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人外だからってモフモフとは限らないんだから!

作者: 猪口暮露

誰しも幼い頃絵本の中で見た『猿蟹合戦』。


転生×童話の世界をお楽しみください。

※基本ギャグです

突然ですが私、(カニ)に生まれ変わりました。





は?




え、ちょ…まって、蟹!?




木に登った尻の赤いお猿さんに柿をくれといったら「お前はこれでも食ってろ」って渋柿を投げつけられて気絶したのがついさっき。



猿テメェ後で覚えとけよ。



で、目が覚めてなんか凄く知能が発達してるなーと思ったら別の人格(人…いや蟹格?)が存在していました。



どうやら私には前世の記憶があるらしく、自分の名前と性格、それから前世の私が持っていたありとあらゆる知識が蟹の小さな脳内に詰め込まれている現状です。




あ、電波ちがうよ!?ホントだから!




そもそも蟹のちっぽけな脳内にそんな妄想力なんてないと思うんだ。




与えられた知識だからこそちっぽけな脳にだってギリギリ入ってるんだ。いや、本当はショートしかけたけど。




そもそも蟹の甲羅が柿投げつけられたくらいで傷つけられる訳ないんだよね。




猿の柿アタックの衝撃+記憶の混入で気絶した。そして二つの人格は気絶してる間に無事整理されたらしい。




前の私は17の時に交通事故で亡くなったようだ。JKと呼ばれる青春真っ只中でその短い幕を閉じた私はどうやら今度は人外デビューしてしまったらしいです、はい。




ファンタジー大好きな人なら転生しましたーー!って喜ぶ所なのに……なんだろう、この釈然としない気持ちは。いやだって人外ですもん。




え、今流行りの転生って乙女ゲーとか普通お金持ちに転生した女の子が「私、悪役令嬢にはなりらないんだからっ!」ってものすごく良い子ちゃんになって結局恰好いい男の子と青春する恋愛話がポピュラーでしょ?




一万歩譲っても現代技術を使ってチートしてやるぜ!とか人外でもモフモフな愛され系キュートな動物になるとかじゃないの??




なんで人外(しかも甲殻類)?私に動物とイチャコラしろと?




うん、恋愛ルートに到達する道が想像できない。え、普通できないよね?それとも私の想像力が乏しいだけなの?




しかもこれ、私の知識が間違いじゃなきゃ明らかサルカニ合戦ですよね?ね?




だってこの間おにぎりと柿の種を私に渋柿投げつけやがったバカ猿とトレードして。


純粋な私(記憶が戻る直前までの無垢な蟹。以下蟹子)はあっさり猿の「毎年なる柿の方がお得だろ?」っていう悪徳商売にひっかかっちゃったんですもん。


結局なっても採れないとか殺意が凄く沸くけど。


ちなみに私の目が覚めてもバカはまだ柿食ってた(どんだけ柿好きなんだよ)。


柿を踊り食いしてる奴に脳内でカニパンチをお見舞いしておいたけど、いつかマジでやり返してやる!。




そして前世の知識はなぜか人を懲らしめる知識ばっかり残っている気が凄くする。



きっと気のせい……じゃないな!




なんだよ人の急所とか精神ダメージの負わせ方って。爪と指の間の肉はとても敏感です?爪をはいでもつめはまた伸びてくるので拷問や嫌がらせにぴったり☆とか身近でとれるトリカブト(毒)の扱い方?そんな情報ばっかとか前世の私怖すぎる。






ぁあ、だから人外にされたのかな。










所変わってここはとある山の小屋。




…私の家です。





わーい蟹なのに山小屋にすんでるとかやったねいえーい。


なんで蟹が家作っちゃってんのとか住む必要性ないだろとか言わないから。


敢えてスルーするから。釜とか囲炉裏とか何に使うの?ってすごい思ったけど。


物語上のご都合主義だからね。


キニシナイキニシナイ。





家に帰った私はどうしたかというと物語通りに臼、栗、蜂に相談…するのでなく自力で猿にお仕置きすることにしました。




というのも皆薄情だからさー。





我が家の臼「猿最低だな。でも俺見てのとおり臼だから。一寸先のちり紙にすら手が届かんから。え?仕返し?………頑張って。俺はこの台所でずっと見守ってるから」




森で拾った栗「あーん?俺様に手伝わせようだなんて十日早いぜ?顔洗って出直してきな。十年じゃないのかって?いやーそれだと俺様腐ってんじゃん。え、風化?」




昨日刺された蜂「あら、貴方は昨日の。甲羅が固くて刺しづらかったのだけど、また私に刺されに来たの?…いいわよ、なら遠慮なく刺してあ―――」


「結構ですさよならーーー(逃走)」





や、初対面の方が半数で友情もクソもないなーって思いながらチャレンジしたけど見事失敗。



そして臼。そーいう無駄な優しさが一番腹立つんだよね。



というわけで「別に動けなくてもやれることがあんだろ?」って目の前に火近づけて脅してきちゃいました。テへペロ。





そもそも蟹子がぼっちなのがいけないんだ。友人いないから猿におちょくられてるんだよ。











いやー思えば両親は仲良く旅立ってしまうし(あ、死んでないよ文字通りの旅行ね!)親のラブラブっぷりに当てられてグレた兄弟達は揃って家出しちゃうし。


それプラス友達いないわで蟹子さんは凄く寂しい青春を送ってきたんだよ。あんな猿に久しぶりに話しかけられて嬉しかったみたいで詐欺に引っかかっちゃったんだよね。



なんて苦い青春…。



おっと目から汁が。な、泣いてないこれは心の汗だよ!









ふっ、この蟹子さんを怒らせたらどうなるか身を持って思い知らせてやるわ!というわけでぼっち作戦を開始します。




まず殺害現場は猿の家に決定(いや、殺さないけど)。



早速赴いてみると戸には鍵がかかっていた。


きゃーーやだ入れないじゃない!


…なんてことはない、侮る事なかれ。


私は蟹ですよ?




この蟹子さんに切れない紙などあるわけが無いのだよ!



いくら中身が人とはいえ本体は蟹ですのでサクサクとなんの苦もなく戸を切り刻む。




戸の下の方を蟹一匹通れるくらいの穴を慎重に作っていき、猿の家に侵入した。


けど肝心の猿がいない。


ありゃ、お出かけ中だったのかな。まあそっちのが都合がいいんだけどさ。







えーと。


たしかストーリー上では帰ってきた猿に栗がいろりから爆ぜて尻に直撃、水を求めた猿に水瓶の蜂が針攻撃、そして最後に臼が天井から落ちて潰す、だったはず。



いろいろ仕掛けて猿が帰ってくるまで囲炉裏に待機します。



バカ猿はよ帰ってこーい。











ガラガラガラ


「うぃ〜、寒い寒い」



おおっと奴が帰ってきたようです。

待ちわびたぞ。



冷えた体を温めようと猿が囲炉裏に火を付けます。


ちょっと熱いけど、甲羅で囲まれたこの体には多少の火なんてへっちゃらなんだな。



素早く脳内で作戦を復唱する。



(尻アタック、刺す、潰す)



囲炉裏でだいぶ温まった猿が此方に背中を向けて台所へ向かおうと立ち上がる。



そのチャンスをやすやすと逃す私ではない。


囲炉裏から素早く出ると、その無防備な尻に十分熱されたハサミを押し付けてやった!




「ていっ(尻アタック、)」


ジュっ



「ぅああああっちぃぃ!?」




熱さにのたうちまわる猿は火傷した尻を冷やすために水瓶に急いで駆け寄る。





しかし勿論水瓶にも仕込みはしてあるわけでして。




ザクっ


「痛てぇええええっ!?」




(刺す、)




臼を脅した時にちょーっぴり彼の体の上の方をえぐりとってきたんだ。



火チラつかせながら「このまま薪の一部になるのとちょっと木片分けるのと…どっちがいい?」って笑顔で聞いたら快く分けてくれたよ!


そのあと泣きながら家出しちゃったけど。動けないって嘘かおいコラ。



んでそれを私のハサミで鋭く削って水瓶に入れておいたんだよね。しかも複数。






熱さと痛みに悶絶する猿の前に姿を表し体によじ登る。そしてある部位にハサミを向けたまま一言呟いてみた。


「あとは……潰す、だっけ?」


ようやく私がそこにいることに気づいた猿は途端にサアァァ……っと顔を青くした。





「ぎゃあぁぁああぁああああ!!!」



食の恨みって怖いんだよ?












猿に無事お灸を据えた後、腕に食べ頃の柿を抱えて帰宅した。



すると家には私以外誰も住んでいない筈なのに明かりが灯っていた。





誰だろう。…まさか不審者?






恐る恐る戸を開き中を伺うと、なんとそこには私に破壊されかけて泣いて家を飛び出していった臼がいた。そして何故か腕が生えて全身灰色になってた。




「家出はもうお終い?」




嫌味ったらしい言い方で言うと彼は私の側に寄ってきた。




「ごめんな、一人にして」




片手でペチペチと頭を叩かれる。



どうやら嫌味は私が拗ねていると思われたらしい。


慰めてるつもりなんだろーけど私が蟹じゃなかったらコレ絶対痛いってくらいの強さだった。



「なんで動けないって嘘ついたの」


とりあえずペチペチを止めさせて臼に訊ねた。



「仲間がが一人もいないんじゃあ流石にお前も諦めるかなって」


まぁその考えは甘かったみたいだけど。と苦笑気味に呟く臼。



蟹子は一人で何でもやれる子なんです。



「なんで家出したの」



「ちょ、元凶がそれ言う!?俺の体の一部を毟り取られてちょっと…いやかなり腹立ったから」


「じゃあなんで帰ってきた」




「お前が猿と一体一の勝負挑んでる最悪の場合を予想して心配した。んで体を治すついでに鉄でコーティングしてもらったんだ」


(あぁ…だから灰色)


「なんで鉄?あとなんで腕ついてんの」


「お前が外に出ても俺がついて行けるように………なのに結局俺が戻ってきたらもう戦い(という名のいじめ)は終わってるし。



ねぇ、俺なんのためにバージョンアップしたの?」





「知らんわ」





「俺の体を良いように弄んでその仕打ちとか赦さないよホント!?」




ムキーと憤慨する臼を放置して立ち去ろうとすると臼の出来立てほやほや(臼曰く)の手で掴み上げられた。




そしてそのまま鉄の表面に腕ごと私を押し付けると彼は言った。





「俺を弄んだ責任、とってくれるよね?





…てゆーか無理やりにでもとらせてやる」








蟹子「嫌だ」




ここまで読んでくださりありがとうございました!

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