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第三十三話 夜襲

 真っ暗な海の中をポツンと浮かぶ小さな船の甲板に仰向けで寝転び、涼しい風を全身に受けて火照る体を冷ます。数時間前まで酒場で宴会をしていたのに、どうしてこんな所で潮風を浴びているのか……?

 酒場で飲み過ぎて騒いでいた間の記憶は無く、大騒ぎした後はカウンターに突っ伏して眠ってしまったらしい。目が覚めた時にはリリーが隣に座っていて、その時にお兄様から直々に私へ任務が与えられたと聞いた。

 そして、おぼつかない足取りでリリーに支えられて乗船して今に至る。


「う〜〜ん……頭痛い……ま、さっきよりマシにはなってるけど……」


 上半身を起こして、立てた片膝に腕を置いて真っ暗な闇を見つめる。船の船首にリリーが手すりに持たれて海を見ていた。

 頭の中は靄がかかったようにはっきりしないが、今はそれで良い。考えられる頭であれば、あのパイロットの事で頭の中が堂々巡りする事になっていただろう。トニーの言った通りに飲みまくって良かった。

 しばらく海を見ていると、視界の隅にいたリリーが私に気がついて走り寄って来て隣に座った。


「どう? 頭痛くなくなった?」


 腕をピンっと伸ばして私の頭をさすってくれた。


「あはは、ありがとね。まだ少し痛いけど……すぐに治るよ」


「ふ〜ん……もう飲まない方が良いんじゃない? ……いろんな意味で」


「うん……当分はいいかな……。そういえば、ウィリスとトニーは? アーサーさんも乗ってるよね? たしか」


 船に乗り込んだ時に三人の姿を見ていたし、ウィリスは私と同じく指名されたと聞いた。こんな小さな船に個室なんてないだろう。消去法的に、この風に当たる場所に出てきているはずなのだが見当たらない。


「ウィリスはコフィンのコックピットの中、トニーは船の操縦、アーサーはアリシアの機体の調整してるよ。で、ボクは目視での索敵。レーダーが古くてあてになんないんだってさ」


 無言で頷いて船の操縦室、物置きの方向へと順に目をやった。整備や操縦なんて他の人に任せればいいのに。

 二人共その後は黙ったまま海を見ていた。聞こえるのは波が船体にぶつかる音とエンジンの音。

 そして、その中に船の甲板を叩く音が混じって、段々とその音が近付く。


「あ……アリシアさん、飲み物どうですか? はい、リリーには頼まれてたジュース」


 見覚えのある顔だが、誰だったか思い出せない。その男からリリーはジュースの入ったボトルを受け取って、勢い良く喉を鳴らし始めた。


「はい! じゃあ、頂きますね」


 彼の手に残っていたもう一本のボトルを掴んで一気にそれを飲み干した。


「それ……僕のなんですけど……まあ、いいか……。……あ、あの、アリシアさん」


 袖で口を拭いて彼の目を見た。目が合った瞬間に大きくブラウンの瞳が泳いで、顔が赤くなった。私を呼んだのになかなか話をしてくれずに、首を傾げるとリリーが彼の背中を叩いて続きを促した。


「ああっと……えっと、調整が終わったから見て欲しいとアーサーさんが仰ってました」


「おお〜! 頼んでた奴だね! 行きます! 行きます!」


 島を出てからそんなに経ってない気がするけど、こんな短時間で仕上げるなんて仕事が早い。


「…………あっ、そういえば聞いてないですよね? あなたの名前」


 立ち上がって大きく体を伸ばすと血の巡りが良くなり、頭がスッキリしてさっきの疑問の原因が分かった。思い出せないんじゃなかった、名前を聞いていなかったから知らなかったのだ。


「僕……ですか……⁈ えっと、僕はロシュ・ドゥルイト・ランカスター……です……。その……この間は本当にごめんなさい……」


「その事は……まあ、結果的に無事だったんだから気にしないでください! よろしく! ロシュ!」


 オドオドしてふらついているロシュを捕まえて軽くよろしくのハグをした。


「は、はい……よろし……」


「次はねぇからな……分かってるよな……?」


「ひっ……! ……分かってます……」


 耳元で囁くような声だったからリリーには聞こえていないはず。それだから良かったものの、もし聞こえていたりすれば後のケアが面倒だ。全く……突然出て来るのはやめてほしい……。


「あはは……、ゴメン! 冗談だからさ!」


 怯えて竦んでいる肩をポンと叩いて笑顔を見せる。


「それなら良かったです……ハハッ……」


 互いに引きつった笑顔で角の立たないように言葉を掛け合う。

 私は早くこの場を離れようと二人に手を振って、ザインの入れられている物置きに走った。ハシゴを滑り降りて、船の後方に物置きのドアがある。さっきから物置きと呼んでいるのは、この船にはコフィンが二機しか積めないようなスペースしか無い。それを格納庫と呼ぶのは何だか抵抗があるからだ。そんな小さな船で荒れた海を渡れなんて酷い話だ。


「……あれは……?」


 船の前方で一瞬何かが光ったように見えた。それが気のせいでは無かったのは一瞬で証明された。


「うわぁぁぁ!! ……狙撃されてる⁈」


 すぐ脇で大きな水柱が立ち、船が大きく揺られた。その衝撃で壁に勢いよく叩きつけられてしまったが問題無い。むしろ切り替えが出来てありがたいくらいだ。

 次々と水柱が上がる中、船体の側面がが開きその中からウィリス機が出撃して行った。

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