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第3話_OH エド捕物帖オウジサマン!(1)

 夜の街に警備隊の声が鳴り響く。

「そっちだ、そっちに逃げだぞ!」

 月華の薔薇が屋根から屋根へと飛び移る。

 それは真っ赤なドレスを着た影だった。

 風に靡く真紅の髪、咲き誇る薔薇のドレス、夜行蝶のようなマスク。その姿はマスカレードの華だった。

 王都アステアを賑わす革命家にして怪盗、救世主にして犯罪者、その名は薔薇仮面。

 自らその名を名乗ったことはない。あくまで薔薇仮面の名は新聞社などが付けた名前であり、その素性は一切不明とされている。

 路地から屋根を飛ぶ薔薇仮面に向けて銃弾が発砲された。

 夜を舞う優雅な蝶は手を翳したに過ぎない。それだけで全ての銃弾は地面に落ちてしまった。

 薔薇仮面は類稀なる魔導の使い手と称されていた。全ての攻撃は薔薇仮面を前にして屈するほかない。

「クソッ、そこから降りて来い!」

 警官隊の一人が怒鳴った。

 それを屋根から見下ろす薔薇仮面の口元が、微かな嘲笑を浮かべた。

 刹那、辺りは昼よりも明るい閃光に包まれ――薔薇仮面は姿を消した。

「見失うな、すぐに追え!」

「クソッ、なにも見えないぞ!」

 次々とあがる男たちの怒声。

 その声を一本先の路地で耳にしていたユーリ。

「なに今の光?(なんか男の声も聞こえたような気がしたし……?)」

 バイト帰りのユーリちゃんは、仮住まいにしている魔導学院の宿舎に向かっている途中だった。

「はぁ」

 ため息を落とすユーリ。

「早く次のバイト探さなきゃなぁ」

 初日からクビでした!

 しかも、トラブルを起こして追い出されたのでバイト代すら貰えなかった。

「(普段だったら絶対に訴訟に持ち込んでやるのに悔しい。そもそもアタシは人の上に立つことはあっても、人の下で働くなんて向いてないのよね)」

 今のユーリには訴訟を起こすお金すらなかった。

 それでもなんとか生きてます!

 食事は相変わらず誰かのおごりで、服はルーファスから慰謝料として買ってもらったが、それでも二日分のローテーションしかない。ルーファスも月明けの二日目にならないと、親からの仕送りが振り込まれないらしい。

「(嗚呼、お兄様……ユーリは今日もハングリー精神を鍛えています。でもできればお金と権力を取り戻したいです)」

 ユーリはまん丸のお月様に祈りを捧げた。

「空からお金とか降って来ないかなぁ……あっ」

 降って来た。

 ただそれはお金ではなく人だった。

 淡く輝く月に映る真紅の影。

「嗚呼、美しい……」

 ユーリが真紅の人影に見とれていた次の瞬間――。

「ブハッ!」

 顔面キック!

 空から舞い降りた薔薇仮面の足の裏を、上を向いていたユーリの顔面がナイスキャッチ。見事に踏みつけられた。

 鼻血を噴きながらその場に昏倒するユーリ。

 軽やかに走り去っていく薔薇仮面。

 すぐに薔薇仮面を追ってきた警備隊がこの場に現れた。

「薔薇仮面はどこ行った」

「おい、ここに誰か倒れてるぞ?」

 警備隊が輪を作って気絶しているユーリを囲んだ。

「怪しいやつだな。とりあえず連行してぶち込んでおけ」

 こうしてユーリは無実の罪でパクられてしまったのだった。

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