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健路くんの非日常~囚われし巫女編  作者: ネムのろ
三章 父から子へ(丸投げ)
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第二十三話 不幸吸引体質

「健路!」

「…?」

 揺さぶられて健路は目を覚ました。ボーっとした頭のまま辺りを見渡すと、自分は父の真の腕の中にいた。

「よかった…っ」

 くしゃりとした顔をしながらほっとした京助を見ながら、そういえば刀の使い方を学ぶべくして彼と外へ出てきたのだったと、思い出した。

「あれ? なんで親父ここに…」

「バカヤロウ!」

 いきなり叱咤激励を放つ真に、回らなかった頭も回復しカチンときたため、何か文句を言おうとしたその時、真が大声で健路の声を遮った。

「霊刀に意識持っていかれちまうなんてどういうフザケタ真似だ?!」

 その声はとても苦痛なもので。

「下手したらあっちの世界に魂が置いてかれることもあったかもしれない…!」

 苦しそうなもので、悲しそうでもあって。

「一歩間違えたら死んでたんだぞ!!」

 何故だか、逆らえなくて。

「くっそ…!」

 珍しく取り乱している様を、眺めているしかなかった。

「あ、あの…ゴメンナサイ……?」

 その言葉を聞いてため息を吐き、ドサリと地面に座り込んで頭を片手で抱えた後、真はチラリと健路を垣間見た。

「で? 収穫は」

「えっと…」

 まだ少し疲れている様子の真を見ながら、きっとあっちで何が起こったのかを聞いているようだったので、健路はできるだけ細かく話した。

「そいつぁ、刀に宿る妖怪か、精霊、神の類だな…この刀、『銀月夜』の」

「え? なんでそんなこと分かるんだよ?」

「分かる。何年霊能力者やってるって思ってんだよ。一応、寺とか神社とかで修行したり学んだりしたからな…とにかく、この霊刀にはそんな力が強い神がかった何かが封じられていて…その封印の半分をお前が契約して解いたってとこだな。」

 真の話によると特殊な刀にはそういった類のものが宿ったり、または封じられたりする。普通は封じられた霊道…その者へといくための霊的な道は閉ざされていて入れないし、ましてや会うこともできない。

「…どんだけお前には力があるんだ…」

 ため息とともに吐き出されたその言葉は、少し疲れているようで。なにかを健路が言いかけた直後、真は立ち上がった。

「まぁ…お前の呪いが半分でも解けたんなら…それでいいわな…」

 そして京助の所へ行き、肩にポンと手を置く。

「健路のこと、よろしく」

「ああ。まかせるといい」

 ギリギリと乗せたままのその手で京助の肩を握る。

 イタイイタイ…と苦笑しながら京助はそれだけ言うと、もう一人の息子のほうは? と聞く。

「…音沙汰ない。もちろん、探索を続けるつもりではある」

「あまり…無茶だけはするんじゃないぞ真?」

 その京助を真は挑むようにギロリと睨んでから、ハッと鼻で笑った。

「無茶は後でくるんじゃないか…お前がここにいる限りはな…生霊を元の体に戻すのも中々骨が折れるんだ。知ってるだろう?」

 その言葉に、京助は苦笑するしかなかった。


 そして、京助と健路は改めて剣の修行へとうつったのだった。

 その時、そこを立ち去ろうとしていた真の顔は、心配でしかたがない、ただの父親の顔だけがそこにあった。

「あの悪霊を倒しても…きっとお前はこれから―――…」

 そして頭を振る。

「今は、優斗を探すことに集中だ…」

 後から来るトラブルは…後で考えればいい。

 じゃないと精神がもたない…。頭を片手で抑えながら真はそこをフラフラと立ち去っていった。もちろん誰にも気づかれてはいない。

 己の兄をのぞいて。


 そんな出来事が起こった後、残った二人は修行にはげんだ。霊刀は普通の刀とは違い、物理的なものには一切ダメージはいかない。

 しかし霊刀なので霊力を使わなければ霊的な何かを斬れもしないのだ。まずは霊力を霊刀へ流さなくてははじまらない。

 それがどういった原理か、健路はすんなりとこなしてしまったのだ。本来ならば数ヶ月で会得するものを彼はたったの数時間で。

 マレにない恐ろしい奇怪な才だと、京助すら苦笑したほどだった。

 そして二日後。健路が烏天狗の光葉と刀をつかって、封じられている刀に宿る者を呼び出そうとしていたときだった。

 凄い地響きとともに…その街一帯に…霊や妖怪があふれ出て、土地神までもが何かの影響により凶暴化。

 普通の人々は殆どが瘴気に当てられて気絶か、生気を吸い取られ弱ってしまっている状態。それを真が昔のなじみの霊能力者たちと連絡し、討伐と人々の保護に時間を費やすという、非常事態が発生したのだった。

 原因は…その街に巣くう魔の根源である、邪神の正体を真が知ってしまったせいにあった。

 おいおいマジかよ…と師走は呟いた。

「あいつ…一体どうやって知っちまったんだぁ?」

『それが…適任者がご自分のご子息と一緒にいたそうです』

「…ハァ?」

 風のごとく走る師走は呆れた口調で式神へ呟く。

「なんであいつは息子にまで不幸吸引体質を受け継がせてんだ」

 たく、しゃねぇなぁ! そう声高らかに言いながら彼はジャンプした。

 地面を振動させながら着地したその先は。

「あ、新たな敵っ?!」

「くそっ…! こっちはもう手一杯だぞ?!」

 ニヤリと不適に。しかし自慢げに笑う。

「よう小僧共。おめぇらの師匠に頼まれて手伝いにやってきてやったぞぉ」

 見せ付けるかのように、そこら一帯の敵を腕一本でなぎ倒し、彼ら二人の少年の前に立ちはだかった。

「おれぁ、真と契約してる十二月じゅうにつき使者の一人、またの名を妖怪三つ目入道だ」

 突進してくる三メートルはある真っ黒い鬼が、彼が拳ひとつつき立てて出現させた岩の柱でねじ伏せるのを間近で見た二人はポカンとした顔のままだ。

「よろしくな」

「あ…ハイ……」

「よ、よろしく…」

 そのまま師走は両腕を地面に突き立ててぐるりとそのまま回る。

「うおりゃぁぁああ!」

 するとドンドンドン! と彼らの周りに巨大岩が出現してそこにいた鬼や土蜘蛛、赤舌、油坊、からかさ小僧、縊鬼、一本だたらを一掃した。

「ちっ。一匹逃がしたか」

 そう彼がつぶやいた瞬間、右にズシンと地鳴りがした。

「牛鬼…図体でかくてウザイやつぁが出てきたかぁ」

 バシン! と己の手のひらに拳をぶつけてニヤリと好戦的な笑みをした。

「あ、あのっ…真さんの契約した妖怪なんですよね?!」

「だったら、俺達を健路のとこへつれてってくれないか!」

 今まさに牛鬼相手に攻撃を仕掛けようとしていた師走は拍子抜けしたが、そういえばと気がつき二人の少年を三つの目で見つめた。

「そういやぁ、真の倅はどこにいるんだ?」

「刀持って神社のほうへ行っちゃったんだ!」

「刀から声が聞こえてきて…」

 彼らの話によると数分前までは健路と一緒にいたが、刀から発せられる声が健路を神社へと向かわせたらしい。

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