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第十二話 壊す喜び

 《お前に任せてたらぁ! 命がぁ! 幾つぅ! あっても足りねぇなぁぁっ!!」


 もう少しでこの世界から消える筈だった。

 しかし、消えたのは虫達。数百に刻まれる、頭が弾け飛んだ、ひたすら殴打された……その他も執拗に、必要以上に、残酷に、殺されている。

 コレを形にしたのは私の体。なのに動かしているのは私ではない。両手両足、指の先まで全て私以外の何物かに操られている。その動きは普段の私とは全く違いかなり激しい。だが、そこには荒々しさだけでなく、私には無い動きの緻密さも同居している。


「重い……いらねぇモンぶら下げやがって……。帰ったら切っちまえば良いのに」


 《ダメっ! 私の体返してよ!》


「危ない所助けられといてそれかよ。偶には遊ばせろよっと……!」


 私の右手はパネルを操作し始めた。


 《ちょっと! そんなことしちゃダメだってば!》


「はっ! こんなオモチャ設定誰が認めるか……リミッター解除完了っ! 骨の何本かは覚悟しとけ!」


 あぁ……もうっ! 私の体なのに……もどかしい!


「ハハハッ! 増えてるじゃねぇか!」


 確かに増えていた。中型は小型を生み出すことができる。どちらも際限無く増えていて、特に小型は卵の殻で海の底が埋め尽くす程だ。

 しかし、増えた所で今の私……? には遊び相手が増えたという感覚なのだろうか……? 楽しそうな声で荒々しく笑い、手の届く所から次々と殺している。

 しかし、それは手にしていた短刀が折れた事で遮られた。


「あ〜あぁぁ! 得物なんかに頼るからこうなるんだよ……」


 《んっ……なら素手でやればいいじゃん》


「出来たらやってら……コレでいいか……」


 私は最後の近接武器を見つけた。早速それを選ぶと、両腕の手首から五十㎝くらいで先の尖った刃が突き出し白く光る。


 《私それ嫌い……》


「ま、悪くは無いって感じか……駄目だけどな。次は私好みのヤツも付けてくれよっ!」


 《そんな事言ってるけど楽しそうだね》


 この会話の内に何体のバグが斬り刻まれたのだろう。どんどん次がやって来るから正確に数えるのも難しい。帰ったら確認しないとね。


「ハッ! これでラストかぁ⁈」


 最後の一体を相手に左腕を縦に振り下ろし真っ二つに断ち切った。

 もう周囲に小型はいない。後は少し離れた所で私を消し飛ばす為に巨大なビーム砲を発射しようとしている(中型)だけ。


「あ、良い事思いついたぁ〜。ふっふふ〜ん」


 そう呟いたと同時に静止していた機体は体が潰れるのではないかと思うほどのスピードで敵へと向かっていく。


 《そんなにスピード出したら!》


「良いだろ! イラねぇもんがへっこむだけだぁぁぁ!!」


 本当はそれどころじゃ済まない。さっき骨の数本は覚悟しろと言った口が一番分かってる。それに、もし折れた時に痛みを感じるのは体を乗っ取っている彼女だ。あ、でも元に戻ったら私が痛いんだ……。

 腹に作られた巨大なビーム砲以外にも小さな砲身が何本も生えていてこちらを狙い撃ってくる。相手も必死なのだろう。さっき私に対して撃っていた時よりも密度が濃い。


 《バグが……怖がってるの……?》


 バグに感情があるなんて聞いた事が無い。しかし、目の前の状況からはそうとしか考えられない。


「これじゃあ落ちねぇなぁ〜!」


 その言葉通りビームを躱す動きには余裕を感じる。余裕が無いのは私の体の方だろう。一つ躱す度に骨が軋んでいる音が響く。いつどこの骨が折れても不思議では無い。


 《大きいの来るよ!》


 腹の巨大な砲身の先が眩しいくらい赤く光った次の瞬間。その光が私達の目の前まで伸びる。

 人が視覚で捉えて反応できるのか怪しいくらいのスピード。私なら確実に当たっていたはず。

 それを彼女は勘でも運でもない反応だけで無傷で回避してみせた。


「もう奴に手札(オモチャ)はねぇな。ハハァッ! 頭掻っ捌いてやらぁ!」


 最後の一撃を左にロールして躱した事で機体の勢いは死なず、更に加速して頭へと向かって突っ込んむ。


 《掻っ捌くって……!》


「まあ見とけ。見たことねぇモンが見られるぞ……」


 触手や腕が届く範囲に近付くと当然抵抗を受けたが、弾丸と化した機体にぶつかると弾け飛んでいった。

 頭へ取り付く前に両目を潰し自由に動く事ができないようにし、ついでに触覚を引きちぎり海へと放り捨てる。甲高い奇声が耳に刺さるが、そんな事は意に介さず頭に刃を突き刺した。

 中から緑の体液が噴き出しカメラにかかる。それでも解剖する手を止めずに得体の知れない器官を掴み出し、一つ一つをレコーダーへと収めていく。

 いつの間にか奇声は聞こえなくなっていた。多分もう死んでいるのだろう。なのにまだこの巨体は宙に浮いている。


 《……もう止めなよ……。吐きそう……》


「今は吐けねぇから安心しろ。ま、確かにそろそろ飽きたしな。最後は吹っ飛ばして…………んっ?」


 頭の中の器官はほとんど探り尽くしたはずだったが、まだ奥の方に光る物が埋まっていた。右腕を深く突っ込み掴んで引き抜いてみると握られていたのは赤い塊。


 《オルバ……》


「……ナイトか? これ……。ふーん、じゃあ帰るか」


 私は空いている左手でバズーカを手に取り。足元()へと撃ち込んだ。


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