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第2話_ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ(4)

 勢いに任せてルーファスの家を飛び出したユーリだったが……手がかりゼロ!

「(嗚呼、お兄様、こんなときはどうしたらいいのでしょうか。そうですね、やっぱり近隣の下々の者どもに事情聴取をしたらいいのですよね)」

 そんなわけでユーリちゃんは聞き込み開始。すぐに有力な情報が返ってきた。

「へっぽこだったら変な男を追いかけて行ったぞ」

 以上、近所のフリーター二五歳の証言でした。

 『変な男』を追ったルーファスを追うユーリ。そんな構図が出来上がったところで、ユーリの元へ『変な男』の情報が次々と入ってきた。

 ルーファスよりも『変な男』のインパクトがあったらしく、行く先々で『変な男』の情報が入ってくる。

「パーティーのときに着るようなスーツ……燕尾服って言うんだったかしら。頭に黒い頭巾を被っていたのよ、しかも手にはヒツジの人形なんか持ってて。ホント怖かったわ、いきなり『小娘ハ何処だ!』って掴みかかって来るんですもの」

 以上、結婚一〇年目の人妻の証言でした。

 さらに有力な情報が飛び込んできた。

「ああ、黒頭巾の人ならクラウス魔導学院まで乗せましたよ」

 以上、乗り合い馬車の御者の兄ちゃんの証言でした。

 いつの間にかルーファスを追う構図から、謎の『変な男』を追う構図に変わっていた。

 ユーリはサイボーグ馬の引く馬車に乗ってクラウス魔導学院までやって来た。

 しかし、ここで手がかりが途切れてしまった。

 困っているユーリの目に、空色の物体が飛び込んできた。

「ローゼンクロイツ様!」

 数時間前にここをあとにしたハズなのに、まだこの辺りをローゼンクロイツはフラフラ歩いていた。

「キミ、誰?(ふにゅ)」

 ローゼンクロイツはユーリのことを覚えていなかった。

 ユーリショック!

「えっ、この前もお会いしたじゃないですか!」

「……覚えてない(ふにふに)」

 ユーリショック!

 でも、ユーリちゃんはこんなことじゃめげません。

「(落ち着けアタシ……そうだ、ローゼンクロイツ様はド忘れ達人だってサイトに書いてあったっけ。うん、大丈夫、早く顔を覚えてもらわなきゃ)」

 ユーリはローゼンクロイツ関連のサイトを隅々まで読んでいた。

 気を取り直してユーリは営業スマイルを浮かべる。

「そうでしたね、この前お会いしたときは名前も名乗っていなかったような気がします。アタシの名前はユーリ・シャルル・ドゥ・オーデンブルグと申します。ユーリです、ユーリですよ、ユーリと覚えてくださいね!」

 ユーリは目を輝かせながらローゼンクロイツの両手をガッシリ掴んだ。

 その名を聞いてローゼンクロイツは首を傾げた。

「う〜ん(ふにゅ)」

「どうなさいましたかローゼンクロイツ様?(もしかしてこの前に会ったこと思い出してくれた?)」

「……おなかすいた(ふにゃ)」

「…………」

 思わずユーリは言葉を失った。

 でも、ユーリちゃんは頑張ります!

「お、お腹が空かれたんですか。本来であればアタシがどこか美味しいお店へお連れするのですが、持ち合わせがなくて……(早くバイト探さなきゃ死ねる)」

「……家に帰る(ふあふあ)」

「あ、おうちに帰られるんですか、ローゼンクロイツ様のおうちはここから遠いのですか?」

「……知らない(ふあふあ)」

「…………」

 思わずユーリは言葉を失った。

 でも、ユーリちゃんは頑張ります!

「(そうだ、ローゼンクロイツ様は極度の方向音痴だったんだ)ええっと、お独りで家まで帰れますか?」

「帰れるよ……そのうち(ふあふあ)」

「あはは、そうですか(そのうちね)。てっきりアタシは道にお迷いになられているのかと」

「目的地にはちゃんと着いたよ(ふにふに)」

「目的地?」

「ここ(ふにふに)」

 ローゼンクロイツが指差したのはクラウス魔導学院だった。

 さらにローゼンクロイツは言葉を続ける。

「昨日家を出たら今日着いたんだ(ふぅ)」

「…………」

 もう何も言うまい。方向音痴の次元が違った。

 目的地に着いたのはいいが、もうすでに目的を失っていた。こんな感じだからローゼンクロイツはいつも出席日数が危ういらしい。

 突然、ローゼンクロイツは世界の心理を紐解いたみたいな顔をした。

「……あ、そうだ(ふにゃ)。さっきユーリという小娘を探している変態に出会ったよ(ふあふあ)。ユーリってキミのことかい?(ふにふに)」

「たぶんアタシです(てゆか、絶対にアタシです)。その人はどっちに向かいましたか?」

「あっちだよ(ふあふあ)」

 あっちを指差すローゼンクロイツだが、その方向を信じていいのだろうか?

 いや、絶対に信じてはいけない。

「本当にあっちですか?」

「うん、こっちだよ(ふあふあ)」

 指差す方向が変わっていた。

 やっぱり信じてはいけないようだ。

 突然、ローゼンクロイツは難しい数式を解いた数学者みたいな顔をした。

「……あ、そうだ(ふにゅ)。その変態をルーファスも探していたよ(ふにふに)」

「えっ、ルーファスにも会ったのですか? と言いますか、アタシが探してるのはルーファスなんですけど」

「ルーファスならそっちに行ったよ(ふあふあ)」

 また違う方向を指差した。

 もうどこを指そうと好きにしてください。

 ローゼンクロイツが歩き出した。

「ついておいで、ルーファスの居場所まで案内するよ(ふにふに)」

「え、あー……お願いします!(もういいや、ルーファス探すのあきらめよ)」

 方向音痴のローゼンクロイツに着いて行くことにした。

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