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健路くんの非日常~囚われし巫女編  作者: ネムのろ
二章 悪夢再び
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第十話 囚われた親友

出られなくなってしまった学校から彼らは、無事脱出できるのか?そう心配していると、今度は友人とはぐれてしまって…?

「さて。まずはどうやってここを出るかだな…」

「さっきみたいな奴が廊下を俳諧してるってんなら、通り過ぎた今がチャンスじゃないか?」

「そうかもしれないけど、アレが一匹だって保障はどこにもないよ」

「それはそうだけどさ…ずっとここにいても解決しないんじゃないのか?」

 ああでもない、こうでもないと言い合う二人を見て、ふと思ったことを言ってみた。

「朝になったら警備員さんとかこないか?」

 そう俺が言うと、シュウは苦笑しながら言った。

「じ、じつはさ…行方不明になった生徒達って…みんな噂が気になって夜の学校へ忍び込んだ子達だったんだよね」

「え」

「ちょっとまてよシュウ…てことはなんだ? それって今の俺達のような状況ってことか?」

「…うん。」

 そしてそのまま帰れなくなって、神隠しにあったというのなら…。

「このままだと帰れなくなる?」

「……そうかも」

 その結論に達した直後、俺達はそそくさと理科室を出て廊下を慎重に歩いていった。


 どれくらい歩いたのだろうか。何分たったのかわからず、時計をみる。すると俺は思わず呟いていた。

「嘘だろ…」

 多分目は見開いていたと思う。声も若干震えていた。

「え? どうしたのケン?」

「なにかわかったのか?」

 俺はキュッと口を閉ざして、壁に埋め込まれている時計を睨みつけるかのようにじっと見つめたあと、自分の携帯を開く。

 それを見てナオとシュウもおもむろに自分の携帯に手を伸ばした。

「いま、何時?」

 そう俺が確かめるように聞くと、二人は驚愕したままボーゼンと立ち尽くした。

「…」

「おいおい、なんだよこれ?!」

 二人が見せた携帯の時刻、俺の携帯と壁の時計の時刻はみんな一致していた。

「4時44分44秒…こんなに四が並ぶことってどんな確率だよ?」

 ナオが震えながらそう聞く。

「たぶん滅多にないよ…しかも全部の時計が一致するなんて…ありえないよ…」

シュウも携帯を握る手元が震えていた。

 きっと俺も少し動揺してたし、怖かった。だからポツリと思わず声が出ていた。

「あの時と同じだ」

「え?!」

「ど、どんなことがお前に起こったんだよ?!」

 俺はしかたがないと、歩きながら説明することにした。こんな状態で二人に隠すのもなんだし、気も紛れるだろうから洗いざらいはいた。

 謙遜でもするかもなぁと思ってた俺は、二人の対応に驚いてしまった。

「「あー…ありえるなぁ」」

「受け入れるの早っ?!」

 俺が二人の反応に驚いていると、二人は顔を見合わせながら苦笑した。

「じつはさー…お前の親父さん? 霊能者として名を馳せた時があって」

「は?! 聞いてないんですけどそれ?! 親父からも母さんからも!!」

「まぁまぁ。落ち着いてよケン」

「本人は嫌々やってたみたいだけどさ、困ってる人を見過ごせない人でさ…俺のばあちゃんが話してたことなんだけど、俺、赤ん坊の頃に悪霊に呪い殺されそうになってさ…たすけてくれたのがお前の親父さんなんだと」

「…はい?」

「僕も縁あって五歳くらいのときに…ペットの金魚が死んだときに悲しくて公園までいったら変なモヤモヤに追いかけられてさ…通りかかったケンのお父さんに助けられたよ」

 ちょっと待て。

「お前らそれ、俺まったく知らないんだけど?」

 申し訳なさそうにシュウは苦笑した。

「うん…確信なかったし、まさかケンのお父さんだったなんて」

「シュウと俺はそうじゃないかとは思ってたんだが、なにせこれだっていう確信無かったからさ…黙っておこうとしたんだけど」

「今ので辻褄があったよ。そうかぁ。じゃあ浄霊できるんだよなケン?」

 ポンと二人が俺の左右の肩に手を置いた。期待の眼差しをしているところを見てとても大きな勘違いをしていると見てとれる。

「待て待て二人とも。勘違いしてもらったら困る。俺はそんな霊能者ができることはできないぞ」

 そう言った途端、二人の笑顔が引きつった。

「記憶が一部飛んでる上に呪われてて、さらに最近お札がまぁまぁ使えるようになっただけだ」

「だよな…そう簡単に事が運ぶわけがねぇよな…」

「だね…じゃあ引き続きあのドアから出られるか確かめてみよう」

 一気にテンションが下がったけど…俺のせいじゃない。断じて俺のせいじゃないから。


 ドアに辿り着いてあけようとした俺達は、やはりと心の隅っこで考えていた事態に頭を悩ませていた。

「やっぱ開かないか…」

「窓もあかないぜ」

「どうなってるんだろホント…」

 そんなときだった。フワッと嫌な風が吹いたと思ったら、なにかが腐敗した臭いが漂ってきて…嫌な気配が俺の後ろから迫ってきているのがわかった。

 あいつだ…! 瞬時にあの、ゆらゆらうごめいてた女の幽霊を思い出した。俺の真後ろにいる。直感に似たようなものがそう伝えてくる。

「走れ!!」

 俺がそう大声を出して走ると、わけがわからないまでも二人は走りだしてくれた。何かを俺に聞こうとして後ろを振り返った二人がアレを目にして死に物狂いで走りだしたのは言うまでも無い。

 どこまで引き離せたか後ろを振り返りながら走る。するともう後ろにアレの姿はなかった。

「ケン…! 前!!」

「前にいるぞアレが!!」

「なっ?!」

 前を見ればたしかにアレがこんどは異常な速度で前から迫ってくる。くっそ!! 学校に入ったときと一緒かよっ!

「二人とも俺につかまれっ!」

「「へ?」」

「早く!!」

 わけがわからないまでも二人はサッと俺につかまった。よし…後は…まぁ、成功するかなんてわからないし、なんせ初体験だ。

 上手くできるなんて思ってもいない。

「いいか、何があっても俺を放すなよ」

「わ、わかったよ」

「たのむぜケン」

 だけど、ためさないわけにはいかないだろ! 俺には果たさなくちゃならない約束もあるし、それに…この二人を護りたいんだ。

 俺はお札を取り出して手にぐるりと巻いた。清めの塩を引っつかんでもう片方の手に少しまぶす。こんなことならもっと持ってくるべきだったな…。

 そして目をつぶって、親父が言ったアレらの気配をたどる。時々、ああいう早いやつらは気配を隠して幻で相手を惑わすと聞いた。

 もしそういうのじゃなくて、ただたんに本当に移動速度が速いんだったらもうお終いだけどな。

「くるっ! くるよケン!!」

「うわっうわっ! 目玉ないぞあいつっ!髪も超長くてボサボサっ…ヒィ! 来た!!」

 ナオの震える声とともに俺は目を開いた。と同時に辿った気配を信じて清めた塩がまぶしてあるこぶしを思いっきり、感じた気配へ殴った。

 ドゴッ! という鈍い音とともに、ぎゃぁああああ!! という悲鳴が上がる。

「なっ…なにしてんだよケン…なんでシュウを殴って…」

 震えているナオをおいて、俺は床に倒れて悶えてるシュウへと歩を進めて…お札で巻いてる手を使ってシュウの頭を鷲つかんだ。

「はなっ…はなせぇ!!」

 血管がシュウの額から浮き出ている…。いや、こいつは…。

「痛そうだな? いつから入れ替わってた?」

「い、いれかわっ…え?」

 冷静に、冷静に俺はシュウ…もとい、悪霊をにらみつけた。

「ひゃは…ひゃははは! なんだ…バレテタのかぁ…」

 彼の顔は焼け爛れていく。そしてみるみるうちに白いワンピースの女の姿になった。

「あなたたちがもう一度ドアに近づいたときかなぁ…?」

 そして声が変わって、シュウのものではなく、ましてや女の声でもないような、わけのわからない声になった。

『あの坊や…見た目によらず相当まいってたみたいで簡単に隙を狙えたの…』

「へー。そう。で? どこに隠した?」

『それは知らない。知ってたとしても私は言えないんだよねー…ここを支配するやつをあんたらが倒せたら、話は別だろうけどさ』

 そういいながらその女はサラサラと砂になって消えた。

 ひゃははははは。せいぜい死なないことね。

 そんな声を廊下に響かせながら彼女は消えてった。

「じょ…成仏したのか?」

「んなわけないだろ。負けたから退散しただけだありゃ。」

「そ、そうだよな…お札しか使えないケンはまだ浄霊はできないよな…」

「それより、やばいぞ…」

 シュウがつれさられた。この学校のどこかに…。

「分断されるなんて考えても無かった!」

 吐き捨てるように声を荒げるナオ。

「ちくしょう…こんなところ俺達みんなで一緒にいてもおかしくなりそうだったのに…シュウは今ひとりで…」

「探そう!!」

「…ああ!」

 怖いのはみんな一緒だ。今更すぎる。だから今は前に進みながら、シュウを見つけ出すことに集中した。

 決めたんだ。一緒に脱出するって。だから…。待ってろよ。かならず見つけ出すから!!


 と決めたはいいものの、ほかに何があるのかわからない深夜の学校は、やはりどこまでも不気味で。

 ゆいつの救いは警備室で手に入れた懐中電灯が正常に機能しているということだった。

「でもすっげぇよなケンは」

「なにが?」

「だってよ、悪霊をブン殴って沈静させるなんてできっこねぇのに、やってのけるんだもんなぁ」

「ああ、アレか。あれはただのブン殴りじゃないからそりゃ効くだろうよ」

 気だるく俺がそう答えると、唖然とした顔でナオが俺を見つめてきた。

「どういうことだよ?」

「幽霊に物理攻撃きくわけないだろ…あれは清められたお札にこめた霊力を媒体にしてるんだ…今の俺、霊力あんま使えないみたいだから、あらかじめ札にこめておいたんだ」

「すっげぇ! あったま良いなケン!!」

「お前俺をバカだと思ってたのか」

 なんでかわからないけどナオにそう言われるとちょっとムカつく。

「じゃあ、何が起こっても安心だなっ」

「…いや、そうでもないぞナオ」

 俺はポッケに入れてあるお札を取り出した。

「こんなことになると思ってなかったから、お札あと三枚しかない…」

「…は」

「あと、お清めの塩も…あと三回しか使えないな…」

「はぁぁあ?!」

「しっ…しかたないだろ?! こんなこと起こるなんて予測できるかって! 一応、ここに入る前にお前達にお守りわたしただろ?」

「あ、これか?」

「その中にも清めの塩いれてあるから…なにかあったらそれ、使え」

「で、でででもさぁ…ああ、ちっくしょ…こんな事ならこなければよかったぜ…」

 後悔先に立たず。だな。シュウにはあらかじめ説明してたからよかったけど…それより、シュウを探さなくちゃ…。

「でも、どこをどう探せば…」

「な、なぁケン」

「なんだナオ?」

 恐る恐るといった感じでナオは口を開いた。人差し指を俺の後ろの窓をさしながら。

「その…窓に張り付いてるやつって…なに?」

「え」

「幽霊って物理効くの?!」

真っ先に聞く事がそれかい? 健路くん

「いやだっておかしくね?! 普通有り得な」

だって君さっきやって見せたジャン

「やったけど! できたけどッ!」

だったらもう、それで良いじゃん♪

「……いいのか…? これでいいのか?」

次回『有能すぎるのも、良くないゾ☆』お楽しみに!

「だから違うってば!『不安と恐怖』だろ?! もー」

……お楽しみに!!!!!

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