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健路くんの非日常~囚われし巫女編  作者: ネムのろ
二章 悪夢再び
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第十五話 敵か、味方か

おぞましい負の連続の成り立ちを、そこに何故かボスとして君臨している神聖な力を持つ“何者か”に聞いて悪寒しつつも、京も健路もナオとシュウさえ戦っていた。そこに鳴り響くは健路の声

『やっと俺を呼ぶ気になったか…主』

絶体絶命のピンチに、健路の呼びかけに応じて出てきた助っ人はなんと?!

 ゴゥ! と風が集まるような音がした。それは京助が足を一歩後ろへ下がらせ、腰を低くし刀を身構えただけで鳴った音だった。

 眼が先ほどの穏やかさから一変し、鋭く淡く緑色に光っていた。

 そして、ドン! という音を響かせて彼は宙に舞った。瞬間空中に火花が散る。

 見れば空間を避けたかのように細長い斜めよりの穴が開いていて、そこから誰かが京助の刀を何かで受け止めているのだ。

 京助はまたも刀を振りかぶる。ギィイイン…と鉄にぶつかったかのような音がした。

「やはり、一撃、二撃で倒されてくれる玉じゃないか…」

 苦く京助がそう呟くと、相手は楽しそうに笑った。

「お前も中々、見所があるぞ? 支配者に歯向かったものはここに行き着く前に、すべてあのような悪霊に食われ、そこからまた新たな悪霊が生まれる…」

 ぐぐぐ。と京助の刀を押し戻しながら、その穴から出てきた。

「行き着いたとしても、骨のないやつらばかりでなぁ。退屈でしかたがなかった」

 その穴から出てきたのは。

 真っ白い、本当に真っ白いサラサラの、腰よりさらに長い髪をもち、頭の上に獣の耳をピョコと生えさせてながら、細く長身の、派手な着物を着た鋭く細い黄色い瞳を持つ人…。人獣? らしき男。

 尻尾が四つあって、これまた輝くような真っ白さ。まつげも結構長い。

「よくぞ俺の所まで辿り着いたな人間。」

 狐のような、人のようなそいつは、少し力をこめて持っていた刀を振りかぶると、京助は弾き飛ばされた。

 しかし京助は上手く空中でバクテンし、きれいに着地することに成功した。

 宙からストッと屋上に優雅に舞い降りたそいつは、キラキラと赤い月の光で反射して光る真っ白い綺麗な髪と、肩にかけた刀と人間の目とは思えない綺麗すぎる黄色い瞳を輝かせて、ニヤリと不適に笑った。

 ファサと四つの尻尾が動いた。

 なんとも形容しがたい美しい姿を、そいつはしていた。

 男だというのに真っ白い肌に、長いまつげ。赤い唇に目尻には紅の化粧をしている。そして着物を帯で締めているが、帯の上に帯飾りとしてデカイ鈴と鈴の緒がある。

 それはそれは、とても高貴で、上品な気質がある。纏うオーラが少し神々しいのも、気のせいなのか、どうかもわからなくなってくる。

 本当に悪いものなのか? と疑問さえ生まれてくる。何処をどう見ても、今まで見て感じて戦ってきたやつらとは決定的に違うのだ。

 何処が違うのかはわからないが…とにかく、違う。この世のものではないのは確かだが…。

 三人が混乱しかけていると、驚いた声を発しながら、立ち上がって刀を構えた京助。

「何故…こんなことを…あなたは…っ」

 その彼の様子を見た相手は目を細めて、関心したかのように、楽しそうに笑う。

「ほう? その様子だと俺が誰だか分かっているようだな。」

 風がふく。不気味な風が。瞬間、ザワザワと周りで音がし始めた。

「なっ…なんだ?!」

 ナオが慌ててキョロキョロ見渡す。

「分からないけど…良いものじゃないってことは分かるよ…気配がなんか嫌だもん」

 シュウが嫌な顔をする。

「皆、絶対に離れるんじゃないぞ! 背中合わせで集まれ!」

 健路がそう言うと二人はすぐに背中を合わせて周りを警戒しつつ、前にいる二人の会話に耳を傾けていた。

「ちっ…時間は少ない…か…人間、ここに辿り着いたお前たちにはチャンスがある」

「チャンス?」

「ああ。もし、時間切れまでに俺の名前を当てることができたなら」

 トン…と軽く白い彼は屋上をけると、あっという間に京助の懐へ入って刀を振りかぶっていた。

「俺がお前らを助けてやろう」

 その言葉に、京助は確信した。

「やはり、貴方は縛られて―――…!」

 その言葉を遮るように白い彼の周りで青白い炎がいくつも表れた。かと思えば京助へ向かって攻撃してくる。

 それをすんででかわしつつ、後ろへ少し下がり、炎を刀で斬って消滅させた。

 ついで、来る白い彼の斬撃。それをすべて受け流しながら懐に入り、真横に刀の刃を振りかざした。

「!」

 白い彼はよけたが、よけ切れずに彼の首にかけられていた黒くてデカイ数珠の糸が切れて、そして数珠が消えた。

「ほう…」

 白い彼は後ろへと三歩下がって、ニヤリと笑った。

「その刀、霊刀だな? くくく。面白い…あの封印をいとも容易く消し去るとはな…しかし、言ったであろう? 俺の名を言い当てないことには、この場にかけられた呪縛は解けない…」

「いいんですよ…」

 京助は鋭い目はそのままに、にっこり笑った。

「土地神を殺す気はないし、かといって今の私に貴方の名を考えて言い当てるなんてできっこない」

 その彼の言葉に、少し機嫌を損ねた白い彼。

「そこまで分かっていてなお、お前はできない…と申すのか」

 白い彼―――土地神の気迫にも負けず、笑ったまま京助は話続ける。

「ええ。だって私はここの土地の者ではないのでね」

「では…お前も俺を見捨てるか」

 土地神が少し悲しそうに顔を歪めた。それこそ、もしかしたら泣くのではと思うほどに。しかし涙は零れずに、土地神はスッと刀を京助の心臓へと向けた。

「興が醒めた。その命、散らすがいい」

 バッと彼が翔る。対して京助は諦めてない顔で刀を振りかぶった。

 風が吹く。白い髪がなびく。着物が上下する。

 刀が交えるその瞬間がとても長く感じられた。

 刀が重なる―――

 ―――だが、刃は消えて―――

「?!」

「化けの刀・その一」

 悲しく細められた綺麗な黄色い瞳。目尻の紅の化粧が嫌にくっきりと見えた。

「悲しき宴」

 刀がその場に止まり、いきなり白い彼がバクテンをしながら刀を掴みなおし、一撃二撃と攻撃をし、続けて四つの尾もいれて三、四、五と猛攻撃を仕掛ける。

 素早い。目で追うのがやっとだ。それ全てを受け流している京助も京助だ。

「ほう? やはりお前…戦い慣れておるな?」

「ええ。神様相手はこれで三度目ですね」

「三度か? くくく…只者ではないと思ったが…面白いな…だが…先ほどからお前は何を待っている? 時間はもう残り少ない…周りを見てみるがいい」

「え?」

 京助は気がつかなかった。

「気をつけろ!」

「また来るぞ!」

 あまりにも土地神との戦いに集中して気がつかなかった。周りで何が起こっていたのかを。

「骸骨…?」

「ああ。すべてこの地で死したやつらの怨念が寄り集まってできたのだ。悲しき者達よ…ここをすべる悪しき悪霊に呼び覚まされ、無理やり働かされている」

「貴方は…それをなんとかしようとして…?」

「…俺には嫁がいてな…そいつが姿を消した。それと同時にここが出来た。あやしいと思うだろう…追ってきたらこのザマさ」

 軽く肩を上下した土地神は、さぁ…はじめよう。と身構えた。

「ケンくんたちを放っては…っ!」

 さっきから、ガイコツ相手にシュウがどこに来ているか指示を出し、ナオがおびき出し、健路が刀で殴って無理やり成仏させていた。

「なるほど。あいつらがここに住まう土地人か…」

「そうです!彼らなら…!」

「無駄だ。残念だがあいつらに俺の名を知る術はない」

「なっ! ど、どうしてですか!」

 土地神は悲しげに、目を伏せた。

「俺はとっくの昔に土地神をやめている」

「へっ?!」

「俺は自由にあちこち歩いて回る『離れ神』となったのだ。ここが俺の守ってきた土地だが、もう十数年前にみんな忘れてしまっている。数年いきただけのガキには分かるまい」

 そう言いつつ、京助を見ると、彼はまだ諦めてはいなかった。

「いいえ。かならず―――」

 根拠などどこにもない。

「彼が…」

 だが、分かる。感じるのだ。

「きっと…」

 “彼”がきっと、なんとかしてくれると―――

「人間…俺はお前達の戯言は結構好きだが…今のは冗談がすぎるぞ」

 いつの間にか、白い彼は詰め寄っていて…京助の頭上へと刀を真っ直ぐに振りかざしていた―――…。

 だが、京助は目を閉じもせず…。

 フッ。と不敵に笑ったのだ―――…


「契約に従い、我の問いかけに応じよ! 出でよ!! “猫又”!!」


 健路の必死の声がその場に響くと同時に、その空間に亀裂が入り―――…そこから光が漏れ出した。

 その光から現れたのは―――…

『主の命により参上した』

 ストッと屋上に着地する、二本の尻尾を持つ黒猫。

『この目、この耳、この足、この力…主と共にあれ』

じつは次から三章が始まる予定なんだけどね~

健路「ん、もうそろそろ、いい話数だからな。」

なかなかどうして、難しい。それこそ毎日投稿を続ける苦行を重ね続ける物書きのように!

健路「…今何気にサラッと裏の事情話して…」

いつもヒーヒー言いながら書き進めてますよみなさーん。褒めて褒めてー

健路「おい! みっともないだろ! せっかくはるばる、話を読みに来てくれたってのに何読者に」

次回!『その真意を追及す』お楽しみに!

健路「だから毎回、嘘予告すんなってば!『明かされる真実』だろ、もー」

お楽しみにね☆

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