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第十三話 ツイテナイ?

「やあ〜〜〜! よく戻ってきたよぉ! 通信が切れた時はもう駄目かと……良かった良かった〜」


「駄目だと思った時もありましたけど、なんとか帰って来れました〜」


 格納庫に機体を跪かせ、操縦席から降りるとアーサーさんが駆けつけて声をかけてくれた。

 私の機体の横には片腕が無くなったリリーの機体も膝をついている。だが、バランスが取れないのか不恰好な姿勢だ。他にも出撃していた人が帰還していて混み合っているが、その格好のおかげですぐに見つけられた。


「あの子なら大した怪我も無く元気だよ。今は換金所にでも行ってるんじゃ無いかな」


 私の視線から察してくれたようで、口を開く前に先に教えてくれた。それを聞いた安心感で頰が緩んだ。


「あはは……。じゃあ私も行ってきますね。あ……その前にメンテしないと」


 次いつ出撃する事になるかなんて分からない。せっかく敵を見つけても駆けつけられない、なんて事をしていては帰る日が遠のいて行くばかりだ。


「ああ、それなら僕がやっとくよ。一日に色々あって疲れたろ? 君はもう休んできたらいい」


「えっ……? そんな、迷惑じゃないですか?」


 私の問いに青年は爽やかに笑って答えた。


「ハハッ! 全然迷惑じゃないよ。僕は君に興味があるから来たんだよ?」


「はぁ……そうなんですか……」


 理由は分からないけど、凄く興味を持たれているみたいです。


「うんうん。ま、ここのメカマンは仕事探しに躍起になってるから、いざとなれば人手には困らないさ。ほら〜、行った行った」


 私は背中を押されてそのまま格納庫から押し出された。


 ————


 パイロットスーツは結構分厚い。さっきの戦闘時のコックピットの気温四十℃、暑い。そして、ここは赤道近くの人工島、暑い。

 という事で換金所に向かう前にシャワーを浴びに更衣室へやって来ました。


「誰もいない……貸切じゃん〜!」


 なぜか貸切となるとウキウキするというか、楽しくなるというか。テンションが上がるのは確かだね。


 《大浴場じゃねぇから泳げねぇんだよなぁ》


「わっ! 出たぁ⁈」


 《なんだよ! ゴーストじゃねぇぞ!》


 私からすればゴーストもあなたも変わらないよ……。


 《一緒にすんな。また乗っ取るぞ 》


「はいはい……ごめんね。……そういえばあなたの事なんて呼べばいいかな?」


 ロッカーは全て空いている。一番シャワールームに近い場所のドアを開けて中のハンガーを取り出す。


 《ああ? 好きにしろよ》


「えぇ〜、私が決めて気に入らないとか言わないでよ〜?」


 《そんなの無視するだけだ》


 ハンガーで上着をロッカーに吊るして今度はズボンを吊るすためにもう一つハンガーを取り出した。


「じゃあ決めてよぉ〜」


 シャツを脱いで身につけているのはもう下着だけだ。脱いだシャツは後で捨てるからロッカーの上に乗せた。


 《はぁ? ……また後だ、そんなの》


「はいはい、決めといてね〜……あ、タオルとインナーお金取るの⁉︎ 外じゃタダなのにぃ〜」


 更衣室の隅に置かれた自販機にはでかでかと「叩くな」と書かれた張り紙が貼られている。ここに来るまではタダだったんだし文句言いたくなるよね。


 《いいだろ、そんな端金。さっきガッポリ稼いだんだ》


「う〜ん……仕方無いよね……同じの着たくないし……」


 諦めてコインを投入しようとズボンのポケットに手を突っ込む。しかし、そこには何も入っていない。次は上着のポケットも探ってみた。だが、入っているのはネックレスだけでやっぱり他には何も入っていない。


「そうだ……換金所、まだ行ってなかったんだ……」


 あああああ!!! どうしよ! どうしよ⁉︎ 同じの着るなんてやだよ〜!


 《同じの着ろ》


「やだ!」


 《何で》


「汚いじゃん! しかも今日はコケたり、唾かけられたり、お酒かけられたりしたから絶対やだ! 上着も後でクリーニングに出すつもりだし……あぁぁぁ……」


 どうしよう……。椅子に座り込み頭を抱える。

 あのシャツを着て換金所に行くのはヤだし……。上着だけで……って! そんなの変態だよ!


「はぁぁ……どうすればいいの……」


 その後もしばらく時間を忘れて考え込んでいた。

 すると、背中に突然こそばゆい感じがして振り返ってみると、頬に絆創膏を貼った可愛い顔が目に入る。黒髪だ……そういえばエリカ以外に黒髪の子っていたっけ……? こんなどうでもいい事を考えてぽけ〜っとしていると、不思議そうな顔で一言。


「何してるの……? さっきから……」


「えっ……聞いてた?」


「うん……見てたよ……初めから……」

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