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第十一話 体の中?

 赤い光が過去の私を貫く。しかし、今の私はその僅か前に生きている。少しでも動きを止めれば今の私も過去になってしまう。


「何とか取り付ければ良いんだけど……っ!」


 中型はかなりの巨体であり、接近することができれば小回りの効かない相手を手玉にとる事もできるはず。

 ただ、そのためには無数に増えた突起物から放たれる……ビーム? の雨を掻い潜り、更にこちらも無数に生えてくる触手を……あれ? これって私の方が手玉に取られそうな気が……。


「ううぅぅー!! もう突っ込めぇぇぇ!!」


 考えてるだけじゃ始まらない。それにこのまま膠着状態が続けばいつかは推進剤が底をつき浮いているだけの的になってしまう。

 敵から見ると動きが線から点へと変わって一点に攻撃を集中すればよくなり、私は不利になったように思えるかもしれない。でも、逆に私からはどこに攻撃が来るのか大体の予測がつくという事になる。もしそうならずに散らされたなら私としてはその方が接近が楽になる。言ってしまえばどっちでもいいんだよね。


 《そうだぁぁ!! やっちまえぇぇ!!》


 と、声さんもノリノリです。……その口調なんとかならないのかなぁ……。


 《ならねぇよ。ほら、右》


「うぇぇ⁈ わぁっ!」


 会話できるの⁈ 最近新しい事がどんどん出てきて追いつけないよ……。歳かな?

 驚いて反応が遅れたけど声さんに言われた通りにビームを躱し、どんどん距離を詰めて行く。

 遠くから見ていても気持ち悪いと感じた外見は、近くで見るとより気持ち悪さが増す。黒光りしている外骨格、ブツブツしている眼、それに足の関節とか本当にダメ。よりによって中型はそれを強調するかの様に前脚二本が発達していて、コフィンを鷲掴みに出来る程大きい。もしそうなったらと考えるとゾッとする……。

 そういえばジョシュアって虫が好きだったっけ……コレも好きなのかな……? 無い……よね、それは。


「後は脆い所を狙って……叩っ斬るっ!」


 弱点は関節、腹、背中。眼を狙うのも良いかもしれないけど、正面から近付くと腕に捕まる可能性もある。ここは眼以外を狙わないと。

 接近した事でビームの量は減ったが、今度は私を貫こうと無数に伸びて来る触手を相手にしなければいけない。襲い来る触手に対してソードを振り回し迎撃をしながらまずは下へと潜り込もうと試みる。

 しかし、想像以上の触手の数とその素早い動きに阻まれて思うようには動けない。じわじわと下から押し出され、中型の上方へとずらされていく。


「もう背中を狙うしかないっ!」


 思いっきり推進ペダルを踏み込んで速度全開で突っ込む。一度、中型の背中全体が見えるくらいの位置まで上昇した。今のスピードに落下の勢いを重ねるためだ。十m程の距離でも十分な威力になるはず。


「っ! ビーム⁉︎」


 もう止まれないという状況で突然羽の下から突き出してきた突起物。これはさっきまで飽きるほど見ていた物の一つ。それが十か二十かもう数が分からない程密集している。その先端は赤く染まり瞬きする間に撃ち抜かれてしまうだろう。


 《捨てろ!》


「うっ……!」


 左腕にはシールドとして鉄の板と大差無い物がぶら下がってはいるが、本当に薄っぺらくてビームの一撃も防げないだろう。

 それが分かっていたからこの声は「手にしているソード」を盾として使い身を守るという指示を出した。もっと伝わりやすい言葉で言ってもらいたいよ……。

 勢いは死んでしまったが、もう弱点の背中とそれを覆う羽は手の届く距離にある。さっきの一撃のような攻撃は連続では無理なようで、束になっている砲身は煙を上げて次弾が発射されるような気配は無い。

 その隙にカタをつけようと左右の腰からダガーを抜き出し、突き刺そうと振りかぶった。


「よしっ!」


 羽は振り下ろされた二本の刃に斬り裂かれ、飛ぶ術を失った巨体は海に落ちて……。


「わっ……そんな所に……」


 羽の向こうにはさっきまで戦っていた小型が複数隠れていた。さらに、中型は海に落ちるどころか、さっきと全く高度が変わっていない。

 そして、その驚きをスルーしなければ今の状況を切り抜ける事は……。


(あ……無理かも)


 声に出す間も無い。一瞬で察して自分の中で言葉になる。生きなければならないのに頭ではこの状況を理解して、この後の結果を導き出していた。声に出したとしてもそれを聞く人はいないし、聞いたとしても何か出来るわけでもない。あー、一人と言っていいのか分からないけど聞こえてる人いたね……何もできないだろうけど……。


 《誰が何もできねぇだ? お前どんクセェんだよ。代われ!》


 その瞬間私は体の中に引きずり込まれた。

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