表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/35

第2話_ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ(8)

 見事に逃げ遅れました!

 カフェのシャッターが下ろされ、出入り口も完全にロックされた。この中は牢獄も同じだ。

 どっか〜ん!

 店内で爆発が置き、テーブルがユーリの足元に落ちてきた。

「あはは、笑えませんね。まさかローゼンクロイツ様の〈猫還り〉がこれほどの破壊力だったなんて……」

 ユーリは物陰に潜みながらチラッとローゼンクロイツのようすを伺った。

 電波を受信してるように、ローゼンクロイツはふあふあしている。

 その頭にはネコミミが生えていた!

 さらに尻尾も生えていた!

 オプションで猫ヒゲまで生えている

 ローゼンクロイツを知る者ならば知らない者はいない。発作的に起こるトランス状態〈猫還り〉だ。

 ウワサによると、ローゼンクロイツの先祖には獣人がいたらしく、クシャミをきっかけにその血が覚醒してしまうらしいのだ。と、ファンサイトには書き込まれている。

 ビビはユーリの腕に抱きついた。

「早く逃げよぉよ(このお店、出入り禁止になっちゃうかなぁ)」

「逃げると言っても、ローゼンクロイツ様と一緒に隔離されてしまいましたから(嗚呼、ビビちゃんと急接近。このまま抱き付かれたままなのも幸せかも。それに心理的に緊迫するような危機的な状況って、男女の間で恋が芽生えやすいって言うし)」

 切り抜けられる危機ならいいが、そう簡単にはいきそうもなかった。愛に試練は付きものなのです!

 あ〜れ〜♪

 っと、武装した店員がユーリたちの足元に降ってきた。

 メルティラヴは生徒が主な客層だ。しかも、この都市でもっとも変わり者が集まるクラウス魔導学院の生徒。多少のキケンも覚悟して営業している。

 というわけで、対魔導武装をした店員が常に待機していたり、危険が店の外に及ばないように店内を封鎖するシステムがあったりするのだ。

 これはウワサなのだが、ここの資本金を出しているのはクラウス魔導学院の学院長らしい。そんなわけなので、雇っている武装店員もハンパない魔導士のハズなのだが……。

 あ〜れ〜♪

 今日は晴れ時々人間が降るみたいですね!

 二人待機していた武装店員があっさりとやられてしまった。

 他の客はとっくに店の外へ避難している。

 見事にユーリとビビは逃げ遅れました!

 しかも最後の砦だった武装店員も気絶してしまっている。

 ついでに出口も塞がれている。

 絶体絶命ですね!

 ユーリはまたチラッとようすを伺った。

「今回のびっくりどっきり魔法が〈ねこしゃん大行進〉ではなくて不幸中の幸いでしたね」

「あたしあんなの見たのはじめてだよぉ?(〈ねこしゃん大行進〉しか巻き込まれたことないもん)」

 〈ねこしゃん大行進〉とは〈猫還り〉時のローゼンクロイツの必殺技である。他にも〈しっぽふにふに〉や〈猫電波〉などがある。

 そして、今回のびっくりどっきり魔法の説明はユーリからどうぞ!

「あの魔法はマイラ系魔導の具現化系に属していて、その名も〈ドリームにゃんこ〉です。ほら、そこに浮いているねこしゃん型風船に少しでも触れると、夢の中に引きずり込まれてムフフのあまり爆発するというものらしいです(体験者の証言が少なくてもムフフの部分に謎が多いんですけど)」

 ローゼンクロイツを守るようにネコ風船がいくつか浮いている。

 武装店員がやられているようすを思い出すと、ローゼンクロイツに近づこうとした武装店員にネコ風船が襲い掛かり、急に武装店員が鼻血ブーしたと思ったら爆発が起きた。

 そこで気絶している武装店員は幸せそうな顔をしている。

 いったい『ムフフ』の部分には何が隠されているのか

 今はローゼンクロイツから離れていれば問題ないが、いつ状況が変わってユーリたちに危険が及ぶとも限らない。

 ユーリはどうしようか悩んだ。

「(このままビビちゃんと二人っきりっていうのもいいけど、華麗に活躍して恋愛経験値を上げるのもいいかな)ビビちゃん大丈夫?」

「できれば早く逃げたいでぅース……にゃはは、いつになったらローゼンのトランス解けるんだろ」

「何かトランスを解除する方法はないんですか?(これに関してはどこにも載ってなかった)」

「あたしに聞かれてもわかんないよぉ。ルーちゃんだって知らないみたいだし、気絶させるか、放置してローゼンが疲れて寝るのを待つか、いっそのこと殺っちゃうとか♪」

 ニッコリ笑顔で殺っちゃうよぉ!

 ビビはいつの間にか愛用の大鎌デスサイズを持っていた。

 デスサイズを見たユーリはちょっぴり萌え。

「あの……その大きな鎌はなんでしょうか?」

「あれっ、言ってなかったっけ。あたしデス系魔族だから、魂を狩って糧にできるの」

「カッコイイですビビちゃん!(大鎌が似合いすぎ♪)」

「いやぁん、褒められると照れちゃうよぉ」

 ビビは顔を少し桜色に染めて、体をモジモジさせた。

 ヤル気満々のビビちゃんだけど、本当に殺っちゃうとユーリが困ってしまう。崇拝するカミサマが殺されるのは困る。

 こうなったら自ら立ち上がるしかなかった!

「アタシがローゼンクロイツ様を止めてみせます!(うまくいけばビビちゃんとローゼンクロイツ様の高感度がダブルアップするかも)」

 ――というわけで、ユーリは気絶している武装店員に〈他力本願〉を使おうとした。

 やっぱり他人任せかっ!

 が、そんなユーリとネコ風船の目が合った。

 思わず固まるユーリ。

「ヤバッ!」

 にゃ〜んと鳴いたネコ風船とユーリが顔面衝突。またの名を熱いキス!

 次の瞬間、ユーリの意識がフッと抜けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ