に裂けた尻尾が。
『いくぞ。その一・銀炎翔!』
右手に銀色炎を宿らせジャンプ。そして銀の炎をこぶしとともに地面へ。爆発的な振動でバランスが崩れ、敵は動けなくなる(味方にも効果ありなため、使用時は注意が必要。)
『その二・風魔斬撃爆流!』
その隙にもう片方で風をつくり、疾風のごとく敵の間を駆け巡ると、その場に大きな竜巻が発生したり、カマイタチが発生して敵がスッパスッパと切れていき、消える。
「最後は俺か」
ニタリと好戦的な笑みを浮かべて、白雷は刀を構えた。すすっと二つの指で刀身を滑るようになでる。そして構えながら体制を低くした。
ボボン!! と煙が立ち込めて晴れるころには持っていた刀は並みのでかさを超えた刀になり、武器や彼の周りにバチバチバチと雷が発生し始める。
「化けの刀・第二の舞」
スッと目を細めて標的を見据える。
「落雷の花吹雪」
バチバチっと火花が後で聞こえる。ピカッゴロゴロ…と雷をつくりだしては邪神へ攻撃を試みるが、びくともしない。
と思いきや、白雷が素早い攻撃を繰り出して邪神へと攻撃を仕掛けていた。その場の広範囲に落雷が落ち続け、火花が舞う。
そしてその火花が花吹雪のようになり広範囲に出現し続けている敵へ刃物のように突き刺さり、攻撃する。
「これで辺り一帯の敵は俺たちには近づけない」
『やるな…。主、どうだ?』
クロが健路へと質問を投げると、彼の体が若干銀色に光っていた。目を開ければその瞳はきれいに淡くグレーに輝いていて。
「なんとかできたぜ!」
『さすがだ。』
ふっと笑い、クロは健路の左側へと寄った。肩に手をかける。
『いくぞ』
「おう!」
健路は刀を構えた。
「『『秘儀…』』」
刀に銀色の風が集まり、絡まる。目をつぶっていたクロがそっと手を肩からどけて、健路とアイコンタクトをとった。それだけで何をすべきかわかった健路はコクリと頷き相手をキッと見据え、そして───…
…飛ぶ。
その傍には月夜。そのすぐ後ろに一緒に飛んだのは黒吉。
「『『銀哭斬撃乱舞!!』』」
刀に銀の風と吹雪が取り巻く。そしてその勢いのまま健路たちは愛美へ──…邪神へと攻撃を入れた。
真上から一直線に入れた斬撃は、振りかぶったとたんに対象や、周りに銀の竜巻を発生させ、鋭いいくつもの斬撃を浴びせる。ビキビキと地面が割れる音がし、愛美の体は今にも吹き飛びそうだ。
「ぐ、が、ぁああぁあ、ああぁあ!!」
邪神が苦しそうに叫ぶ。
地面がその攻撃で割れていき、直後に大きな爆発音がした。
その反動で健路が吹き飛ばされようとしたのを、月夜が背中に回り吹き飛ばされないようにし、クロが健路の前へ出て先ほどの攻撃の反動を彼が受けないように手をかざして神通力をつかって跳ね返した。
『…やったか?』
力の効力がなくなり静かになったころ。地面に倒れているのは愛美で。
「倒した…のか?」
健路がのそりと起き上がり、愛美へと近づくと──…ニヤリと彼女が笑った気配がした。
『いや、まだだっ!!』
『猫神! 主を担いで間を取れ!!』
『主っ!』
「ぐふっ…!」
トン。とクロが地面をかけて間合いをとった。
『主、だいじょう…あるじ?』
見れば白目をむいてる健路が。
『あ』
どうやら思いっきり健路を抱えてスピードを出したその時にあやまって鳩尾に打撃を入れてしまったらしい。
『あるじぃぃい?!』
わたわたと月夜が健路を心配し呼ぶが反応はなかった。かなりのダメージだったらしい。
「おいおい、猫神何をやっているんだお前は…」
『…すまん』