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第十九話 後悔?

「……離して下さい」


「ああ〜! ヤる事やったらちゃんと帰してやらぁよ!」


 スキンヘッドの男は汚く笑う。何かを待っているかの様に腕時計をチラチラ確認している。


「あなた達が何をしようとしているのか知りませんけど、ロクでもない事っていうのは分かります! ですから早く……」


「黙れぇっ!」


「うっ……!」


 口の中が切れて血の味が広がる。


「や、止めて下さい! 殴る事はな、ないじゃないですか! ……っ!」


「テメェは黙ってろ! 穀潰しの役立たずが!」


 私に手を上げた事に口を出した彼も私と同じように顔面に拳を食らってしまった。私とは違い殴られた勢いで吹っ飛ばされて、腰を強く地面にぶつけている。


「仲間じゃないんですか……」


「こいつは俺が飼ってる奴隷みたいなもんだ。……しっかし、全く何の役にも立たん。コフィンに乗れん、人を殴れん、頭も使えんと来た! 何のために生きてんだぁ? こいつはよっ!」


「ゔぅっ!」


 地面に手をついて立ち上がろうとしている所へ更に腹を蹴り上げる。彼は呻き声を上げたままうずくまってしまった。

 男はうずくまる青年に唾を吐きかけ、私に向かって歩を進める。そして、頭だけを入り口のドアへと向けて、大声を出してドアの向こうにいると思われる仲間へ何かの状況を確認している。


「うるさいです。もっと声小さく出来ないんですか」


「これからもっともっと騒がしくなるぞぉ……お前ら貴族様への恨み、お前で晴らしてヤるよ! オラッ! 入ってこい!!」


 男の号令を受けてドアが開き、そこから現れたのは数十人の男。連中の中にはは私を見ると声にならない叫び声を上げる者や、反対に顔から表情が無くなった者もいた。


「何……アレ……」


 無意識に拒否反応が出てしまう。


「貴族への恨みが奴等をああさせる。イギリス人以外は全て奴隷……そんな世界に不満のない奴なんているかよ」


「その様な事実はありません! 政府が公式に……!」


「あんなもん誰が信じるか。ほら、お前ら! もういいぜぇ!」


 合図と同時に私は腕を離されて自由となった。しかし、目の前……だけでなく、私は貴族への恨みを持つ男達に囲まれている。当然、外へ出るためのドアへと向かう事は難しい。


「来ないで下さい!」


「離せ、来るなと注文の多いこと。大人しくしろっ!」


「あなたに殴られる筋合いはありません!」


 さっき私の腕を掴んでいたチンピラが殴りかかって来たが、それをかわして肘打ちを顔面に打ち込んだ。その一撃で気を失ったようで地面に崩れ落ちた。

 これを見た他の男達は一斉に私へと襲いかかる。


 《替われ! お前じゃ無理だ!》


 そう言われてもこの状況で替わった所で何か好転するような事はないだろう。私だって何をされるか分からないというのに、手加減なんてするつもりは無い。でも……


「うぁっ! けほっ……けほっ……」


 四、五人打ち倒した後、背後からの一撃に気付いて振り返った瞬間にその拳がみぞおちへと入ってしまった。一瞬呼吸が止まり両膝を地に着いて腹を抑えて咳き込んでしまう。

 そこへ男達が我先へと集まり私の服へと手をかける。


「止めて……けほっ……」


 《……辱めは私が受ければいい。さっさと替われ……》


 何をされる……。何も分からない。分からないという恐怖と分かっている恐怖はどちらの方が大きいのかな。まあ、そんなことを考えても無駄か……。

 傷つかない為にも何も考えないようにしないと。どこか一点を見つめてこの時が過ぎるのを待っていればいい。そうだ、ドアでも見て……って、それは助けが来るのを期待してるみたいだ……。あはは……バーンとドアが開いて、そこからお兄様が颯爽と飛び込んで来て男達をなぎ倒して……。

 あああっ!! やっぱり無理! もっと悪足掻きして最後まで抵抗してやる!


「止めて! このバカッ! 誰があなた達みたいな人に屈するもんですか! ……っ⁈」


 私が抵抗を始めた事でまた室内は騒がしくなり、私を汚く罵る声が飛び交う。

 しかし、それを搔き消す爆音が轟いて騒然となる中に響く声。


「そんなだからモテないんだぜ! お前らはよっ!」

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