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健路くんの非日常~囚われし巫女編  作者: ネムのろ
三章 父から子へ(丸投げ)
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第十六話 明かされる真実

猫又の黒吉を呼び出した健路は、相手…見るからに悪者ではなさそうな化け狐と退治していた。そこで次々発覚する驚きの新事実。健路はいつものように嘆くのであった。

 瞬間、猫又の尻尾に、銀色の炎が点り、彼の黄色い瞳も銀色へと変わった。いわゆる戦闘モードと言うやつだ。

『主よ。随分と呼び出すのが遅れたな…』

 体は敵に向きつつ流し目で健路へと視線を送る黒吉。

「…わ、悪かったな…」

 罰が悪そうに顔を背けながら、呟くように答えた主を見ながら、フッと軽く黒吉は笑った。

『悪いとは思わないが…そこまで消耗するのだったらはじめから呼び出せば』

「わっ忘れてたんだよ呼び出す呪文!!」

 顔を真っ赤にしながらそう叫ぶ健路を見て、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔になった黒吉は、次にニャハハハ!! と豪快に笑った。

『主らしい。』

「わっ悪いかよ!」

『いやいや。逆に良いところで呼び出してくれた。ここでなら』

 グググッ。と普通の猫サイズの彼がどんどん大きくなっていく。

『存分に暴れられる』

 ニヤリと彼は不敵に笑った。

 黒吉は自分の周りに銀色の炎をいくつも召喚し、輪をつくる。雑魚はそれに触れたが最後、灰と化す。

『自惚れるなよ雑魚悪霊達めが。』

 グワッと猫の巨大な手が敵をなぎ払い、潰していく。ジャンプをし、体重と炎を絶妙に合わせて確実に攻撃を当てて葬っていた。

『俺はそんじょそこらのただの猫又じゃないんだ』

 キラリと銀色に輝く瞳がいっそう輝きを増し、周りの銀色の炎がバッとその場に広がる。そしてその場のガイコツおよび悪霊は一せいに浄霊された。

『かつては神と崇められた上級モノだぞ?』

 その黒吉の余裕ある笑顔とともに放たれた言葉に一番雷が走ったかのように驚いたのは。

「ええ?!」

 健路だった。

「主なのに知らなかったのかよケン?!」

「僕たちなんて蚊帳の外だったのに、一番関わってそうなケンがその反応するんだ?!」

 そんな健路に間髪いれずにツッコむ二人。ワリと二人とも空気を読んで黙っててくれていたが、健路のあまりなボケっぷりにツッコまずにはいられなかった。

「大体、あの可愛い黒猫ちゃんが、じつは猫又で? しかも元神級で? おまけに今は僕達の親友のケンと契約結んじゃってるなんてさ!」

「超驚きなのはこっちだっつーの!」

 二人は不満そうにふてくされながら文句を言っている。そんな二人を見て、「悪い! ゴメンって~」と謝っている健路。

「ぷっ…」

 そこに、今まであっけにとられて動かなかった離れ神が吹いた。

「あははははは!!」

 突然笑い出す白い彼を見て、何がなんだかわけが分からなくなるその場の皆。

『なんだ?』

 黒吉も猫座りしてまだ笑い続けている白い土地神だった彼を透視した。

 そして、不思議そうに見続けて、首をかしげた。

「…なにがそんなに可笑しかったのでしょうか?」

 まだどうしていきなり笑い出したのか分からない皆を代表して、京助が聞くと、腹を抱えながら涙目で、しかしやっと笑いを引っ込めることに成功した彼が問いかけに答える。

「いやぁ、すまんすまん…意外性があって面白いやつがまさか、もう一人いて、しかもこんなガキだったとは思わなんだ…」

 涙を拭いて、嫌ににっこりと笑いながら、黒吉を見つめる。

「久しいな…よもやこんな場所でめぐり合うなどとは…もう二度と会うこともないと思っていた」

 その言葉を聞いてたぶん己に言っているのだろうと黒吉は悟った。しかし首をかしげる。

「黒吉、お前、知り合いじゃ…?」

『うーん…』

 何とも言えない顔をしながら悩み、考え込む黒吉を見て、白い彼が少し悲し気に目を伏せた。

「無理もない」

 ふう…と軽く息を吐く。

「昔、そいつの連れだった人間にちょこっと手を貸しただけだったからな」

 その言葉に、ああ! と声を張り上げた黒吉。何かを思い出したらしい。

『お前はあの時の!』

「…離れ神である彼に、ため口は…」

 と京助が苦笑しながら言えば、いいんだよ。と黒吉が言う。

『こいつの階級は昔の俺より下だ』

「「「はぁああ?!」」」

 それに驚いたのは当事者以外の者すべて。

「黒吉、お前ってなにもの?」

 恐る恐る健路が聞く様を見るに、彼もまったく知らないようだ。

「おいおい、そんなことも知らずに契約したのか」

「…うん」

「どんなアホなんだお前は」

 呆れてしまった白い彼を見て、シュンと少し落ち込んだ健路。

「そ、そんなこと言われても…緊急事態だったし、まんまと契約させられたって言うか…でも、覚悟は本物だし、契約して後悔はしてない!」

 その、健路の揺ぎ無い目を見て、ほう…? と関心した声をこぼした白い離れ神。

「面白いな小僧…名は?」

 そう彼が聞いて、健路がなんとなしに答えようとした瞬間、間にザッと入ったのは黒吉。

『まだ名を名乗るな主…こいつは今縛られている。』

 そこでハッと健路は口を閉ざした。そう言えば、夢渡りで黒吉に言われた気がする。本名とは、色々使えたりする。

 それこそどっかの誰かを縛ったり、契約に使ったり、呪縛を解き放ったり…聞いてもいないのにベラベラ父と黒吉が教えてくるから、無駄に記憶力のいい健路は覚えてしまったのだ。

 まぁ、基本的にほとんど忘れるが。


 相手の離れ神は、うっかりと言った顔をした。おっと、やばいやばい。そう言いながら。

「…そうだった。すまないな。条件を満たせば俺は呪縛から解き放たれるんだが…お前には俺の名、わからないだろう?」

 悲しそうに苦笑するその様を見て、名さえ言い当てれば救えるのだろうと見当がいった健路。なんとかしたい衝動が起き、黒吉を見つめる。

『無駄だ主。俺もやつの名は知らない』

「えええ?!」

「うっそ…」

「マジかよ…」

 黒吉の思いがけない言葉に一気に驚き気落ちする三人。

「黒吉なら、なんか長生きしてそうだから知ってると思ったんだけど…」

 と健路が言えば。

『齢三千年は生きているが…』

「「「超長生き!!」」」

 何その数値! と皆はまたもや声をそろえて驚く。

『そこらを回る離れ神までは情報があまりこないんだ。有名だったり力が強かったのならば小耳に挟んだ気もするが…興味がなければ聞く気も起きなかったしな…』

 超わがままぁ…とその場の皆は思ったとか、思わなかったとか。

 まじまじと、黒吉は白い彼を見る。どうやらまだ思い出そうとしているらしい。以外に健気でかわいいなと、健路は思ったが声には出さなかった。

『やっぱり、名は知らないな。主はどうだ? あいつを見て何か思うことは?』

 黒吉がなんとなしに健路へ話題をふると、首をかしげながらも健路は唸った。

「それがさぁ…さっきから頭痛がひどくて…あんまり考えられなくて」

 それを聞いた狐の彼は健路の顔をまじまじと見つめた。

「頭痛か? どれ診てやろう」

「あんた、本当に悪役向いてないよな…」

「おいおい。こう見えて名高い…まぁ、猫又からはちっぽけだろうが…俺はこう見えても九尾の狐より上のランクの天弧だぞ?」

『へぇ? 天弧か…それらしい気配はあったが』

 二人が納得しあったように会話をしていると、ファッ?! と驚きすぎて変な声が出た京助が唖然としていた。

「ど、どうかしたんですか京さん?」

 その健路の問いかけに、ふるふると体を震わせながらつぶやくように話し始めた。

「どうかしたも何も…天弧は千年歳を超え、強力な神通力を持って神格化した狐のことだ!」

「「「ええええ?!」」」

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