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第三十一話 次で最後

「ほらよ、あんましキツくないやつだから安心して飲んでいいぞ!」


「ありがとうございます……じゃあ、いきます……」


 俺達が中に入った時、カウンターにはトニー、アーサーが座っていた。何故か知らない奴がアーサーの隣にいるが、無視して席に着いた。

 アリシアは席に着くとすぐに手を挙げて酒を頼んだ。すると、横の二人が煽るような声を出して笑い始めた。何が面白いのか理解出来ない。


「一気に飲んじまえ〜!」


「黙れトニー。俺もいつものやつ」


「おうよ、お前のはもう準備してある」


 そう言っておっさんは背後の棚から瓶を取って、アリシアのグラスと一緒に持って来ていた氷だけ入ったグラスに注いだ。

 いつのまにかアリシアの隣に席を移していたトニーが元いた椅子にはアーサーが詰めて座っていた。コイツからは酒の匂いがしない。コイツの持っているグラスの中身はジュースか。


「アーサー。アリシアの機体の動力はもう手に入らないのか?」


 少し喉を潤して独り言を呟くような声で尋ねた。


「ん? うっ! ……げほっ! うぅっ、突然話しかけないでくれないかなぁ?」


「ジュースでむせるな。それより、どうなんだ? 手に入らないのか?」


 アーサーは何度か小さく咳をしてからこっちを向いた。


「勝手だねぇ……。ザインカナートに搭載されてるオルバナイトは変わったバグから取り出したやつだし、手に入った分は全部使ったから在庫も無いよ」


「変わったバグ、ってのはビームを出すやつだろ。それならさっきの戦闘でも落としただろ。回収しなかったのか?」


 これまでビームを撃つような個体はこれまで出くわしたことが無かったのに、アリシアがここに来てから突然現れるようになった。今回も別の戦闘域でこの型が現れ、南アメリカでも姿を見せたという報告があった。これは偶然なのか、それとも……。

 アーサーは悔しそうにグラスをテーブルに叩きつけ、腹に力の入った声で愚痴を言うような口調になった。


「アレねぇ……ホントに腹が立つよ! 一部はこっちに送ると言ったのにねぇ……あの嘘付きは昔っからどうしようもないよ。カラスなんかペットにして悪趣味な奴だよホントにねぇ」


 この話から察するに、初の手柄を取られて嫉妬した本土の研究者がアーサーを騙して回収した大型の残骸を全て持って行ってしまったようだ。


「でも、君には必要ないと思うよ? 今のままでも十分戦える。計測されてる数値も高いレベルでまとまってるしね。それでも、今以上のパフォーマンスを求めるなら、機体の操作信号伝達を改良するのが良いと思うよ」


「……あのオルバナイトが手に入らないのならばそうなるか。頼めるか?」


 この島に来てからこれまでメカニックに頼った事は無かったが、素人にはそろそろ限界かもしれない。ここまで来たのに現状に傲って死んでしまっては元も子もない。更なる強さを求めなければならない。アリシアの機体を修理している時にやたらと休憩と称してどこかへぶらついているこの男ならば、無償で作業を押し付けてしまっても構わないだろう。


「ああ、構わないよ。……でも、先にやらなきゃならない事があってね……。さっきから何度も言われてるんだけど……」


 アーサーの視線が俺の右肩の方に向けられ、何かあるのかと振り向くとアリシアが飛び込んで来た。


「そうですよ! アーサーさんにはザインに武器をいっぱいつけるっていう仕事があるんですぅ!」


 白い肌が紅潮してその表情はぼんやりとしている。何杯飲んだんだこいつは……。


「う、うん、そうなんだよね。まあ、すぐに終わるだろうからウィリスの方も数日以内には終わらせられると思うよ。彼も手伝ってくれるからね」


 そう言ってから椅子を反回転させ、隣の席に座っていた知らない奴の肩を叩いた。叩かれた奴は俯きかげんで愛想笑いをしている。

 その後に名前を言っていたような気がしたが、よく聞き取れなかった。こんな奴の名前を覚える必要も無いだろうから、聞き返す事はせずに適当に聞き流してグラスの中身も喉に流し込んだ。


「おっさん、代金はコイツらのを含めて全部でこれくらいでいいだろう?」


 アリシアを振り払って立ち上がりカウンターの向こうの色黒男に、代金として払うつもりの金額が表示された端末の画面を見せて確認する。絶対にここまでの金額には至らないだろうが、さっさとこの場を離れるためには仕方がない。


「おう、こんだけありゃあ十分だ。ってか、良いのか? こんな無駄金使ってよ」


「……この場から離れられれば多少のリスクは気にしない……」


 これにおっさんとアーサーは苦笑いしている。……隣でフラフラとしているバカは締まりのない顔で訳も分からずに気持ちの悪い顔で笑うのをやめない。

 おっさんからの許可も出たならば、ここに止まる理由も無い。端末を上着のポケットに入れて出口へと歩を進めて二、三歩、歩いた。と、言うところでアーサーが俺を呼び止めた。


「ちょっと待った! すまないね、話すのを忘れてたよ。次の任務がもう本国から出てるんだ。しかも、君とアリシアをご指名でね」

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