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第二話

数分後・・・・・・

 放課後教室で口論(戦闘)を繰り広げた二人の再開は想定外の場所で繰り広げられた。

「うっ、嘘・・・・・・」

「なん・・・・・・だと?」

「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

あまりにも運命的というか、宿命的再開に驚愕(きょうがく)の声を家の前で上げる二人。今期(一年間)ペアとして暮らしていくわけである。

新しいペアについては下宿上に行くまで知ることはできない。学校側に頼んで変更することも許されていない。強制的に同居を強いられる。この学校のルールだ。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

沈黙。二人の間を圧倒的沈黙が支配している。

が、まるで石像のように硬直していた二人だったが、なんと琴羽がその沈黙を破った。

「ご、ごめんなさい!」

真正面からの凄まじく誠意のこもった謝罪。その行動は、普段の琴羽からは(聞いている限り)全く予想のできないものだった。驚くべき現状を前に余計に固まる朱鷺だったが、

「私が言い過ぎたわ・・・・・・貴方に責任がないのを知っていながら私ったら、つい、イライラしてしまって、あとから冷静に考えたら悪いのは私だってことに気が付いて、それで、だから、その、反省してるわ・・・・・・ゆ、許してくれる?」

今まで気づいていなかったのかと思うと(あき)れるしかないが、人生の中でおそらくほとんど謝罪なんてしたことがないような人間に真正面から謝罪されて許さない奴なんて鬼だなと朱鷺は思い、自分が鬼以上に悪役だということに気付いた笑いを静かに(こら)えながら、

「分ってくれたんなら良いさ。俺は副会長だ。会長に謝られて許さない副会長がどこの委員会にいるんだよ。」

「いいの?」

「これからはよろしく頼むぞ、会長!」

「ええ、ありがとう! 【覇王】が【死神】に負けるわけにはいかないわ。これからは、仲間として好敵手としてともに歩んでいきましょう」

「ああ!」

・・・

「というか、中で話さない?」

「そ、そうだな」

つい先ほどまで大喧嘩していた二人だが、この先大勢の敵と共に戦っていくものとして、仲よくしてゆくのが最善策だがこの出会いが学校の運命を変えていくことになるとは、まだ二人とも全く知る余地もない。

「まずは、お互いに自己紹介からだな」

「ええ」

同じ生徒会に入り、会長と副会長の関係になることを、お互いに認め合った二人だが、おかしなことにまだ自己紹介を済ませていなっかたのだ。

「じゃあ私から言うわ! えーっと、どんなことを言えばいいの?」

「おいおい・・・・・・」

自己紹介なんてしなくても既に名前は知っているし、性格、能力、【特性】もある程度理解しあった二人にとって、新しい情報というのは考えてもみれば案外思いつかないものだ。

「まぁ適当なことだったらなんでもいいぞ」

「それじゃあ、うーん・・・・・・【特性】などについては略すけれど、新しい情報として、好きな食べ物は、プリン。好きな教科は社会(公民)。 嫌いな食べ物は、蓮根。嫌いな教科は体育よ。また何かわからなかったり、知りたいことがあったら何でも言ってちょうだい」

「バストは?」

予想外過ぎる質問だ。瞬間的な返答の速さには驚いた。琴羽は顔を赤く染めると、

「それを聞いて、何の意味があるっていうの?」

「興味本位だ。何でも言えって言ったのお前だぞ」

「そ、そうだけど・・・・・・変態」

恥ずかしながら何故か胸もとを凝視する琴羽。仕方ないといわんばかりの苦い顔で、

「86、よ・・・・・・」

「なん・・・・・・だと」

(ででで、デカい!)

これまた、想像以上の返答と、大きさに、動揺する朱鷺。恐らく着やせしている胸に熱い視線を送る。

「あ、あんまりジロジロ見ないでよね! ・・・・・・馬鹿」

「しょ、しょうがないだろ・・・・・・あー、もう次だ、次!」

「何よ、自分から聴いてきたくせに。後処理がへたくそね」

男の性を抑えることが困難だったが、一応精神を落ち着かせ、自己紹介を始める。

「俺も同じようなことだけど、好きな食べ物は寿司。嫌いな事は、面倒くさい仕事だな。と、まぁこんなところか?」

「じゃあ自己紹介はこのへんにしておいて、家の内装を見て回りましょう」

新下宿所は、二階建ての全5室。風呂、台所、寝室、リビング、書籍、などなど色々な整備がされており、今日から使えることとなっている。

だが、朱鷺は気づいてしまった。何故、こんなことばかりに目がいくのか、本人も理解できないが、寝室が小童部屋しかなく、

大きなWベットだということを発見してしまった。

「貴方、左右どっちがいい?」

「左が・・・・・・っておい! まさか隣で寝るのか?」

「なにか不満かしら?」

「い、いやそういうわけじゃ・・・・・・」

どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか、女子のそういうラインが、俺にはいまいち理解しがたい。

「左がいいのね。わかったわ」

結局、すんなりWベットで寝ることが決まった。

~琴羽の心の声~

(ヤバイ、朱鷺君と、二人でベットで寝るなんて・・・・・・何か、おこらないかしら?

  ○朱 「琴羽、俺、我慢できないよ・・・・・・」

  ○私 「い、いいよ、朱鷺くんなら・・・・・・」

  ○朱 「本当に初めてが俺で、いいのか・・・・・・?」

  ○私 「う、うん・・・・・・私の初めてもらって・・・・・・」

なんて、ことになったり・・・・・・?)


想像力豊かなその脳は、全くもって余計な空想まで描いてしまう、リアルに。

どうにかならないものかと、琴羽は悩む。

「お前、何か顔赤くなってないか?」

「き、気の性よ・・・・・・」

(ヤバイッ!気づかれる・・・・・・)

「そ、そんなことより、次の部屋にいきましょ」

「そうだな・・・・・・」

その後、各部屋を見て回り、家の構造をある程度、把握した。

「ふぅ~、まぁ、こんなところかぁ」

「そうね。私達二人には、少し大き過ぎる気がするけれど、まぁ、今後この家で暮らすわけだから、丁度いいのかもね」

「まるで、新婚夫婦、みたいだなぁ」

沈黙。恐ろしい沈黙。無神経極まりない。

朱鷺の言動に動揺する琴羽の顔面は、今にも爆発してしまいそうなくらい、熱かった。

青春を謳歌している女子のそれであった。

朱鷺は、そんな琴羽の心情を全く理解していなかったようだが、沈黙を消し去るべく、新たな話題に話を変える。

「そ、そういえば今日の議会の話なんだが、【天帝】の奴には、まだ話をしてないんだ」

【天帝】と普段から関わりない朱鷺は、どのタイミングで報告しようか決めていなかったのだ。

「俺、委員会とかするの初めてだから、あんまり他クラスの奴とからまないんだよな。お前はたまたま同じクラスだったけど、【天帝】は全く違うだろ。【天帝】おこるかなぁ?」

「貴方、【天帝】を知らないの? 今まで、よくこの学校で生活してきたわねぇ・・・」

「あんまり関心がなかったもので・・・」

「いいわ、私が教えてあげる」

【天帝】―戦乃宮昇龍。二組の学級長で、運営委員会委員長。学年トップの学力で超度級成績優秀者。運動神経もなかなかのものだ。

【特性所有者】だが、琴羽とは違い、朱鷺らと同等である【覚醒者】だ。

五歳の時に覚醒したらしいが、【特性】の強性効果によって超高度な知力や運動能力と引き換えに両手両足、実家、両親を失ってしまった。

五歳の少年が【特性】の効果によって両親を殺害し、両手両足を失うということは、全てのものを失う、それ以外の何物でもなかった。

しかし、【天帝】の能力は創造。自分を中心とした魔術的領域内で、己の想像したものを実際に生み出すことができる。

魔術的領域外に出ると、創造した物は消滅してしまうが、大量の魔力を消費することによって、一定の時間内、領域を拡大することができる。

性質上、手足には困らないのだ。全てを失い、全てを得た者。それは、はたして幸せなのかは、分からないが、【天帝】は最強クラスの能力であることに間違いはない。

戦乃官昇龍。要注意人物だ。

「へぇ~、そんなに凄い奴だったんだ・・・・・・さすが運営委員長だな」

「で、でも一応、権威は私の方が上なんだから!」

まるで、威嚇しているフグみたいに、頬を膨らませ、自らに権威を主重する琴羽。

「実力だ、実力」

「何ですって? 私に実力がないって言いたいの?」

「まぁな・・・・・・」

「や、やってみないとわからないじゃない! 私だって努力―(略)―・・・・・・【天帝】なんて―(略)―・・・・・・そもそも、私が会長に―(略)―・・・・・・皆の選挙で決まったのだから―(略)―・・・・・・なの! わかる?」

ほとんど話を聞いていなかった朱鷺は、もう反論するのも面倒くさくなって、「はい、はい」としか答えることが出来なかった。

恐らく、生徒会副会長の自分が、重要視するべきは【天帝】であることを、改めて再確認した朱鷺は、今晩の食卓の準備に取り掛かるのだった。

朱鷺が【天帝】と面識無いことを知った琴羽が今回の件については報告した。

下校してから数時間後、二人はリビングにあるテーブルで、朱鷺の手料理を堪能していた。

「そ、そうか、それは良かった・・・・・・」

朱鷺は、琴羽が自分の手料理を想像以上に食べてくれて正直ほっとした。

今日は海老チャーハンを作るつもりだったのだが作っている途中、色々ミスしたため、最終的にピラフと化したのだった。

ある意味天才だろう。

「レシピ教えて!」

「いや、いちいちメモってねぇよ」

(正式には、そもそもピラフの作り方なんて知らないし、たまたま出来上がっただけ)

「えぇ~次からは、しっかりメモしておいてね!」

「お、おぅ・・・・・・」

「ごんどば、ばたじがつくるがらだのしみにまっててね! モグモグ・・・・・・」

食べながら話すな! と言いたい朱鷺だが上機嫌な彼女を見ていると、何故か忠告する気も失せた。

琴羽は、食事中、最初から最後までずっと「美味しい」を連呼していたが、いつも他人に自分のことを褒められるのを嫌う朱鷺だったが、不思議と嫌な気はしなかった。

「もうこんな時間かぁ・・・・・・時間が経つのは早いな。俺は、風呂に入ってくるから食べ終わったら皿洗いしててくれよ」

「了解~」

この下宿所初風呂だが、前回の下宿所の風呂といったら、それはもう、驚く程古かった。

前回の下宿所は、木造の古い平屋で今回とは正反対の和の雰囲気にただよう古い建物だった。

正直、今回の下宿所の方が何十倍も嬉しい。今回はくじ運がよかったみたいだ。

脱衣所で服を脱ぎ、風呂へ入る。

結構大きく色々な物が置いてある。

シャンプーやボディーソープ、リンス、タオル、などなどあらかじめ完備されている物ばかり。

湯船も、そこそこ深くて入り心地がよかった。

「あぁ~疲れた~ったく、もう仕事したくねぇなぁ・・・・・・」

湯につかりながら今日一日のことを思い返す朱鷺。

色々なことがありすぎて、若干脳の情報処理が追い付いていない気もしたが、どうでもよかった。

「明日、生徒議会かぁ~面倒くせぇ~ てか、なんで体育祭実行委員会は資料作り忘れるんだよ、せっかく明日は休めると思ってたのになぁ、チクショウ~!!」

一人で暴言を吐いた後、自分の行動の恥ずかしさに気づき、一人で顔を赤くする朱鷺。

「早く上がって今日は寝るか!」

やはり独り言の多い朱鷺だが、自分自身、ほとんどそれに、気づいていないのだった。

朱鷺が風呂を上がった後、琴羽は風呂に入る前の脱衣所で硬直していた。

洗濯機の中に男子の(しかも朱鷺の)衣類が投げ込まれている。

普段の琴羽ならば全く気にもしないであろう男子の衣類に目が行ってしまう。

黒いパンツ。何故だろう、不意に手が伸びてしまう。

本能なのだろうか? それに負けじと、理性が抵抗する。

脱衣所で一糸まとわぬ全裸の琴羽は一人、葛藤していた。

最終的に無事、本能が勝利したものの、日々の疲れから己(、)を(、)慰める(、、、)幸せ(、、)な(、)一時(、、)を過ごすことが出来た。

琴羽も湯船に浸かり朱鷺と同じことを考える。

しかし、朱鷺のように面倒くさがるのではなく、明日に向けての決意をしっかりとかためるのだった。

恐らく明日、要注意人物となるのは「天帝」―戦乃官昇龍、「聖職者」―葛城原正二の二人だ。

己の意思をどこまで突き通すことができるか、不安ながらも楽しさを見出す琴羽だった。

 琴羽が風呂から上がった頃には朱鷺は既に床に就いていた。

恐る恐るベッドに入り込む琴羽の心臓は早鐘のように高鳴っていた。

「う、うんにゃぁ~」

(か、可愛い・・・・・・)

寝ぼけている朱鷺の反応がつい可愛いく思えてしまった。

「ん~? 琴羽ぁ~?」

「あぁ、起きないで、私ももう寝るから・・・おやすみ」

「ん。おやすみ」

何かされるか心配していたのはハッタリだったようで、面白くないほど何も起こらなかった。二人は、何事もなく無事、下宿所初日の睡眠をとったのだった。


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