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第四話

次話、「第五話」から毎週木曜日と日曜日のみの投稿となります。

次話を楽しみにしてくださっている方々にはご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

そして、ここまで僕の小説をご愛読いただきありがとうございます。

引き続き頑張っていこうと思っておりますので、どうぞ、これからもよろしくお願いします。

それでは第四話スタートです!


二章―

下宿所のドアの鍵を開けようとした時、既に開いていることに気付いた、

(誰かいるのか?)

恐る恐るドアを開け、玄関の様子を確認する。いたって異常はない。

ゆっくりとドアを閉めると、静かに玄関で靴を脱ぐ。廊下を歩き出そうとしたその時、

「曲者!?」

リビングのドアが突然開き、中から出てきたのは・・・・・・

「へ?」

可愛げで少々大人の雰囲気を漂わせるメイド服に身を包んだ、朱鷺よりもいくつか年上の美女だった。

「ど、どなた?」

突然のメイドの登場により、状況が理解できない朱鷺。中華料理店に入ったのに、オムライスが出てきた時のより、数十倍驚いただろう。

「貴様こそ何者だ!」

その見た目に全くつりあわないと言っても過言ではないほど、力強い声。某フェアリー○イルの赤髪女戦士を連想させるような声だ。

「い、いや俺はここの住人・・・・・・」

「さては、ご主人様の命を狙いに来たな。愚か者め! 曲者とあらば、私が相手をしてやろう! さぁかかって来るがいい!」

完全に勘違いされている様子だがメイドは3本のナイフを取り出す。

「違います、人違いです!」

「どうした? 怖気づいたか。ハッ、その程度の覚悟でよくここまで来たな。貴様から攻撃してこないというのならこちらから行くぞ!」

手に持ったナイフを朱鷺の首元へ突き出すメイド。その動きはあまりにも俊足(しゅんそく)で、朱鷺でさえ回避するのがやっとだった。

「ま、待て、人の話を聞け、おい!」

「問答無用!」

すぐさま追撃が来る。朱鷺は必死で回避するが、高速な攻撃ゆえに肩に一太刀あびてしまった。すると、

「こ、凍ってる?!」

傷口がだんだんと凍り付いていく。

「そう、その力こそ私の【特性】、【(れい)(ひょう)】。傷口に黄泉の冷気でフタをする。ご主人様に貴様のような愚者の鮮血を見せるわけには行かぬのでな!」

(こいつ、【特性所有者】か!)

「さぁ、観念しろ!」

(やばい!)

【死神】に効果を発動するには自分に魔術をかけ、細胞に信号を送り【死神】の効果を発動する直前の細胞量とその位置を記憶させ再生するようにしなければならないのである。この魔術をかけるのに必要な時間は約5秒。そんな時間は無い。

殺される。そう確信した。

「待ちなさい!!!」

絶体絶命の危機に駆けつけたのは、琴羽だった。

後1秒も遅れていたら、朱鷺の命はなかっただろう。

「ご、ご主人様!」

(ご主人さまぁ?)

「待ちなさい雪乃。その子は私の同居者よ。今すぐ、そのナイフをしまいなさい」

「へ?・・・」

俺とメイド両方の理解が追いつかない。

が、

「も、申し訳ございません!!!」

下宿所に帰ると、超強いメイドに襲われてそれを「ご主人様」と呼ばれる同居者に助けられる人間の気持ちが分かるだろうか。

常人なら理解できないだろう。

「まさか、同居者様とは、思いませんでした。大変申し訳ございません!」

早とちりにも程がある! と言いたいところだが、悪気はなかったようなので朱鷺は言うのをやめた。

「いいさ、人間誰しも失敗はある。まぁあと少しで死ぬところだったけど・・・・・・」

もう少しで死ぬところだったが・・・(大切なので二回言いました)

「お許しくださるのですか?」

「ああ」

「感謝いたします、本当に、本当に申し訳ございませんでした」

深く頭を下げるメイド。

「で、どういうことなんだこれは?」

朱鷺は状況を居解しているであろう琴羽に問うた。

「この子は私の専属メイド―雪乃よ。今朝までオーストラリアの方で仕事していたのだけど、終わったっていう電話をくれたから呼んだの」

何故オーストラリアで仕事していたのかは不明だが、今日帰国したらしい。

「で、そのメイドさんが始めてみる俺を侵入者だって勘違いしたわけだ」

「そういうこと。今日から私たちの生活や仕事を中心に手伝ってもらうことになったわ」

「わかった。よろしくな、雪乃」

「はい! お名前をお聞かせください」

「不知火朱鷺だ」

「了解しました。朱鷺様」

先ほどまでの鬼の形相は何処に行ったのか、その顔は他の何にも表すことの出来ないような優しさに溢れていた。

かくして、専属メイド―雪乃は(無事?)下宿所で働くことになったのである。

それにしても、専属メイドがつくほどの家なのかと考えると琴羽の素性(すじょう)が気になる朱鷺だった。

生徒議会が行われたその数日後のこと。

全校運営委員会から生徒会宛に一通のメールが送られてきた。

委員会どうしの連絡は全てメールで行うようになっているのだが、各委員会から生徒会宛のメールが来ることはほとんどない。

生徒会が各委員会に要件の解決を要求することはたびたび起こることだが、今回は話が別である。

メールの内容は、先日の生徒議会の最後に戦乃宮が話していたことの日程が正式に決まったという話。一週間後の今日、生徒会長、副会長、書記代表の三名のみで運営委員会本部室に来るようにという、なんとも「自分たち運営委員会の方が偉い」といわんばかりの文面だった。

「生徒会も舐められたものね・・・・・・」

少々怒気のこもった声で琴羽が言う。

正直、今回のメールの文面には、俺も思うところがある。

普段から、べつに生徒会が上とか下とか権力的なことはあまり意識しないが、人に物を頼むような態度ではないのは確かだ。生徒会への宣戦布告なのだろうか? 朱鷺の疑問は増幅していくばかりだった。

メールが届いた日の放課後、生徒会は緊急会議を開いた。

「今日は、急に呼び出したりしてゴメンね。特に、響子はまだ何も知らないでしょ」

琴羽と共にメールを読んだのは朱鷺のみだった為、書記代表の柵響子は全校運営委員会のほうからの呼び出しについて何も知らないのである。

「会長、緊急会議開いてまで知らせなければならない案件なんですか?」

生徒会書記代表―(しがらみ)響子(きょうこ)

「ええ、先日の生徒議会から丸2日の今日、運営委員会のほうから生徒会宛にメールが送られてきたの」

「運営から生徒会宛にですか?」

異例の事態に動揺する響子。

「それって、つまり、そういうことですよね・・・・・・」

朱鷺よりも数年生徒会暦が長い響子は、「学習委員会の乱」当時にも生徒会に所属していたことになる。

「学習委員会の乱」とは今から約半年前に起こったクーデターのことである。結局、失敗の終わったのだが、旧学習委員会が生徒会をのっとり全委員会の行動管理権を奪おうとしたのである。その時も、今回同様メールが送られてきたらしい。

「もしかして、運営委員会がクーデターを目論んでいるということか?」

「恐らくそうよ、潰すだけだけど」

「どうやるんだ? 相手は【天帝】だぞ、簡単にはいかないだろう?」

「天帝」のことだ、恐らく裏に何かあるのだろう。

正直、能力だけを見れば琴羽よりも、戦乃宮の方が上だろう。

今はまだ、生徒会が権力の中心だが、いつ大どんでん返しされるか分からない。

そもそも、戦乃宮が運営委員会にいるのか謎だ。

だが、戦乃宮のことを考えてばかりいるのは建設的ではない。

今おかれた状況の中でどう太刀打ちするか考えるのが最優先事項である。

「武力交戦しか方法がなさそうね。向こう側もそれを望んでいるでしょうし、私もそれを望んでるわ」(生徒会長が言うべき台詞じゃない)

「天帝」相手に武力交戦で勝る賞賛がどこにあるのか不明だが、一応琴羽も「覇王」で生徒会長だ。計算した結果どこかに勝ち目があったのだろう。

「武力交戦って、どんな感じでやるんだ?」

「さぁ? いろいろな方法があるけれど、どんな形であれ、勝てるようにしておきましょう」

呼び出された直後に運営委員会本部で緊急開戦することだって無いとは言えない。

「天帝」―戦乃宮昇龍。

最も敵に回したくない人物だが、こうなった以上闘いは避けられない。

十分な準備が必要だと再確認した朱鷺だった。


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