1話 目が覚める
目が覚める
「……………………」
まず最初に見えたのは緑色の草だった。
青臭い香りに、風で髪が揺れる。
日がふんわりとさしていて心地がいい。
寝ていた体を重い動作で起き上がらせ辺りを見渡す。
そこは、丘だった。
1面緑で木も花も生えていない……
辺りには緑の世界と……
自身の横に横たわるように寝ている少女のみであった。
「…………すぅ」
寝ている……小さな女の子だ……赤い服の女の子……この子には扱えるのか分からないほど大きな杖を掴んでいる。
顔を上げる
「………どこだここ」
見覚えがない……
横にいる少女も……
大体ここはどこだ……
帰らないと……
………帰る?
「……どこに帰るんだ?」
ふと気づく、分からない……ここがどこかも……自分が何者なのかも……
「…………寝るか」
そう言うと二度寝をした。
夢だろうか……夢なら変わった夢だった。
なんで何も思い出せないのだろう……
起きたらきっと元通りになるだろう……
時はたち
日は沈んで、月が登っている。
特になんの変哲もない、黄色い月だ。
「…………」
三度寝と洒落こんだ。
そして時はたち
日が登っている、太陽が眩しい、肌寒くはあるが草のベットは暖かく気持ちがよい。
そうして、気づく。
「……………どこだここ」
ここはどこなんだということに………
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まずは、整理をしよう。
1つ ここはどこだ
2つ 横にいるこいつは誰だ
3つ これらになんにも心当たりもない
「なんだこれ……」
整理するとますます分からなくなってる
「だー!なんだこれ訳分からん!夢じゃないのか?何処だよ!訳わかんねぇよ!」
グルグルと草の上を転げ回る。
草の音も、何もない丘も、横にいる少女も、意味わからん現実も本物だ……夢じゃない。
夢じゃないとすればここはどこだ。
丘?草しかねぇじゃん!
寝てるこいつ以外人いねぇし……
動物いねぇし……
街もなんにもない……
しかも俺はなんにも覚えてない。
自分の名前は?
自分の過去は?
「……これ無理なんじゃ」
ここで死ぬ?こんな意味わからん場所で?
「帰りてぇ……」
そもそも帰る場所すら分かんないじゃん……
俺生きてんのか?なんにもないんだけど。
いや……あるか……
横にいる少女を見やる。
相変わらず寝ている、最初に見たのは多分昨日の昼頃だ……今日までに三度寝をしている俺なんだが、こいつが起きて来たことは1度たりともない、どんだけ長く寝てんだ。
「………おーい起きろー」
とにかくこいつ起こさないと何も始まらない。
何もない丘に唯一いる人だ、何か知ってるかもしれない。
そう思って揺するが起きる気配がしない、死んでんじゃないのか?こいつ
「おい!起きろ!説明しろ!」
「んっ………にゅう……もうちょっと……」
「いやお前もう十分寝てんだろ!1日寝てんだから起きろ!んでこの状況説明しろ!」
ここで引いたらなんにも進まないと、意地でも起こしにかかる。
「うーん………だぁれ?」
ゆっくりと起き上がり少女の目が開いていく。
目が最大まで開かれると、少女の目に色彩が灯る、どうやらこの景色を認識しようとしているらしい……そして
「……夢だった」
そう言い残して寝た……
「すぅ………」
「……………………は?」
寝た………
寝た
寝た?
「なに寝てんだああああああああぁぁぁ」
ガクガクと揺らし少女の口から、おわぁああと変な声が漏れた。