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第2話_ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ(11)

 『変な人』の情報は途絶えてしまった。

 そんなガックリ肩を落とすルーファスの元に、クラウス魔導学院近くのカフェで大騒ぎがあったと耳に入ってきた。

 どーやらその騒ぎの元凶が空色ドレスの電波系魔導士だと聞いて、さらにルーファスは現場に急いだ。

 その途中で、見覚えのある顔二人と出くわした。

「どうしたのユーリその格好」

 ルーファスは眼を丸くしてユーリを見た。

 ユーリの格好は胸に上着をグルグル巻いている斬新なスタイル。まるでさらしか水着でも着ているような格好だ。

「ローゼンクロイツ様の愛の鞭に巻き込まれて、服がボロボロになってしまったんです(あんまり動くと胸がズレそうで怖い)」

 お前はズラを気にするオッサンかっ!

 あともう一つ、ユーリには切実な問題があった。

「ルーファス……」

「なに?」

「……服を買うお金を貸してください(金は貸しても借りるながオーデンブルグ家の家訓なのに!)」

 人からお金を借りることはオーデンブルグ家の者として恥だった。

 恥辱だ、屈辱だ、辱めだっ!

 ルーファスは首を傾げる。

「はい?」

「アタシ、これしか服を持っていないんです(服がないと明日から生活できない)」

「えっ?(……だから毎日同じ服を着てたのか)」

 ビビが話に割り込んでくる。

「あたしの貸してあげるよぉ……あっ、でもユーリちゃんのほうがちょっぴり胸大きいかもあたしより」

 ビビは自分の薄っぺらな胸とユーリの胸(偽造)を見比べた。

 慌ててユーリは取り直す。

「だ、大丈夫ですよ、胸なんてどーとでもなりますから(元からないもんね!)。ビビちゃんに服を貸してもらえるなんて光栄です、返すときはリボンをつけて返しますね!」

「リボンはいらないけどぉ。返すのはいつでもいいよ♪」

「ありがとうございますぅ!(ビビちゃんの服……嗚呼、幸せ)」

 貸してもらったらコッソリ臭いを嗅ぎそうな顔をしている。

 じとーっとした目でビビは誰かさんに目をやった。

「ユーリちゃんもいろいろ苦労してるんだね、誰かさんのせいで」

「……そうですね、私が全部悪いんですよね。僕がユーリを召喚したんだもんね、そうそう僕が悪いんだよ……どーせ僕には魔導の才能なんてないし、召喚術なんてした僕が悪いんだよね」

 いじけたルーファスはしゃがみこんで、地面にらくがきを描きはじめた。

 ビビが呆れたようにため息を吐いた。

「ルーちゃんはなにも悪くないから平気だよ、元気だして♪」

「嗚呼、生まれてきてごめんなさい。そんなこと言って生んでくれたお母さんごめんさい。もう僕なんか生きてる価値もないね……あは……あはは」

「ルーちゃんがあたしのこと召喚してくれたから、こうやって出逢えたんだよ。あたしはルーちゃんに逢えて本当に幸せなの……だから元気だして、ね?」

 ビビちゃんの言葉を聞いてユーリちゃんなんだか嫉妬。

「別に落ち込んでるヤツなんか励ます必要なんてないんです。この世は強い者だけが生き残るんですから」

 吐き捨てたユーリの前に怒った顔をしたビビが立った。

「ユーリちゃんなんか大ッ嫌い!」

 バシーン!

 強烈なビビのビンタがユーリの頬を叩いた。

 無言で立ち尽くすユーリ。自分になにが起きたのか理解できなかった。

 そして、走り去っていくビビの後姿。

 時間差攻撃でユーリにショックが訪れた。

「ビビちゃんにフラれたぁ〜っ。服も貸してもらえな〜い……絶望だ」

 ユーリは両手両足を地面に付いた。横ではルーファスもへこんでいる。

 立ち直るのはユーリのほうが早かった。横にいるルーファスを見てアレのことを思い出したのだ。

「立てルーファス!」

 キレた眼をしながらユーリはルーファスの胸倉を掴んで立たせた。

「ご、ごめんなさいユーリさん。僕が全部悪いんです、僕が生きてるから世界から戦争がなくならないんです!」

「そんなことでーでもいいの!」

 キャラを作るのも忘れてユーリはルーファスにガンを飛ばした。

「カーシャから預かってるもんがあるでしょ、早く出さないとヌッコロス!」

「え、ああああ、あーっと、なんですか?(怖い、このユーリ怖い、いつものユーリと違うよぉ〜)」

「ほ・れ・ぐ・す・り!!」

 ユーリの手がルーファスの首を絞めた。

「うっ……苦しい……言うから……このままじゃ言えないから……手を……(殺される、僕はここで殺される!)」

「ったく」

 ユーリはルーファスの首から手を離した。

 ルーファスの首にできた青痣がちょっぴり痛々しいです♪

「げほっ、げほっ(死にかけた、花畑が見えた)」

「早く言えよ」

「えーっとですね……カーシャから惚れ薬を預かって……それから(怖い、僕を見る眼が怖すぎる)」

「預かって?」

「学院のロッカーに入れっぱなしだったり……あはははは♪」

「ぶちまけろ!」

 強烈なパーンチ!

 ユーリのパンチを顔面で受けたルーファスは、宣言どおり鼻血をぶちまけて気絶した。

 さよならルーファス、お元気で!

 地面に倒れたルーファスからユーリはサイフを奪おうとした。サイフはビビが持ってるなんてすっかり忘却の彼方だったりする。

「服のお金は慰謝料としてもらっておくからね!」

 だが、やっぱりサイフはない。

 代わりにユーリはある物を見つけた。

「これって……セバスちゃんのロケット(やっぱりこっちに来てたんだ)」

 それは執事のセバスがいつも大事に持っている、ハート型のロケットペンダントだった。

「アタシの写真?」

 ロケットを開けると笑顔で写っているユーリの写真が入っていた。


 一方そのころ――。

『変な男』こと執事のセバスは、地下水道でスライムの大群と追いかけっこしていた。

「何処ダヨ此処!」

 完全に迷子だった。

 スライムが黒子の顔に張り付いた。

「前ガ見エネェーゾ、コンチキショー!」

 実際に見えないのはパペットではなく、黒子だったりする。

「……あっ」

 どこからか素の声が漏れた。

 次の瞬間、足を滑られた黒子が下水道に流されたっ!

「ギャ〜ッ!」

 さよならセバスちゃん♪

 いつになったらセバスはご主人様と出会えるのでしょうか?

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