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第2話_ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ(6)

 どーとでもなれ!

 そんな感じでユーリはローゼンクロイツと一緒にルーファス探し。

 ローゼンクロイツは迷いなくドンドン先を歩いていく。その迷いのない歩き方が逆に不安だ。

「あのぉ、本当にルーファスはこっちにいるのでしょうか?(いっそのこと、このままローゼンクロイツ様とデートでもいいけど)」

「いるよ、ボクの髪の毛が反応しているだろう?(ふにふに)」

「髪の毛ですか?」

 ユーリはローゼンクロイツの髪の毛をマジマジと見つめた。空色のキレイな髪、キューティクルも完璧だ。なのに、なのに……一本だけピョンと出たアホ毛。

 アホ毛はまるで触覚のように動き、ローゼンクロイツはそれの示す方向に合わせて歩いているようだった。

 鬼○郎かっ!

 ユーリがそのアホ毛に触れようとすると、パシッとローゼンクロイツに叩かれた。

「めっ(ふーっ)」

「あ、ごめんなさいローゼンクロイツ様。でも……どうなってるんですかコレ?(針金でも入ってるのかなぁ)」

「ルーファスが発している体内マナを探知してるんだよ(ふにふに)」

「そうなのですか、驚きです!(この情報はどこにも載ってなかったハズ。薔薇十字団の掲示板に書き込まなきゃ)」

 薔薇十字団とはローゼンクロイツのファンクラブである。

 宇宙からの大いなる意思を受信するように、ローゼンクロイツはフラフラ歩き続けた。

 しばらく歩き続けたところで、ピタッとローゼンクロイツは足を止めた。

「ここから強い反応を感じる(ふあふあ)」

 そこはメルティラヴの前だった。

 導かれるように店内に入っていくローゼンクロイツ。急いでユーリもあとを追った。

 店内はお客さんでいっぱいだ。平日は学生ばっかりだが、休日は休日で込んでいる店内。チョコレート系のスイーツが絶品だという。

 ユーリが店内を見渡していると、目が合ったピンクのツインテールがパッとテーブルの下に姿を隠した。

 ビビはテーブルの下に隠れながらザッハトルテを頬張っていた。

「(なんであの子がいるの……しかもローゼンまでいたような気がするし)」

「こんにちわぁ、ビビちゃん♪」

 名前を呼ばれてビクっとしたビビが顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべるユーリがいた。

「にゃはは、ちわーっス!(……もう見つかったし)」

 苦笑いを浮かべながらビビはよいしょっと這い上がってイスに座った。

 ビビとユーリのはじめての出遭い。いきなり愛の告白をされて以来、ビビはユーリをちょっぴり苦手に思っていた。

「ボクもいるよ(ふあふあ)」

 すでにローゼンクロイツは勝手にテーブルの上のスイーツを食べていた。

「あーそれあたしが注文したやつだよぉ!」

「また注文すればいいよ(ふにふに)」

 テーブルの上に山のように並べられていたスイーツが……ないっ!

 ペロッと口の端についてチョコを舐めたローゼンクロイツ。

 食ったのか?

 全部、食ったのか?

 全部、お前が食ったのか

 ビビは頬を膨らませた。

「もぉ、なんでもう全部ないわけ(いつも思うけどローゼンの胃ってどうなってるの?)」

「だからまた注文すればいいだろう(ふにふに)」

「ふん、別にいいけど……ぜ〜んぶルーちゃんのおごりだから」

 二人がそんなやり取りをしている横で、ちゃっかりユーリはローゼンクロイツに食べられる前にひと皿確保していた。

「あ、これルーファスのおごりだったんですか。ならどんどん注文しちゃいましょうよ(今日はこれで夕飯も浮かせなきゃ……あはは、早くバイト探さなきゃ死ねる)」

 ここ数日、ユーリは誰かにおごってもらって飢えをしのいでいた。ちなみに気替えの服もないので、洗っている最中はすっぽんぽんで、速攻で乾かして毎日同じ服を着ている。

 そんなこんなで三人はいつの間にか団らん。

 周りから見たらスイーツを食べながらおしゃべりする三人の女の子。しかもレベルが高い可愛らしさだ。

 でも、ユーリちゃん実は男の子。

 ローゼンクロイツも女装っ子。

 正真正銘の女の子はビビだけだった。

 ユーリはチョコロールを幸せそうに食べている。

「嗚呼、美味しい……お兄様にも食べさてあげたい」

「ユーリちゃんって兄弟いるの?」

 ビビが尋ねるとユーリはにこやかに頷いた。

「はい、優しくてちょーカッコイイ兄が一人います」

 もう一人の兄の話はスルー。ちなみに『ちょーカッコイイ』はユーリの妄想。ユーリはお兄様の顔を覚えていない。

「へぇ、いいなぁ。あたし一人っ子だから兄弟とか憧れちゃう」

「(あはは、クソ兄貴は死ねと思うけど)でも、一人っ子もいいじゃないですか。財産分与とかもめなくて済みそうですし」

「ざ、財産分与?(ユーリちゃんち複雑な家庭事情とかあるのかなぁ。うちのけっこう複雑だけどぉ)」

「虎視眈眈と財産を狙ってるヤツが多くて……隠し子がいないとも言い切れないし。そうなってくるとアタシ専属の弁護士を雇わないといけなくなってくるし……(最悪、殺し屋を雇って暗殺かな)」

 怖いです、発想が怖いです。

 さらっと殺人宣言です♪

 できれば殺人犯になる前に弁護士を雇いましょう。

 イチゴショートのイチゴを食べていたビビがローゼンクロイツに顔を向けた。

「そう言えばローゼンって弁護士じゃなかった?」

「うん、資格持ってるよ(ふにふに)」

 マジですか!

 ユーリも驚いて身を乗り出した。

「本当ですか、今まで何勝何敗ですか、基本料金はいくらですか!」

「まだ一度も負けたことないよ、法廷に立ったことないから(ふあふあ)」

「えっ?」

「こないだ資格取ったばかり(ふあふあ)」

「それでもいいです、雇います!(理由はわからないけど負ける気がしない!)」

 そんな会話もしつつさらにスイーツを食いまくる三人。

 さーってと、そろそろお腹いっぱいなったところでビビが席を立つ。

「そろそろ帰ろっか、あたしお腹いっぱいだしぃ」

 ユーリもお腹を擦っている。

「アタシもいっぱいです」

 一人ケロッとした顔をしているローゼンクロイツ。

「ボクはまだまだ(ふあふあ)」

 ローゼンクロイツの胃は底なしだった。軽く二人の五倍は食べている。

 お会計を済ませようとレジに向かった三人。支払いはもちろんルーファスのサイフから。

 レジスターから伸びるなが〜いレシート。

 それを見ていたビビの顔色が曇りはじめる。

「(た、足りるかなぁ)」

 お財布と睨めっこをしているビビに店員から料金が告げられる。

「五千三百四十二ラウルになります」

「ええっと……(きゃは、足りない♪)」

 困った顔をしてビビは二人に助けを求めた。

「ユーリちゃんいくらもってる?」

「えっ、アタシは持ち合わせはありませんけど」

「ローゼンはいくらもってるっていうか、ローゼンは食べ過ぎなんだから自分で払ってよね」

「わかってるよ(ふあふあ)」

 よかった食い逃げにならなくて済みそうだ。

 クレジットカードを出したローゼンクロイツの動きがピタッと止まる。

 ムズムズとローゼンクロイツの身体を走る悪寒。

「は、は……はくしゅん!(にゃー!)」

 ローゼンクロイツのクシャミが店内に鳴り響いた。

 叫ぶビビ。

「みんな逃げて!」

 店員が急いで緊急ボタンを押し、店内に鳴り響くサイレン!

 そして、ローゼンクロイツに起こる異変。

「にゃ〜!」

 い、いったいローゼンクロイツの身に何が起ころうとしているのかっ!

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